ミルスは激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の王を除かねばならぬと決意した。

今日、ミルスは野を越え、山を越え遠く離れた(チャリで30分の距離の)職場に来ていた。


昼休みを終え、町(仕事場)に戻ると町全体がなんだか寂しい。

賑やかな筈の町(職場)が、ひっそりと静まり返っていたのだ。

近くにいた町人(職場の人)に問詰めると、あたりをはばかるような低音でひっそりと答えた。


「今日はレギュラーメンバーが半分しかおりません」

「しかも仕事量は通常の1.5倍程増えております」

「なんだと!一体どうなっておるのだ!?」

「私にも分かりませぬ…」

ミルスは動揺した。

これは自分が頑張るしかないではないか!

5時まで出来るのは自分しかおらぬ!

そう言い聞かせ、自分を奮い立たせた。


焦るミルスの前へ町長(社員さん)が駆け寄ってきた。

町長は、ミルスの顔を見るなり、驚いた表情をし、こう呟いた。


「ミルスさん、大丈夫ですか?」

ミルスは、メンバーの少ないこの状況の事を問いているのだと思った。

『大丈夫』そう答えようとした、その瞬間、町長は耳を疑う様な言葉を放った。


「ミルスさん今日12時上りで届け出してましたよね?」

「へ…?」

「学校行事の為って書いてありましたよ。」



......Σ ( ̄□ ̄;)!!


―あああああっ!!!!!―



きょ…今日…


授業参観だぁぁぁぁぁっ!



ミルスは走った。


矢の如く走り、額に流れる汗も、そろそろ気になる紫外線にも目もくれず、ひたすら走り続けた。



「今日は僕が頑張るから大丈夫ですよ」


「間に合う?頑張って!」


町長や町人のありがたい言葉を胸に、セリヌンティウス(娘)の元へと走り続けた。



日没(授業終了)までにいかねばセリヌンティウスは処刑(心に傷を負う)されてしまう!


残酷にも太陽は2月とは思えぬ程にギラギラと紫外線を放出し、向かい風まで放ってくる。


―昨日、娘は何も言っていなかったし、本当は今日はないのではないか?―


チラリとセリヌンティウスを疑ったりもした。



だが、今は走り続けるしかない。


どうか、どうか間に合ってくれ!




辿り付いたのは、授業開始5分後…

どうにか間に合う事が出来た様だ。


終了後に、ミルスはセリヌンティウスに言った。


「セリヌンティウス、私を殴ってくれ。私は1度だけ君の事を疑ってしまったのだ。それだけではない、私は今日の事をすっかり忘れてしまっていたのだ」

「やっぱり~?ウチも忘れてると思ったんだよー!全くしょうがないなぁ!」


帰り道、ミルスは思った。


本当に暴虐な王…いや、忘却の王を倒さねばならないと…