小説「ドラキュラ」を読んで
先日県外へ行く機会があり、旅のお供にと小説「ドラキュラ」(著・ブラムストーカー)を購入してみました。
冊子はなかなか分厚く、かなりのボリュームがあるのは見て明らかでした。
昔から吸血鬼の紳士概念が大好きで、絶対に読んでおきたい作品ではあったので手に取ったときはとてもワクワクしていました。
読んで得ることのできるイメージや概念は、この先の創作活動で必ず役に立つであろうと考えながら細々と読み進め、793ページ(全27章)にも及ぶ物語を4日で読了しました。
小説について
私が小説を読み始めて最初に思ったのが
読みにくい
ということです。
通常の小説は第三者目線で進んでいくのに対して、この小説は複数人いる登場人物の日記や手紙(電報)、雑誌の記事を読み進めていく、いわゆるモキュメンタリーに似た形式となっていました。
私にはあまり馴染みのない形式だったために、最初はなかなか苦労しました。
しかし読みにくいという感想は、慣れない形式に対して発生する漠然としたものであったためか一時間も読み進めれば克服することはできたかと思います。
(解説を読むと、当時でもこのような形式は珍しいものだったそうです。)
『ドラキュラ伯爵』について
私がこの本を読む一番のきっかけとなった『ドラキュラ伯爵』。
紳士然としていながらどこか邪悪で狡猾な吸血鬼、私はそんな貴族吸血鬼概念が大好きでした。
そしてその元祖(?)となったであろうドラキュラ伯爵について理解を深めたいという思いがずっとありました。
小説を読んで彼に対して思ったことは…
思ったより賢くないな?
…です。
冷酷で狡猾で、用意周到で手際もよくて作中を通して手ごわい相手であることは間違いなかったのです。
しかし、読む前のイメージが「主人公たちの手によって窮地に追い込まれても冷静で、むしろその裏の裏をかいて主人公の手を焼かせてくるだろう」というものだったので、「逃げ場を潰され隠れ家で待ち伏せされて、挙句襲われたときに捨て台詞をはいて母国に逃げようとする」という彼の行動はかなり意外でした。
まぁ、そんなところも愛おしくて好きなんですがね!!!!!
(伯爵は大のギャップ好きなんです)
あと作中を通して彼の行動がほぼ描写されていないというのも意外でした。
普通の小説であれば、悪役サイドの行動も「一方そのころ…」的な感じでどこで何をしているのかの描写はあります。
しかしこの小説は前述した通り、「登場人物達の記録」を読み進めていく形になっています。
つまり彼の行動は、「登場人物の前に現れた時以外」はブラックボックスの中なのです。
それ以外だと登場人物の憶測で、大体の場所や行動しか分かりません。
登場人物たちの「人知を超えた怪物が今どこで何を企んで動いているのか全く分からず憶測で対策することしかできない緊張と、自分の大切な人が怪物の餌食になってしまうのではないかという恐怖と不安」を読者も一緒に味わうことができる、という意味で作者はこのような形式にしたのかもしれません。
しかし私は彼の動向をもう少し知りたかったし、心情も詳しく見たかった。と感じました。
もし彼サイドの日記や手紙があるのならどれほど良かったことか!
彼の最期の描写も、あっさりとしていながらかなり気になるものでした。
死にゆく最期に浮かべた安らかな表情には考察の余地があり、ますます彼の心情を知りたいと思いました。
(未完・つづき作成中)