ある名誉毀損事件の判決に思う | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録24年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

info@kimuralaw.jp   牛鳴坂法律事務所 弁護士 木村耕太郎


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 最近、ある名誉毀損事件の判決で原告の全面敗訴となった。詳しくは書けないが、私も原告側で関与していた事件であり、残念であった。


 「名誉」とは、人の社会的評価である。名誉感情ではない(最高裁昭和45年12月18日判決)。したがって、「名誉毀損」とは、他人の社会的評価を低下させることである、というのが一般的な理解だ。


 今回の判決では、原告企業が原告主張のとおりの高い社会的評価を得ているなら、被告週刊誌の記事くらいで社会的評価が低下しているとは認められない、という趣旨を言っている。


 非常に違和感を感じる。判決の論法では、どんなにひどいことを言っても、たとえば発行部数が極めて少ない媒体であれば現実の社会的評価は低下しないから名誉毀損にならないことになってしまう。


 要するに、「社会的評価を低下させるおそれのある行為」を名誉毀損とするべきであり、現実に社会的評価が低下したことの立証を原告に求めるのはおかしいのではないか。学説でそういうことを言っている人はいないかもしれないが、私はそう思う。

 

 なお、媒体の編集方針が興味本位の記事を中心とするものであって、読者が必ずしも真に受けないような媒体であっても、名誉毀損が成立するというのが判例である(最高裁平成9年5月27日判決)。今回の判決は、この判例に照らしても疑問を感じた。 

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