改めて昨年を振り返ると、自分の場合は暗い一年だったように思います。

書いていた作品も暗いし、笑うことの少ない一年だったんだろうな。

 

楽曲や映画、本などでもインプットした量が少なかったようで、ベスト3を選びきれません。

そこでひとつに絞りたいと思います。

まずは、楽曲部門なのですが、選んだのは中島みゆきさんの「倶(とも)に」です。

 

手すりのない橋を 全力で走る

怖いのは 足元の深い峡谷を見るせいだ

 

歌の冒頭から惹きつけられます。

 

それにしても、タイトルの「俱に」は秀逸だと思います。

普通だったら「共に」です。

倶の字は難しくて一般的ではありません。

これまた難しい四文字熟語ですが、「不俱戴天」に使われる字です。

不倶戴天とは、「いっしょに(=倶)天をいただかない、つまり共に生きてはいけないと思うほど、憎むこと」(岩波国語辞典 第三版)という意味です。

テストの誤字探しで「不具戴天」として出題されることのある熟語としてご存じの方もいると思います。

このような難しい文字を歌のタイトルに持ってくることはあまりないし、敢えて付けるのはセールス上、不利だと思うのですが、中島さんは、必然性を感じたのでしょう。

「一緒に歩いていこう」という軽い気持ちではなく、「同志よ、この道をともに歩かん」といった強い意志を感じます。

そういった意味では、中島さんの決意表明なのかもしれません。

 

倶に走りだそう 倶に走り継ごう

風前の灯火(ともしび)だとしても 最後まできっちり点(とも)っていたい

 

この部分は特にぐっときます。

人生は限りあるもの。

だからこそ、この瞬間、瞬間を大事にしなければならないのだと思います。

 

中島みゆきさんは、同じ時代に生きていてくれてありがとう、と言いたい偉大なシンガーソングライターだと思います。

 

倶に