おやつや野菜を多給して具合が悪くなるウサギさんもまだまだいますが、ウサギの飼育に関する知識が普及し、チモシーとペレット主体の食生活になった今ではウサギも長生きするようになりました。その結果、高齢になってから子宮疾患が発生するウサギも多くなりました。ウサギの子宮疾患の発生率はとても高く、ある報告によれば7歳以上のウサギの48%が子宮腫瘍になり、そのうち78%が子宮腺癌でした。

 

避妊手術をすれば子宮疾患の予防ができます。しかし、ネックになるのはウサギの麻酔リスクです。2008年の論文報告によれば、様々な理由で麻酔をかけたウサギ8000頭のうち、麻酔後48時間以内の死亡は1.4%であり、健康なウサギに限定すると0.7%でした。140分の1の確率で、健康なウサギでも麻酔をかけると死んでしまうということです。140分の1なら当たる確率もあるでしょう。

ずいぶん前の報告ですので、現在では少し確率は下がっているとは思いますが、それでもリスクは高いでしょう。

 

手術時期としては全身麻酔に耐えられるようになる生後6ヶ月から腹腔内の脂肪沈着が増加する12か月までに行うべきとされています。年齢が上がる程、麻酔リスクもあがり手術の難易度も上がっていくという認識です。

 

手術の方法は犬や猫の避妊手術と大差はありませんが、内臓が脆弱なため少しの圧力や牽引でも出血したり、組織がちぎれたりするので、慎重に取り扱う必要があります。

腹腔内は全て吸収される糸で結紮や縫合などを行います。吸収されない糸でも問題ないかもしれませんが、人工物は体内に残さない方がいいと考えています。

 

皮膚は内側を縫い込む皮内縫合を行い、表層に縫合糸がむき出しにならないようにします。むき出しの糸はウサギがとても気にしますので皮膚の裂開や感染のリスクが上がります。傷口を守るためにエリザベスカラーをすると高確率で食欲不振になります。皮内縫合では原則、エリザベスカラーをしません。

術後は消化管の動きが悪くなりますので、消化管の蠕動を促進する薬を投与し、覚醒次第すぐに食事を与えます。

手術後は1泊入院をおすすめしています。術後2~3日は食欲低することも多いですが、次第に回復していきます。必要があれば術後に点滴や強制給餌などを行い、体調を整え手術翌日に退院します。

なるべく環境変化のストレスを与えないように、普段使っているケージや食事を持参していただいています。

 

退院後も元気食欲に問題がなければ再診の必要もありません。

 

うさぎ

来院、手術前

普通にごはんを食べて午前中に来院します。

手術直前は酸素室で十分な酸素化をします。麻酔時の急性な呼吸停止も酸素化しておくことでリスクが下がるとされています。

だいぶ緊張している様子です。
 

麻酔導入

鎮痛剤、鎮静剤などの注射で麻酔導入し、うとうとしてきたら、吸入麻酔へ切り替えます。眼球の保護、抗生剤、消化管蠕動促進剤を注射し、血管確保をして血圧や循環を維持します。

 

当院での使用薬剤

メロキシカム0.2mg/kg SC、メデトミジン0.15~0.20mg/kg SC、

ケタミン5mg/kg.IM、 イソフルラン3%と酸素2L/分、エンロフロキサシン10mg/kg SC、メトクロプラミド0.5mg/kg,SC

乳酸リンゲルを持続点滴

 

手術

腹部を3cm程度切開して開腹、卵巣と子宮を優しく牽引しながら順次血管やじん帯を処理し、卵巣と子宮を全摘出します。子宮膣部は切断後、連続縫合を行うべきとされていますが個人的にはマルチフィラメント吸収糸での単純結紮でも問題ないと思います。皮膚は皮内縫合を行い覚醒させます。

摘出した卵巣と子宮
 
覚醒前 傷は糸をむきだしにしない皮内縫合
 

術後

術後は血管カテーテルもはずして、皮下点滴のみとしています。管がつながっていない方が経過がよい気がします。数時間は酸素室で様子をみてしっかり覚醒したら持参していただいたいつものお部屋にうつしていつも通り過ごします。

 
翌日、体調に問題なければ退院です。
 
 

食欲は50%くらいだけど退院!!
帰宅後は3日くらいで体調も回復します。

 

 

ニコニコ当院ではメリットとリスクをよく説明した上でウサギの避妊手術を実施しています。

手術は予約制ですのでお電話などでお問い合わせください。

費用は全て含めて55000円です。