初めて見た実物の中村さん。

テーマ:
カフェで陳述書を書いちゃおう。
そんなナメた態度で臨んだ私はすぐに撃沈した。

当たり前なのである。



夫と私の歴史を綴ることとなる陳述書。

出逢って
付き合って
同棲して
結婚して

夫と一緒に生きてきた10年。


一般的には長くない期間かもしれない。

でもそれでも簡単に語ることはできないのだ。


いい時もそうでない時も悪くなってからも様々なことがあった。

それら全てひっくり返して振り返り、必要な部分を簡潔にまとめないとないとならない。


そんな、カフェなんかでちょちょいのちょいと簡単に済ませられる文書ではなかったのだ。


小林先生に言われたような陳述書は私に書ける気がしない。
そもそも思い返すだけで途中で胸がいっぱいになってしまう。

箇条書きにしてみてもなんか違うし。


あー。今日はもう無理だ。。。
そう思って陳述書は一旦頭から離すことにした。



今日小林先生と話したことをメモを見ながら再度確認していく。私がやるべき事は何だろう。



まずは着手金の準備。


それから中村さんの住所を早めに知っておかないといけない。


それから夫が確実に家を空ける日。これも把握しておかないとだめだ。


あー・・・あと2人がホテルに入る写真とかあると強いって言ってた。


でもこれってさ。無理じゃない?

だっていつも中村さんのアパートに行くし、ホテルに行く必要ないんだもの。

アパートへの出入りだけだと何だかんだと言い訳されそうだし。
なんかいい方法ないかなー。


先生が言うように探偵も考えないといけないのかなぁ。。。




考えることが色々ありすぎて、もうキャパオーバーな私。

さらに、ここ数日の緊張感で心身ともに疲れ切っている。


ゆっくり休みたい。
ゆっくり寝たい。


アパート・・・帰るしかないよね・・・



私はカフェを出てアパートへ向かう事にしたのだ。

2人が過ごしたであろうアパートに帰るのは、とても、とても嫌だった。

帰ればまたあの光景を見にしなくてはならないのだ。

考えると苦しい。


突然帰ることは避けた方がいいと判断し、夫にLINEを入れる。


既に突然に帰っていたのに。
やっぱり私は卑怯だ。そう思いながらも、こう送った。

千夏とは都合が合わず会わないことになったので、アパートに帰ることにしました。



夫はLINEを見ていないようで、一向に既読にならなかった。

カフェを出る時も未読。
駅に行っても未読。
電車に乗っても未読。


私からの連絡なんて必要としていないのだ。



未読のまま、アパートに少しずつ少しずつ向かっている私。



普段から電車を利用しない私は、どこに乗れば階段近くに降りれるとか、そういう情報なく乗り、最寄り駅で降りた。


階段まで遠く、もちろん改札にも遠い場所に降り立った私は、LINEを気にしながらトボトボ歩く。


ふと前を見ると、人混みの先に毎朝見送ってきた見慣れた背中が目に入った。


たいちゃん。


・・・・・


夫の横には女性がいた。



黒いパンツにグレーのジャケット。
黒いカバンを肩から掛けたそのメガネの女性。


弾けんばかりの笑顔で夫の顔を覗き込むその女性は、間違いなく中村さんだった。


初めて目にする、動いている中村さんだった。