あけましておめでとう一発目は
大晦日にUPしたお話
あの時も、今も、これからも・・・(風早・爽子未来話)の
爽子verです。
本当は元旦UPしたかったんですけど・・・orz
諸事情によりズレました^^;
しかも、当初は爽子ver書く予定がなかったので、
タイトル普通につけてました・・・
先ほどちょっと修正して前作を風早verとさせていただいちゃいました。
どちらから読んでも大丈夫だとおもいますが、
まだ読んでいらっしゃらない方は
【あの時も、今も、これからも・・・風早ver 】もあわせて読んでみてください。
ではでは
さっそくどうぞ~~~
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
サク
サク
サク
サク
サク
サク
サク
サク
今年も
降り積もる雪の中を歩いている。
あれから、
毎年恒例となった2年参り。
何回も何回も同じ道を通った。
そして、
となりにはもちろん今も・・・
「風早くんと今年も一緒に来られて嬉しいな」
何回来ても何回通ってもいつも二人で通るとドキドキが止まらない。
この日のこの道はとても、思い出が多すぎるから。
うきうきとした心の声がそのまま口から自然とこぼれてしまった。
『あ』
言い終わったあと、
二人して思わず顔を見合わせてしまう。
「今”風早くん”っていった~!」
いけない~~私ったらまた・・・
今日何度目だろう
「あわわわわそ、そうだった!!し、ししししししし翔太くん!!!」
恥ずかしいやら申し訳ないやら、
あ~もう本当に私ってダメだなぁ~
さすがに怒ってるかも・・・
恐る恐る隣を見ると、バチッと翔太くんと目があった。
その瞬間
「ははっ、”し”が多いって」
吹き出した翔太くんをみて、
「ごめんなさい。あの、今日の今日だとそ・・その・・・」
怒ってないのがわかってほっとしたけど、やっぱり申し訳ない。
だって、
翔太くんは私のこと”爽子”ってちゃんと名前で呼んでくれるのに、
私ったらいつまでたっても”風早”くんとしか呼べないんだもの。
もう何度も何度も練習していて、
ほら、今も心の中では普通に翔太くんて呼べているのに・・・
ああ~、口にするのって本当に難しいな。
「うん、そーだよな、俺もまだちょっと照れる」
そう言った翔太くんは目をそらしてしまった。
あああ~やっぱり気にしてる・・・よね?
でも、つないだ手をひきよせて、さりげなく凍ったところで私が転ばないように
気をつけてくれている。
やさしいな。
それなのに、私ったら
いつまでも恥ずかしいって言って呼べないのは失礼すぎる。
「で、でも、すぐに慣れるとおもうので・・・だから!」
だからどうか
「「嫌いにならないで?」」
言葉が2重に重なって、
「え?・・・」
思わず翔太くんを見ると、横でやっぱりっていう顔をして私を見ていた。
「わかるって!爽子の言いそうなこと。それ何回も聞いたもん」
「あ・・・」
どうしてわかったんだろう?
私、そんなに何回も言っていたかな?
「なるわけないじゃん!っていうかもうそれ言っちゃダメだかんね。絶対ダメ」
つないだ手に力をこめて、
翔太くんは真剣な目でまっすぐ言ってくれる。
それは出会ったときからずっとかわらない。
あの時、
誰もが怖がって目を合わせない中で唯一まっすぐ私をみてくれた人。
「う、うん」
そんな翔太君のまっすぐな言葉が、私の心の中に染みこんで次の言葉が出てこなくなってしまう。
そのまま道に降り積もる雪に目を落とした。
「だって、今日から爽子は・・・俺の奥さんでしょ?爽子も”風早”になったんだよ」
ハッとして
反射的に顔をあげる。
「お、奥さん!!!!ソ・・・ソウデシタ」
かぁぁぁ
奥さんという響きが、
なんだかとてもうれしくて、くすぐったくて、
赤くなる顔をおさえることができずに
私はあいている片方の手で頬を押さえて火照りを冷ますことに必死だった。
そうなのです。
今日翔太くんと私は
ここに来る前に、婚姻届を出してきました。
私は結婚が決まったときに、
夢のようで、
とても幸せで。
それだけで心がいっぱいになってしまって、
本当はそれだけでも十分嬉しかったのだけど、
翔太くんがいつも二人でいられる私の誕生日がいいんじゃないかって言ってくれて、
それで、年末で休みだったけれど、婚姻届はいつでも受け付けてくれるというから、
あらかじめ書いておいたものを二人で提出してきたのです。
私、今日
『風早爽子』になりました。
だから、今日という日は誕生日であるけれど、何より翔太くんとの大切な結婚記念日。
”奥さん”
”風早爽子”
二つの言葉が、頭の中をぐるぐる回って
どどどど、どうしよう、夢のような言葉にクラクラめまいがしそう。
嬉しくて涙がにじむ。
静かに降る雪を踏みしめるギュッギュという音と一緒に、
心の中でドキドキという音が私を包んでいた。
気がつくと、
もう神社は目の前、
たくさんの人の姿がみんな階段をのぼっていく。
私と翔太くんも一緒にその中に紛れていった。
「行こっ!甘酒配ってるよ」
翔太くんがそういって私を導いてくれる。
「う、うん!!」
これも毎年恒例。
初めて二人きりで過ごした大晦日から、ずっとかわらない。
無料で配っている甘酒は、今年も同じ場所で配られていました。
よかった~。
「ください」
「はい、カップルさん2つね」
翔太くんが甘酒を受け取って、
私に一つくれた。
ありがとう
そう言って受け取った甘酒を一口口に含むと、
変わらないほっとする甘さと暖かさに、心がほっこりとして
思わず笑みがこぼれてしまう。
ああ~やっぱりおいしいなぁ~
「俺、すっかりここの甘酒のファンになったかも」
「すごくおいしいよね」
「あんなに苦手だったのにな」
「毎年飲んでるもんね」
「あれから毎年ここに来るの楽しみだもん」
「わたしも!」
翔太くんと一緒だからなんだよ。
今まで飲んでた甘酒よりももっともっと大好きになったの。
二人で一緒にこうしていられることが、
あの時と変わらない気持ち、
ううん、あのときよりも数倍に膨らんだ大好きの気持ちで
今こうしてここにいられることが何よりも幸せなの
翔太くんとだから。
翔太くんだからなんだよ。
変わらない甘酒の味に、また少し涙が出そうになってしまう。
と、翔太くんが、
「”カップルさん”・・・か・・」
ふいにそう言って笑った。
「今だから言うけど、はじめて爽子と二人きりで来たときさ、俺すっげードキドキしてた」
見上げた私に、まるでふんわりとした綿雪のような言葉が降ってくる。
「え?」
「だって、あの時の爽子、・・・いつもよりもかわいかったから、二人きりだっておもったら一人ですげー意識しちゃってて・・・余裕なかったんだよな~。カップルさんって言われただけで心臓止まるかと思ったし。・・・まあ、いい大人になった今も、あんまり変わってないかもしれないけど・・・。」
!!
その言葉が胸の奥でキューッと私を締め付けて、
思わず甘酒を持つ手に力が入ってしまった。
だって、だって!
「おなじだよ!あのとき・・・私だけが意識しすぎてるのかもって思いながらずっとドキドキしてたの!!」
おなじこと思っていたなんて・・・。
「そっか」
「・・・うん、だからすごくすごく、うれしい」
そう言って笑ってから、
私の中にあの時の光景が浮かんでくる。
初めて翔太くんとふたりきりで過ごしたあの2年参り。
私だけがこんなにドキドキしているんじゃないかって、
幸せすぎて夢なんじゃないかって、
そう思わずにいられなかったほど、非現実的なくらい幸せだった。
あのとき、こんなに幸せな時間が永遠に続けばいいのに。そうおもった。
それが今、現実となっていることを
昔のあの時私だったら、きっといくら言っても信じてくれないだろうな。
「あ!」
急に何かに気づいた翔太くんが大きな声をあげたので、
「え?わわっ!!!」
瞬間的に反応したとたん、私の体勢がグラリと傾いた。
い、いけない!甘酒!!
「あっぶな!!」
甘酒を両手で包んだわたしを
翔太くんがしっかりとあいていた片手で支えてくれた。
「ごごごごごめんなさい」
「こっちこそごめん!驚かせて」
「う、ううん大丈夫」
よかった。
甘酒もこぼれなかったみたい。
翔太くんがとっさに支えてくれなかったら、きっと今頃盛大に転んでしまっていたかも・・・。
「・・・このくらいの時間だったよなって思って」
「?」
「爽子が生まれたの」
腕時計を持っていなかった私は
言われて、翔太くんの腕時計をひょいと覗き込んだ。
「あ、ほんとだ」
言われてみて気づいた。
時計はちょうど11時45分になろうとしていた。
「言うの2回目だけど・・・改めて、爽子、おめでとう」
毎年毎年、一緒に来るたびに、翔太くんはそう言ってくれる。
日付が変わったときに1回そして、
生まれた時間に1回。
誰よりも一番先にそう言ってくれる。
それがどんなに嬉しくて、
どんなに幸せかを翔太くんに伝えたいのだけど、
どうやって
この気持ちを全部伝えたらいいのか、
いまだに上手な言葉が見つからない。
いつも『ありがとう』
そう言うことだけで精一杯になってしまって・・・
「爽子と出会えてよかった。俺、本当に幸せだよ」
「翔太くん・・・」
「これからもずっと、隣にいるから。爽子の誕生日に必ずいるから」
「うん」
「だから、ずっと一緒にいような」
「・・・うん」
どうしよう、
胸が、
胸が、
いっぱいで言葉が出てこないよ。
喉の奥が熱い
涙で翔太くんの顔が見えなくなっちゃう。
「ははっ・・・なに泣いてんの」
「だって・・・」
後から後からあふれてくる涙。
そんな私の涙をそっと拭いながら、笑って翔太くんはそのままそっと自分の胸に引き寄せてくれた。
高校の入学式の前に、出会ったあの瞬間、私に向かって笑ってくれたあのままの変わらぬ笑顔で・・・。
私はその胸の中で、一生懸命涙をこらえようとしていると、
頭の上でやさしい声が響いた。
「と、いうわけでこれからもよろしく、奥さん」
うわぁぁぁぁ
ダメだよ、
こんな言葉聞いちゃったら、
よけいに涙が止まらない。
「・・・ハイ、旦那様」
これが私の返せた精一杯の言葉だった。
こ、声が震えちゃった・・・。
「~~~~~~~っ!!」
バッ!
と、突然翔太くんの体が私から離れた。
「しょ、翔太くん?」
な、何かまずかったかな?
あ、あれれ?
でも、心なしか顔が赤い???
「・・・そろそろ並んだほうがいいな。行こうか!」
「う、うん」
あ。
顔、そらしちゃった。
今の、少し照れたような顔も好きなんだけどな。
もっと、見ていたかったな。
ちょっと、残念・・・。
そのあと、甘酒を飲み終わってから
翔太くんと
再び手をつないで歩き出して参拝の列に並ぶ。
除夜の鐘が鳴り終わり、
日付が変わった瞬間
「「あけましておめでとう。今年もよろしく」」
ほとんど同時にそう言って、
私たちは笑いあった。
しばらくすると、私の携帯に着信が届く。
あ、あやねちゃんとちづちゃんからだ!
二人もほとんど同じ時間に毎年私にメールをくれるんだ。
『あけましておめでとう!入籍もおめでとう!今年はWでめでたいね』
ちづちゃんからだ!
『あけましておめでとう!風早爽子になった感想、今度ゆっくり聞かせてね』
あやねちゃんも・・・。
嬉しいな。
いつまでも変わらない大事な大事な友達。
返信していいかな?
と翔太くんに確認すると、
もちろん。
そう答えてくれて、私は携帯と向き合った。
あれから、だいぶメールを打つのは慣れたけど、
やっぱり歩きながらはちょっと慣れなくて、
返信に時間がかかってしまう。
ようやく返し終わったころには、
もうすぐ順番になってしまっていた。
お賽銭を入れ、
手をあわせ私は祈った。
ずっとずっと翔太君と一緒にいられますように。
どうか、翔太君が・・・家族が元気で笑顔で過ごせますように。
二つもお願いしてしまった・・・
ちょっと欲張りだったかな?
それから、
二人でおみくじを引く。
これも毎年恒例。
私はいつも『凶』か『吉』しかでなくて。
それでも、
いつもちょっと、ドキドキする。
凶のおみくじを引くのはかなり運がいいんだよ。
翔太くんは私が凶を出すたびにそう言ってくれる。
でも、確かに凶を出しても悪いことばかりではなく、
むしろ私にとってはとてもいいことばかり。
だぶん、
それはきっと、
カバンにいつも忍ばせてる、あのおみくじがあるからだとおもう。
でも、
今日は、ちょっとドキドキが大きい。
だって、苗字が変わったはじめてのおみくじだから。
せっかくの記念日。
大吉なんておこがましいけど、
でも、せめて小吉くらいは・・・
ドキドキしながら引いた
おみくじ。
開いてみると
そこにあったのは
「!!!!」
だ、大吉!?
生まれてはじめての大吉。
書かれていた二文字から目が離せなくて、
私はしばらくそれを無言で見つめ続け、
ひっくり返してみたり、
透かしてみたり、
いろいろしてみる。
でも、間違いなく、
そこに書かれていたのは大吉だった。
「持ってかえっていいんだよ。」
隣で翔太君が笑いながら私に向かって言う。
あ、そっか。
いいおみくじはもってかえっていいんだ・・・。
でも、
でも・・・。
「あの・・・これは、翔太君にあげる。」
「え!?」
私の生まれて初めての大吉、
翔太くんにあげたい。
「私にはもう大吉があるから」
「!!」
私が翔太君からもらった大吉は、
今も大切にかばんの中にあって、
いつも私を守ってくれて幸せにしてくれるから。
これ以上の大吉、私にはもったいないから。
「翔太君に持っててほしいの」
だから・・・はい。
そう言って、
私はそっとおみくじを翔太君の手に渡した。
私のおみくじに翔太君のおみくじほど効果はないかもしれない。
でも、それでも持っていてほしい。
一番大切な人にもっていてほしかったの。
その瞬間
私は翔太君の胸の中にいた。
抱きしめられた腕から伝わるぬくもりが、
あったかくてやさしくて、
また一筋涙がこぼれた。
それから二人で並んで帰る。
同じ家へ。
ありがとう、
たくさんの幸せをくれて、
ありがとう、
いつもそばにいてくれて・・・
・・・すき。
すきなの。
大好き。
降り積もる雪よりもたくさんの気持ちを
これからもずっとあなたに届けたい。
あの時、今も、そしてこれからもずっと・・・
【END】
---------------------------------------------------------
と、いうわけで爽子verでした。
前回書いてておもったのですが、
爽子のBD話のはずなのに、
風早のBDみたいなお話になってしまってるなぁ~って^^;
なので、このお話で
爽子もちゃんと幸せだったんだよ~と伝わったらうれしいです^^
大晦日にUPしたお話
あの時も、今も、これからも・・・(風早・爽子未来話)の
爽子verです。
本当は元旦UPしたかったんですけど・・・orz
諸事情によりズレました^^;
しかも、当初は爽子ver書く予定がなかったので、
タイトル普通につけてました・・・
先ほどちょっと修正して前作を風早verとさせていただいちゃいました。
どちらから読んでも大丈夫だとおもいますが、
まだ読んでいらっしゃらない方は
【あの時も、今も、これからも・・・風早ver 】もあわせて読んでみてください。
ではでは
さっそくどうぞ~~~
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
サク
サク
サク
サク
サク
サク
サク
サク
今年も
降り積もる雪の中を歩いている。
あれから、
毎年恒例となった2年参り。
何回も何回も同じ道を通った。
そして、
となりにはもちろん今も・・・
「風早くんと今年も一緒に来られて嬉しいな」
何回来ても何回通ってもいつも二人で通るとドキドキが止まらない。
この日のこの道はとても、思い出が多すぎるから。
うきうきとした心の声がそのまま口から自然とこぼれてしまった。
『あ』
言い終わったあと、
二人して思わず顔を見合わせてしまう。
「今”風早くん”っていった~!」
いけない~~私ったらまた・・・
今日何度目だろう
「あわわわわそ、そうだった!!し、ししししししし翔太くん!!!」
恥ずかしいやら申し訳ないやら、
あ~もう本当に私ってダメだなぁ~
さすがに怒ってるかも・・・
恐る恐る隣を見ると、バチッと翔太くんと目があった。
その瞬間
「ははっ、”し”が多いって」
吹き出した翔太くんをみて、
「ごめんなさい。あの、今日の今日だとそ・・その・・・」
怒ってないのがわかってほっとしたけど、やっぱり申し訳ない。
だって、
翔太くんは私のこと”爽子”ってちゃんと名前で呼んでくれるのに、
私ったらいつまでたっても”風早”くんとしか呼べないんだもの。
もう何度も何度も練習していて、
ほら、今も心の中では普通に翔太くんて呼べているのに・・・
ああ~、口にするのって本当に難しいな。
「うん、そーだよな、俺もまだちょっと照れる」
そう言った翔太くんは目をそらしてしまった。
あああ~やっぱり気にしてる・・・よね?
でも、つないだ手をひきよせて、さりげなく凍ったところで私が転ばないように
気をつけてくれている。
やさしいな。
それなのに、私ったら
いつまでも恥ずかしいって言って呼べないのは失礼すぎる。
「で、でも、すぐに慣れるとおもうので・・・だから!」
だからどうか
「「嫌いにならないで?」」
言葉が2重に重なって、
「え?・・・」
思わず翔太くんを見ると、横でやっぱりっていう顔をして私を見ていた。
「わかるって!爽子の言いそうなこと。それ何回も聞いたもん」
「あ・・・」
どうしてわかったんだろう?
私、そんなに何回も言っていたかな?
「なるわけないじゃん!っていうかもうそれ言っちゃダメだかんね。絶対ダメ」
つないだ手に力をこめて、
翔太くんは真剣な目でまっすぐ言ってくれる。
それは出会ったときからずっとかわらない。
あの時、
誰もが怖がって目を合わせない中で唯一まっすぐ私をみてくれた人。
「う、うん」
そんな翔太君のまっすぐな言葉が、私の心の中に染みこんで次の言葉が出てこなくなってしまう。
そのまま道に降り積もる雪に目を落とした。
「だって、今日から爽子は・・・俺の奥さんでしょ?爽子も”風早”になったんだよ」
ハッとして
反射的に顔をあげる。
「お、奥さん!!!!ソ・・・ソウデシタ」
かぁぁぁ
奥さんという響きが、
なんだかとてもうれしくて、くすぐったくて、
赤くなる顔をおさえることができずに
私はあいている片方の手で頬を押さえて火照りを冷ますことに必死だった。
そうなのです。
今日翔太くんと私は
ここに来る前に、婚姻届を出してきました。
私は結婚が決まったときに、
夢のようで、
とても幸せで。
それだけで心がいっぱいになってしまって、
本当はそれだけでも十分嬉しかったのだけど、
翔太くんがいつも二人でいられる私の誕生日がいいんじゃないかって言ってくれて、
それで、年末で休みだったけれど、婚姻届はいつでも受け付けてくれるというから、
あらかじめ書いておいたものを二人で提出してきたのです。
私、今日
『風早爽子』になりました。
だから、今日という日は誕生日であるけれど、何より翔太くんとの大切な結婚記念日。
”奥さん”
”風早爽子”
二つの言葉が、頭の中をぐるぐる回って
どどどど、どうしよう、夢のような言葉にクラクラめまいがしそう。
嬉しくて涙がにじむ。
静かに降る雪を踏みしめるギュッギュという音と一緒に、
心の中でドキドキという音が私を包んでいた。
気がつくと、
もう神社は目の前、
たくさんの人の姿がみんな階段をのぼっていく。
私と翔太くんも一緒にその中に紛れていった。
「行こっ!甘酒配ってるよ」
翔太くんがそういって私を導いてくれる。
「う、うん!!」
これも毎年恒例。
初めて二人きりで過ごした大晦日から、ずっとかわらない。
無料で配っている甘酒は、今年も同じ場所で配られていました。
よかった~。
「ください」
「はい、カップルさん2つね」
翔太くんが甘酒を受け取って、
私に一つくれた。
ありがとう
そう言って受け取った甘酒を一口口に含むと、
変わらないほっとする甘さと暖かさに、心がほっこりとして
思わず笑みがこぼれてしまう。
ああ~やっぱりおいしいなぁ~
「俺、すっかりここの甘酒のファンになったかも」
「すごくおいしいよね」
「あんなに苦手だったのにな」
「毎年飲んでるもんね」
「あれから毎年ここに来るの楽しみだもん」
「わたしも!」
翔太くんと一緒だからなんだよ。
今まで飲んでた甘酒よりももっともっと大好きになったの。
二人で一緒にこうしていられることが、
あの時と変わらない気持ち、
ううん、あのときよりも数倍に膨らんだ大好きの気持ちで
今こうしてここにいられることが何よりも幸せなの
翔太くんとだから。
翔太くんだからなんだよ。
変わらない甘酒の味に、また少し涙が出そうになってしまう。
と、翔太くんが、
「”カップルさん”・・・か・・」
ふいにそう言って笑った。
「今だから言うけど、はじめて爽子と二人きりで来たときさ、俺すっげードキドキしてた」
見上げた私に、まるでふんわりとした綿雪のような言葉が降ってくる。
「え?」
「だって、あの時の爽子、・・・いつもよりもかわいかったから、二人きりだっておもったら一人ですげー意識しちゃってて・・・余裕なかったんだよな~。カップルさんって言われただけで心臓止まるかと思ったし。・・・まあ、いい大人になった今も、あんまり変わってないかもしれないけど・・・。」
!!
その言葉が胸の奥でキューッと私を締め付けて、
思わず甘酒を持つ手に力が入ってしまった。
だって、だって!
「おなじだよ!あのとき・・・私だけが意識しすぎてるのかもって思いながらずっとドキドキしてたの!!」
おなじこと思っていたなんて・・・。
「そっか」
「・・・うん、だからすごくすごく、うれしい」
そう言って笑ってから、
私の中にあの時の光景が浮かんでくる。
初めて翔太くんとふたりきりで過ごしたあの2年参り。
私だけがこんなにドキドキしているんじゃないかって、
幸せすぎて夢なんじゃないかって、
そう思わずにいられなかったほど、非現実的なくらい幸せだった。
あのとき、こんなに幸せな時間が永遠に続けばいいのに。そうおもった。
それが今、現実となっていることを
昔のあの時私だったら、きっといくら言っても信じてくれないだろうな。
「あ!」
急に何かに気づいた翔太くんが大きな声をあげたので、
「え?わわっ!!!」
瞬間的に反応したとたん、私の体勢がグラリと傾いた。
い、いけない!甘酒!!
「あっぶな!!」
甘酒を両手で包んだわたしを
翔太くんがしっかりとあいていた片手で支えてくれた。
「ごごごごごめんなさい」
「こっちこそごめん!驚かせて」
「う、ううん大丈夫」
よかった。
甘酒もこぼれなかったみたい。
翔太くんがとっさに支えてくれなかったら、きっと今頃盛大に転んでしまっていたかも・・・。
「・・・このくらいの時間だったよなって思って」
「?」
「爽子が生まれたの」
腕時計を持っていなかった私は
言われて、翔太くんの腕時計をひょいと覗き込んだ。
「あ、ほんとだ」
言われてみて気づいた。
時計はちょうど11時45分になろうとしていた。
「言うの2回目だけど・・・改めて、爽子、おめでとう」
毎年毎年、一緒に来るたびに、翔太くんはそう言ってくれる。
日付が変わったときに1回そして、
生まれた時間に1回。
誰よりも一番先にそう言ってくれる。
それがどんなに嬉しくて、
どんなに幸せかを翔太くんに伝えたいのだけど、
どうやって
この気持ちを全部伝えたらいいのか、
いまだに上手な言葉が見つからない。
いつも『ありがとう』
そう言うことだけで精一杯になってしまって・・・
「爽子と出会えてよかった。俺、本当に幸せだよ」
「翔太くん・・・」
「これからもずっと、隣にいるから。爽子の誕生日に必ずいるから」
「うん」
「だから、ずっと一緒にいような」
「・・・うん」
どうしよう、
胸が、
胸が、
いっぱいで言葉が出てこないよ。
喉の奥が熱い
涙で翔太くんの顔が見えなくなっちゃう。
「ははっ・・・なに泣いてんの」
「だって・・・」
後から後からあふれてくる涙。
そんな私の涙をそっと拭いながら、笑って翔太くんはそのままそっと自分の胸に引き寄せてくれた。
高校の入学式の前に、出会ったあの瞬間、私に向かって笑ってくれたあのままの変わらぬ笑顔で・・・。
私はその胸の中で、一生懸命涙をこらえようとしていると、
頭の上でやさしい声が響いた。
「と、いうわけでこれからもよろしく、奥さん」
うわぁぁぁぁ
ダメだよ、
こんな言葉聞いちゃったら、
よけいに涙が止まらない。
「・・・ハイ、旦那様」
これが私の返せた精一杯の言葉だった。
こ、声が震えちゃった・・・。
「~~~~~~~っ!!」
バッ!
と、突然翔太くんの体が私から離れた。
「しょ、翔太くん?」
な、何かまずかったかな?
あ、あれれ?
でも、心なしか顔が赤い???
「・・・そろそろ並んだほうがいいな。行こうか!」
「う、うん」
あ。
顔、そらしちゃった。
今の、少し照れたような顔も好きなんだけどな。
もっと、見ていたかったな。
ちょっと、残念・・・。
そのあと、甘酒を飲み終わってから
翔太くんと
再び手をつないで歩き出して参拝の列に並ぶ。
除夜の鐘が鳴り終わり、
日付が変わった瞬間
「「あけましておめでとう。今年もよろしく」」
ほとんど同時にそう言って、
私たちは笑いあった。
しばらくすると、私の携帯に着信が届く。
あ、あやねちゃんとちづちゃんからだ!
二人もほとんど同じ時間に毎年私にメールをくれるんだ。
『あけましておめでとう!入籍もおめでとう!今年はWでめでたいね』
ちづちゃんからだ!
『あけましておめでとう!風早爽子になった感想、今度ゆっくり聞かせてね』
あやねちゃんも・・・。
嬉しいな。
いつまでも変わらない大事な大事な友達。
返信していいかな?
と翔太くんに確認すると、
もちろん。
そう答えてくれて、私は携帯と向き合った。
あれから、だいぶメールを打つのは慣れたけど、
やっぱり歩きながらはちょっと慣れなくて、
返信に時間がかかってしまう。
ようやく返し終わったころには、
もうすぐ順番になってしまっていた。
お賽銭を入れ、
手をあわせ私は祈った。
ずっとずっと翔太君と一緒にいられますように。
どうか、翔太君が・・・家族が元気で笑顔で過ごせますように。
二つもお願いしてしまった・・・
ちょっと欲張りだったかな?
それから、
二人でおみくじを引く。
これも毎年恒例。
私はいつも『凶』か『吉』しかでなくて。
それでも、
いつもちょっと、ドキドキする。
凶のおみくじを引くのはかなり運がいいんだよ。
翔太くんは私が凶を出すたびにそう言ってくれる。
でも、確かに凶を出しても悪いことばかりではなく、
むしろ私にとってはとてもいいことばかり。
だぶん、
それはきっと、
カバンにいつも忍ばせてる、あのおみくじがあるからだとおもう。
でも、
今日は、ちょっとドキドキが大きい。
だって、苗字が変わったはじめてのおみくじだから。
せっかくの記念日。
大吉なんておこがましいけど、
でも、せめて小吉くらいは・・・
ドキドキしながら引いた
おみくじ。
開いてみると
そこにあったのは
「!!!!」
だ、大吉!?
生まれてはじめての大吉。
書かれていた二文字から目が離せなくて、
私はしばらくそれを無言で見つめ続け、
ひっくり返してみたり、
透かしてみたり、
いろいろしてみる。
でも、間違いなく、
そこに書かれていたのは大吉だった。
「持ってかえっていいんだよ。」
隣で翔太君が笑いながら私に向かって言う。
あ、そっか。
いいおみくじはもってかえっていいんだ・・・。
でも、
でも・・・。
「あの・・・これは、翔太君にあげる。」
「え!?」
私の生まれて初めての大吉、
翔太くんにあげたい。
「私にはもう大吉があるから」
「!!」
私が翔太君からもらった大吉は、
今も大切にかばんの中にあって、
いつも私を守ってくれて幸せにしてくれるから。
これ以上の大吉、私にはもったいないから。
「翔太君に持っててほしいの」
だから・・・はい。
そう言って、
私はそっとおみくじを翔太君の手に渡した。
私のおみくじに翔太君のおみくじほど効果はないかもしれない。
でも、それでも持っていてほしい。
一番大切な人にもっていてほしかったの。
その瞬間
私は翔太君の胸の中にいた。
抱きしめられた腕から伝わるぬくもりが、
あったかくてやさしくて、
また一筋涙がこぼれた。
それから二人で並んで帰る。
同じ家へ。
ありがとう、
たくさんの幸せをくれて、
ありがとう、
いつもそばにいてくれて・・・
・・・すき。
すきなの。
大好き。
降り積もる雪よりもたくさんの気持ちを
これからもずっとあなたに届けたい。
あの時、今も、そしてこれからもずっと・・・
【END】
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と、いうわけで爽子verでした。
前回書いてておもったのですが、
爽子のBD話のはずなのに、
風早のBDみたいなお話になってしまってるなぁ~って^^;
なので、このお話で
爽子もちゃんと幸せだったんだよ~と伝わったらうれしいです^^
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