インターアーバン ~アメリカ版「私鉄」~ | にっし~の世の中思ったこと考えたこと(西形公一のブログ)

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「インターアーバン」という鉄道用語を知っている人は
相当な海外事情通か、もしくは鉄道通であろう。

これは、アメリカ発祥の鉄道用語で、
約100年か少し前から急速に発達した、
比較的近い都市と都市のあいだを結ぶ、
主に電気で走る鉄道のことである。

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近代化されたインターアーバン (シーン・ラム氏の撮影)

当時、陸上で長距離を移動する方法は、
蒸気機関車が牽引する列車鉄道(汽車?)が主流だった。
しかし、現在の飛行機を考えてみると想像しやすいが、
便数は1日数本であり、遅延も目立つ。
現在でも多くの国で中長距離列車は、蒸気機関車が
なくなったことを除けば、基本はそうした存在である。
(筆者はSNS「ミクシィ」で「鉄道大国インド」という
 コミュニティを主宰しているが、そこでの話の流れでも
 そういう話が出て「日本の鉄道とは違うんですねぇ」と
 いう結論になったことがある)

これに対抗して、比較的近い都市と都市のあいだ、
いってみれば「短中距離」に的を絞り、
それを当時の最先端である電気鉄道で結ぶことで、
スピード性と定時運行を実現したのが、
インターアーバンである。
また貨物をあまり取り扱わず、
乗客輸送を主としたことも特徴であった。

何のことはない、
これは多くの大都市圏に居住する日本人には見慣れた
「私鉄」と類似したものである。
だが、世界の鉄道を見回すと、こうした鉄道を
既存の鉄道とは別に、並行して設けた例は珍しい。
中長距離移動のための、乗客・貨物兼用の鉄道か、
あるいは都市内の短距離鉄道(地下鉄が多いが、
高架鉄道の場合もある)に、
ほとんど二分されるからである。

そもそも歴史的経緯でみると「私鉄」とは、
鉄道を民間企業が運営する形態一般を指す言葉であり、
アメリカでは長距離鉄道でも民間経営が基本であるし、
日本でも1906年(明治39年)に「鉄道国有法」が
制定されるまで「日本鉄道」「山陽鉄道」などの
長距離私鉄が存在した(現在のJRはそうした往時の
長距離私鉄が復活したものとも言える)。
「私鉄」といえば比較的、短距離の都市周辺の
鉄道をイメージするのは、日本独自の用法なのだ。

日本でも映画「となりのトトロ」に、
2~3両編成の私鉄電車が登場するシーンがある。
それがインターアーバンをモデルとした、
日本独自の私鉄の、昔なつかしい姿である。

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インターアーバンの古めかしい一例。

しかし、日本でインターアーバンにならった
私鉄が隆盛を極め、都市間交通にとって
欠かせない要素に発展していったいっぽうで、
それと入れ替わるようにアメリカのインターアーバンは
衰退していくことになる。

大きな理由は、モータリゼーションであった。
短中距離を移動するのにバスが一般的になり、
さらに富裕層から中産層へと自家用車の保有が広まる。
するとアメリカの長距離鉄道は、
貨物輸送を主力にすることで生き残りを図ったが、
旅客中心のインターアーバンは、この新しい競争相手に
勝ち抜くことが難しかったのである。
いっぽうモータリゼーションが遅れた日本においては
私鉄は主要な交通手段として残り、
なかには戦後、高度成長と都市圏の拡大にともなって
都市内交通と変わらなくなったり、
あるいは地下鉄などと相互乗り入れするものも増えた。
さらにはターミナル駅での百貨店・デパート経営や
沿線の不動産・宅地開発などを行い、
ますます乗客増とラッシュ時の混雑に拍車をかけた。

こうしてアメリカで衰退し、
またヨーロッパではあまり広まらなかった
インターアーバンは、日本において「私鉄」として残った。
現在、アメリカにはインターアーバンは、
シカゴ(イリノイ州)と隣接するインディアナ州を結ぶ
「サウスショアー線」がほぼ唯一残るのみであり、
これも民間会社としては破綻して、公営化されている。

サウスショアー線
http://www.nictd.com/

このように日本に日本式の「私鉄」が存在する経緯は、
アメリカともヨーロッパとも違う、
日本独自の鉄道経営における国営・公営と民営の
せめぎあいを反映しているようで、興味深い。
なによりも日本の私鉄がモデルとしたインターアーバンが
本家本元のアメリカで衰退したことは、歴史がたどってきた
別の可能性をみるようである。

ただ、エネルギー資源の大量浪費・効率の悪さが
指摘されるモータリゼーション、特に都市部において
頻発する渋滞の非効率などを考えると、
環境にやさしい陸上交通である鉄道が見直される一環として、
インターアーバンが復活する可能性があるのかもしれない。
となれば、巨大なインターアーバン・私鉄網を
当たり前のように維持し多くの通勤通学者が活用している
日本の出番、ということもあるのではなかろうか。

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阪神尼崎駅付近のようす(Shin-kansai氏の撮影)