君に会えた奇跡 -6ページ目

第16話 告白-Ⅳ

校庭に出ると、文化祭のメインイベント『後夜祭』はすでに始まっていた。


だだっ広い校庭のど真ん中にキャンプファイヤーがセットされ、それを囲む様な形で舞台が用意されている。


その舞台上では、今年の目玉企画である『美男子コンテスト』を開催してて司会を務めている生徒が軽妙なトークを繰り広げてお客さんを盛り上げていた。


グルっと周りを見渡してみたけれど、亘と久美の姿はない。


亘のことだからきっとうまくやってるんだろうなとぼんやり考えていると、留美がボクの手をクイクイ引っ張って


「皆女の子みたいな綺麗な顔してるんだね。」


確かに壇上の『美男子』候補達はみな一様に細身で中性的な感じだった。


「うん、今はこういう顔が流行なんだろうね。留美ちゃんもああいうのが好み??」


「う~ん、私はスポーツしてる人が好きだから、ああいうなよなよしてる人は苦手かな。なんか頼りなさそうじゃん。」


と言って壇上を指差した。





しばらく『美男子コンテスト』を観てたんだけど、留美は途中で飽きちゃったらしくキョロキョロしだした。


「ねえねえ、あっち行こうよ!!」


と指差す先には屋外バスケットフープがあった。


おいおい、って思ったときにはもう走り出してて、ボクは仕方なく走って追いかけた。






フープの下に着くと、留美は転がっていたバスケットボールでドリブルを始めた。


でも、どうにも上手く出来なくて、


「何かやってよ」


とちょっとふてくされた顔をしてボクにボールを投げた。


「何かって言われてもな~・・・」


ってブツブツ言いながらボクは2、3回地面にボールをついた。


地面が体育館とは違ってデコボコしてて変なバウンドしたけど、何回かついているうちに慣れてきた。


リズムが掴めてきたところで、軽くレイアップする。


「すご~い!!」


と留美が嬉しそうな声をあげる。ちょっと気をよくしたボクは、3ポイントラインちょっと手前でボールの感触を確かめて、



ヒュっ



ボールのつぶつぶの引っかかり具合がボクの指にゴールの感触を伝えた。



スパっ



ボードにもリングにも当たらずゴールに入るのは本当に気持ちがいい。すると観てた留美が、


「あのダブルチームを一気に抜いちゃったやつやってよ。」


と言って、「お願い」のポーズをした。


ボクは内心ニヤニヤなんだけど、恥ずかしくて仕方ないなぁって顔をしながら、


「じゃあ、そこに立ってて」


と留美をディフェンスに見たててドリブルを開始した。






自分のリズムを作り出すために留美との距離を測りながら細かくボールをつく。


その間も留美はボクの目をじっと見つめる。


ふと留美が瞬きした瞬間、一気に左方向へ抜きにかかる。


留美は何が起きたか分からない様子で完全に固まってしまっている。




ダムっ!!




さらにドリブルで右方向へフロントチェンジして再加速してそのままゴールまで走りこみレイアップを入れた。



完全に固まってる留美の元へ駆け寄り、ポンと頭に手を乗っけて「大丈夫!?」


と聞くと、留美の頬に一筋の涙が流れた。


もう一筋、もう一筋。


留美の瞳から涙の粒が止め処なく溢れた。


ボクは頭を撫でてやると、留美はひっくひっく言いながら


「ゴメンねっ、
 ただねっ、
 なんかっ、、、感動しちゃって、、、」


ボクは「そっか、ありがと」と言って、留美が泣き止むまで頭を撫で続けた。






留美は落ち着くと、泣き顔を見られた事が恥ずかしいらしくボクから顔を背けた。



そんな仕草が可愛くて、愛しくて、、




「留美ちゃん、好きだよ。」




ボクの口から自然と言葉が出てきた。




留美は、一瞬驚いた顔をしてボクの顔を見上げたんだけど、すぐに笑顔になって、




「私も。私も好きだよ、たける君。」




と言ってくれたんだ。







留美、ボクはあの時の喜びを今までひと時も忘れた事はないよ。