第17話 12月23日-Ⅰ
以前なら、留美が夢に出てきた朝は枕が涙でぐしょぐしょだったのに。
今はそんなこともない。
涙すら出ない。
それに夢の中で見る留美の顔は霞んでいて、、、、
いや、起きている状態で頭をフル回転させても、ボクは留美の顔をきちんと思い出す事が出来ない。
輪郭とか部分部分の特徴とかは覚えているんだけど、顔の全体像を思い浮かべる事が出来ない。
7年かぁ、、、ボクは改めて思った。
あんなに好きだったのに、
あんなに想っていたのに、
あんなに、、、
あれは一時的な感情だったんだろうか?
分からない。
分からないけど、今ボクは留美の事をはっきりと思い出せないという『現実』がボクの目の前に突きつけられていた。
モヤモヤした思いを抱えながら出社すると、いつの間にか社内にはクリスマス用のイルミネーションが飾られていた。
「どうしたんですか~?」
総務部の女の子が心配そうな顔を浮かべて話しかけてきた。
「いや、なんでもないよ。おはよう。
それにしても、、随分クリスマスっぽくなったねぇ。」
「昨晩、総務部総出で頑張ったんですよ~。可愛いでしょ??
たけるさんもせっかくのクリスマスなんだし笑顔ですよ笑顔!!」
と、クマが出来て相当疲れている様子なのに、満面の笑顔をボクにプレゼントしてくれた。
ボクは「ありがと」と言った。
そうだ、折角のクリスマスなんだ。
暗い顔をしていたらみんなの雰囲気をぶち壊してしまう。
いつも通りでいいんだ。
そう、いつも通り楽しそうに、幸せそうに演じていればいいんだ。
そうする事がボクにとってのリハビリなんだ、とボクは自分に何度も言い聞かせながらその子の頭をポンポンと撫でた。