午前三時。

一番雨風がひどい時間をねらって。

台風の中を全力疾走。

もちろん傘なんかささない。

雨粒が痛い。

風が強くて息がくるしい。

公園の木は折れそうにしなって。

ドキドキする。

風の声しか聞こえない。

濡れた体は、風に体温を奪われて、寒い。

歌ったり踊ったり。


誰もいない。

世界の終りみたい。


台風の中、荒れ狂う風に佇む。

なかなか楽しいひとり遊び。


昔、小さいころ。

台風で傘が壊れて。

でもそれが、楽しくて、びしょ濡れで遊んだ。

大人になっても、楽しいものは楽しくて。

ふと気付くと、、、

そんな大人はあんまりいなくて。

変わるものと変わらないものと。

そのささやかな分岐に、胸がキュってなる。
ゆらり

ゆらゆら

揺り椅子にもたれて

ただただ世界の音に耳をすますと。

夏の音と秋の音がいつの間にか入り混じっていて。

建物のせいでギザギザに切り取られた狭い空を仰いでは。
感傷的になってる自分に苦笑して。

息を吸って、吐いて。
空気の密度が優しくて。
何故か少し、泣きたくなった。

変わるから大切にできるし。
変わるものの中で変わらないから光るのだし。


はたして『正しい』ことを貫くのは本当に『正しい』のか。

正しいより、優しい人でありたいなあ、なんて、
取り留めなく思いつつ。

心臓のリズムで、椅子を揺らすのです。

ゆらゆらゆらり。

風が気持ち良くて。
雲が飛ぶような早さで、月をよぎって。
フィルムの早回しみたいなそれを目に映しながら。


きっと、きっとね。
いろいろなことを私は忘れていってしまうのです。

この空も。
花を摘もうとキミがジャンプして木を揺すったガサガサという音も。
一瞬だけ触れた手の熱も。

憶えていたいけど、忘れていくのでしょう。
それを知ってるから大切に思えるんでしょう。

すべての記憶を失って、
なかったことになってしまうとしても。
それはそれで。


詰めていた息を、ゆっくりほどきながら。
夏の夜は散歩を誘います。