会話分析入門 第4章

第1節 はじめに

投げかけた言葉に対して、どんな言葉が投げ返されても良いわけではない。発話と発話は、最も基本的には[挨拶ー挨拶]や[質問ー応答]のように、行為として適切に結びつく形を組み合わせられる。この行為の結びつきを秩序立てている仕組みのことを「連鎖組織(sequence organization)」という。

連鎖組織は、なんらかの活動を成し遂げつための、2つ以上の行為の規範的な連なりである。一度挨拶や質問などなどの発話によって連鎖が開始されると、それが組み合わせられるべき発話(挨拶、応答など)が生起するための位置が作り出される。連鎖組織は、人が様々な活動を成し遂げるための手段となる。

 

第2節 隣接対

2.1 隣接対の基本的性質

「いま何時?」「5時」は、質問と応答の交換である。このような2つの発話が行う行為のカップリングによる連鎖を「隣接対(adjacency pair)」という。最も典型的で単純な形をとる場合、以下の性質を備える。

①2つの発話からなる

②各々の発話を別の話者が発する。

③2つの発話は隣り合う。すなわち1つ目の発話の直後に2つ目の発話が配置される

④2つの発話は順序づけられている

 隣接対の構成要素は、1つ目の発話→2つ目の発話の順で発せられるべきものとして扱われる。

 1つ目の発話のことを「第1成分 (First Pair Part:以下FPP)

 2つ目の発話のことを「第2成分(Second Pair Part:以下SPP)という

⑤2つの発話の組み合わせは適合的である。

 

隣接対は連鎖組織の中でも最小の連鎖であり、FPPに対してSPPが返されると、いったんそこで、FPPによって開始された活動が完了しうるものとして扱われる。

様々な隣接対の例

[質問ー応答][勧誘ー受諾(また拒否)][申し出ー受諾(または拒否)][呼びかけー応答]

 

発話(や身体的ふるまい)の不在のことを総称して、「公的な不在(official absence)」という、また、不在の反応を引き出そうとしてFPPをやり直すことを「反応の追求(pursuit of response)」という。

 

2.2 非典型的な隣接対

[評価ー同意/不同意][気づきの表明/気づきの共有][情報提供/情報の受け取る]

SPPが産出されなくても、それが公的な不在として扱われないこともある。

研究者間で見解は分かれる

 

2.3 選好

隣接対は、適合的なSPPが何種類あるか着目すると、次の3つのタイプに分類できる

 

【1】SPPが1種類しかないもの

[出会いの挨拶ー出会いの挨拶][別れの挨拶ー別れの挨拶]など

【2】SPPにプラスとマイナスの2種類があるもの

[勧誘ー受諾(+)/拒否(-)][提案ー受諾(+)/拒否(-)][依頼ー受諾(+)/拒否(-)][同意の求めー同意(+)/不同意(-)]など

【3】SPPが3種類以上あるもの

[不平ー謝罪/釈明/反論/等]など

 

【2】についての説明

プラスSPPは、FPPが開始した活動を促進する。・・・FPPはプラスSPPを「選好する(prefer)」と表現する。

マイナスSPPは、開始された活動の実現を促進しない。・・・FPPはマイナスSPPを「選好しない(disprefer)」と表現する。

 

選好されるSPPとされないSPPとの間に非対称的な関係があることは、SPPの産出のされ方に反映される。

 

選好されるSPは、(a)直ちに(b)簡潔に(たとえば「うん」や「はい」)(c)直接的に、産出されるのに対し、選好されないSPPは(a')遅れて(b')複雑に(c')間接的に、産出される。

 

ある種の隣接対においては、FPPが開始した活動の実現を促進する反応(=選好するSPP)と促進しない反応(=選好されないSPP)と2種類の適合するSPPがある。両者の非対称な関係は、相互行為の形式特徴に体系的に反映される。選好されるSPPは直ちに、簡潔に、直接的に産出されるが、選好されないSPPは遅延を伴い、複雑な形をとり、間接的に表現される。

 

第3節 隣接対の拡張

隣接対は、下記の三つの箇所において、その隣接ツイト関連を持つ発話や連鎖を伴うことがある(隣接対の「拡張(expansion)」という

 

  ←前方拡張

FPP

  ←挿入拡張

SPP

  ←後方拡張

 

前方拡張(pre-expansion)

FPPが発せられる前に置かれ、FPPが産出されるための前提条件を調べたり、その他の形でFPPの準備をしたりする発話や連鎖

 

挿入拡張(insert expansion)

FPPの産出後に発せられ、SPPが産出されるために必要な条件を整える発話や連鎖

 

後方拡張(post-expansion)

SPPの産出後に置かれ、FPPが開始した活動を終わらせたり、さらに続けたりする役割を担う発話や連鎖

 

3.1 前方拡張

ベースになるやりとりを踏まえて

そのあとのやりとりが成立する

 

pre-FPP

pre-SPP

base-FPP

base-SPP

 

前置き連鎖を伴う隣接対

 

3.2 挿入拡張

 

base-FPP

Ins-FPP

Ins-SPP

base-SPP

 

3.3 後方拡張

base-FPP

base-SPP

SCT

 

最小限の後方拡張とは、「連鎖を閉じる第3要素(sequence closing third)」

 

 

 

あ〜もうちょっとだけど、もう寝る〜〜〜