パルコ・兵庫県立芸術文化センター共同製作『TERROR テロ』 | ドキドキさせてよ-別館-

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平成30年1月20日(土)14:00〜、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて。

作/フェルディナント・フォン・シーラッハ
翻訳/酒寄進一
演出/森新太郎

美術/堀尾幸男
照明/佐藤啓
音響/高橋厳
衣裳/西原梨恵
ヘアメイク/中原雅子
演出助手/須藤黄英
舞台監督/林和宏
宣伝美術/東學
宣伝写真/渞忠之
宣伝写真衣裳/松竹衣裳
著作権代理/Meike Marx
プロデューサー/栗原喜美子、尾形真由美
制作/滝口久美
東京公演製作/井上肇(パルコ)
企画/兵庫県立芸術文化センター
共同製作/パルコ、兵庫県立芸術文化センター
協力/東京創元社

出演/
ビーグラー(弁護人):橋爪功
裁判長:今井朋彦
ラース・コッホ少佐(被告):松下洸平
フランツィスカ・マイザー(被害者参加人):前田亜季
クリスティアン・ラウターバッハ中佐(証人):堀部圭亮
廷吏:原田大輔
ネルゾン女史(検察官):神野三鈴

テロリストにハイジャックされた旅客機を撃墜し、164人の命を奪い
7万人を救った空軍少佐。彼は英雄か、罪人か?

決するのは裁判を見守る“観客”、つまりあなた自身です!

弁護士(橋爪功)と検察官(神野三鈴)がそれぞれの正義を賭けて、法廷で丁々発止の論戦を繰り広げる。この裁判の行方を決するのは…観客の皆様に被告が有罪か無罪か投票していただき、その投票結果で、判決が言い渡されます。この法廷劇の結末を決めるのはあなたの一票かもしれません。
(公式サイトより)

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橋爪さんと今井さんのお名前に惹かれてチラシを手に取った。それを読んでどうしても観たくなってチケットを確保した。

少人数の台詞劇なのに上演時間は3時間とのこと。予想よりだいぶ長い。

上演時間約3時間(休憩15分含む)予定 
1幕:約100分 予定
(休憩:15分) 
2幕:約40分 予定 
票決(投票):10分 
判決:15分

サイトで確認するとこういう時間配分になっていた。なるほど評決の時間があるのだ。その少し前に休憩が入るのは評決の時にトイレに行ったりせずに済むように、そして緊張感を持続したまま判決に進めるためだろう、と思ったのは実際にその場で体験した後だ。


開演時間になると、ステージ手前に今井さんが現れた。この辺りは駐車場も見つけにくく建物も入り組んだ造りなのに、定刻にお越しいただきありがたい、というような語り出し。諸注意などを含めた前説であろうと思ったが、すぐにそうでないことに気づく。彼は裁判官で、参審員(一般市民から選出され、裁判官とともに評議を行い、事実認定や量刑判断を行う)としての我々に語りかけているのだ。

これまでこの事件について見聞きしたことはすべて忘れ、これから語られる証言に基づいて審議して欲しい、と彼が言い、そして裁判が始まった。

裁判のあらましはおおむね上記の通りで、テロリストにハイジャックされ、7万人の観衆が集まっているスタジアムに突っ込もうとする旅客機を命令に背いて撃ち落としたパイロットが殺人罪に問われているのだ。

事件の様子や背景が人々の言葉によって次第に立体化され、いくつもの視点が加えられていく過程は本当にスリリングであった。

上演時間のうち大半は客席も明るく照らされて、我々もこの物語の一部であると感じさせられた。

キャストはそれぞれ素晴らしく、まずはそれを観られただけでも行った甲斐があると思えた。


弁護士役の橋爪さんの飄々とした佇まいと弁舌に込められた真摯な説得力。

裁判官を演じた今井さんの端正な真面目さとそのうちに人間味。

判事を演じた前田さんの鋭い舌鋒と冷静な眼差し。

被告を演じた松下さんの軍人らしい信念と揺らぎ。

証人を演じた堀部さんの組織への忠誠とある種の傲岸さが揺すぶられる様子。

この事件で夫を失った妻を演じる神野さんの戸惑いにも哀しみや憤り。そしてやり場のない感情を表すように、震える手。

特に印象に残ったいくつかのこと。

たたみ込むような検察官の質問に翻弄され、あるいは心の内を引き出されて何か言い募ろうとした証人を「以上でけっこうです」とスッパリさえぎった検察官の言葉。

過程を含めた質問に対して、「何を答えても嘘になる」と答えた被告の迷いと誠実さ。

夫を失った妻が証言を終えて立ち去るとき、弁護士が立ち上がって頭を下げたこと。

回想シーンでのかすかな音が緊張感を高めていた。

最初に提示された事実に加えて、予想以上に多くの情報が集められ、事件を観る角度も広がりをみせていく。

このあたりですでに自分の評決を決めつつあった。それは事前にあらすじを読んだときとは異なる結論だった。

ステージ手前に2人のスタッフが立ち、それぞれ有罪と無罪の箱を持つ。我々は事前に配られた用紙をそのどちらかに入れる。

この日の評決は、有罪209票:無罪200票。わずかな差で有罪であった。

その結果を受けて、裁判長が判決を下す。1月16日から25日までの12公演で有罪6回、無罪6回と均衡しており、日々の有罪無罪の票数差もわずかだ。それだけ双方の証言や主張に説得力があった、ということかもしれない。

判決を聴きながら、さまざまなことを考える。命の重さ、テロという暴力の理不尽さ、旅客機の乗客たちの行動、軍の考え方、被告の人となり、などなど。

何が正しかったのか、彼はどうすべきだったのか、その正解はないのかもしれない。

買って帰った原作には、2通りの結末が描かれている。もしも作者の胸の内に正解があるのなら、両方の結末を何度も読み返すうちにわかるものだろうか。

そういう想いも含めて、面白いものを観た、と思う。

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