新劇交流プロジェクト『その人を知らず』 | ドキドキさせてよ-別館-

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テーマ:
平成29年7月8日(土)13:30〜、東池袋あうるすぽっとにて。

作/三好十郎
演出/鵜山仁
美術/乘峯雅寛
照明/古宮俊昭
音響/秦大介
衣裳/有島由生
舞台監督/相川聡
制作/新劇交流プロジェクト制作委員会

出演/
片倉友吉:木野雄大(東演)
義一:名取幸政(青年座)
リク:腰越夏水(東演)
明:前田聖太(青年座)
俊子:伊藤安那(文学座)
人見勉:大家仁志(青年座)
治子:森田咲子(民藝)
北村:藤原章寛 (文化座)
貴島宗太郎:山本龍二(青年座)
伴:春稀貴裕(文化座)
浮田:清川翔三(東演)
下士:星野真広(東演)
課長:能登剛(東演)
山下静代:藤巻るも(民藝)
軍需工場の女監督:津田真澄(青年座)
宗定:若松泰弘(文学座)
黒川:豊泉由樹緒(東演)
今井:今村俊一(文学座)
留置所の男一:清川翔三(東演)
留置所の男二:今村俊一(文学座)
留置所の男三(貴島):山本龍二(青年座)
留置所の男四:豊泉由樹緒(東演)
監守:原野寛之(東演)
細田:大滝寛(文学座)
司会:星野真広(東演)
木山:春稀貴裕(文化座)
小笠原:小池友理香(東演)
原田龍子:高橋未央(文化座)
男A:今村俊一(文学座)
男B:星野真広(東演)
男C:原野寛之(東演)
警官:清川翔三(東演)
私服A:若松泰弘(文学座)
私服B(村岡):能登剛(東演)
若い女:中花子(東演)

物語/
「なんじ殺すなかれ、……おのれの如く隣人を愛せよ」

純朴にイエスの教えを守り、召集を拒み続けた片倉友吉。彼は、名もない一介の計器工場で働く時計工である。

しかし彼の思いは戦時下においては非国民となり、憲兵にとらえられ過酷な拷問と同僚からの迫害に耐え続けなければならなかった。
友吉の徴兵忌避は周囲の人達をも窮地に追い込んでいく。
父は自殺、弟は職を奪われ自棄するように戦地に赴き戦死、そして母が、妹、友人たちが……。
彼を信仰に導いた人見牧師も妹・治子もその渦の中に巻き込まれていく。

それでも彼は「戦争はいけないことです」と子供のようにつぶやき続けるのだった。

……やがて敗戦が訪れる……

戦争がまるで嘘であったかのように世の中が大きく変わり、人々が声高に唱える「戦争反対・平和と民主主義」の声は広がっていく。
一方、徴兵拒否の英雄として祭り上げられる友吉には、その勇気を褒め称えられる言葉は虚しく聞こえるだけであった……。
「戦争というものは、正しくないだけでなく、損です。勝ち負けに関係なく、世界中の人間にとって損です…」
と純真に、素朴にただただ語り続ける友吉……。
(公式サイトより)

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観始めてから、途中でしまった!と思った。

友吉があんなことをした、と皆が言う。周囲から責められ家族までもが弾圧されるような、いったい何を彼がやったのか。それが途中までははっきりと語られない。何の予備知識も入れずに観ればよかった。彼が何をしたのか(いや、しなかったのか)を知らないまま、それを考えながら観られたらよかった。

だが、そんなことを思っていたのはわずかなあいだだった。

その時代の息苦しさそのものが、友吉への、そして友吉の家族への迫害となって具現化する。

新劇系の5つの劇団が協力しての上演とあって、キャストの層も厚い。多彩な登場人物をそれぞれ説得力のある演技で描き出していく。

共産主義者も右翼の国士も友吉に洗礼を施した牧師も、それぞれの迷いや矛盾が描かれる中で、友吉の頑ななまでの無垢が痛ましく輝いていた。

それはキリスト者としての行動だったのか。あるいは、彼の観ていたエス様は、彼だけのためのものであったのかもしれない。

戦争中から戦後にかけて揺れ動く人々の中で、彼の無垢だけが揺らがない。

……いや。そうとは言い切れない場面もあったか?

戦後の苦しい生活の中で、彼は自らの信念に疑問を抱くようにも見えたのだけれど。

タイトルは聖書の中のペテロの言葉から取られたもののようだ。

しかし、ラストで繰り返される「そんな奴は知らない」という言葉は、ペテロの場合とは異なり、彼をかばうため、彼が妹と大切な女性を無事に連れ帰るためにつかれたウソだったのに。

そんな時でさえ、バカ正直に応えることしかできない。

前半の、歯を喰いしばりながら観るような緊張感と、後半のある種の喪失感と。

殺すなかれ。

その戒律を守ることだけをどこまでも貫こうとした ある男の物語。

約70年前に書かれた戯曲が、もしかしたらこれからの我々にとってもっとも切実な課題を浮き上がらせているのかもしれない。


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あうるすぽっとのロビーには、過去に上演された三好十郎作品関連の資料が展示されていた。


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一昨年の文化座+東演『廃墟』の写真などもあって、懐かしく拝見した。太平洋戦争直後のある家族の様子を通して、当時の状況や戦争責任、主義と生活なとについて描いた作品だった。戯曲の骨太なテーマ性と構成の巧みさを生かす演出、俳優陣の熱量とが相まってたいへん見応えのある公演であった。

特に、この作家の作品が上演されるのをもっと観たい、そうシンプルに思わせられるだけの戯曲の面白さがあった。それは今回の上演でも同様であった。これからきっと他の作品も拝見する機会があるだろう、あるといいな、と思っている。

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