ネガティブ最前線 -9ページ目

『サナトリウム』

君と最後に見た桜の木は

今は青々と葉をつけて逞しく伸びている。

あの時はまだ花びらが舞っていたのに

僕はいつの間に時間に置いていかれたんだろう。


君の笑顔がとても鮮明で

だけど同時に遠い気がして

このまま時計の針が思い出を刻んでいくなら

僕の時計も壊してしまいたいと

そう強く願っていた

ずっと。


今僕が生きているこの時は

君が何より願った明日よりもきっと儚い

君を忘れてしまう時。

こんなにも悲しいのに

もう涙は枯れ果ててしまった。

君を想う一分一秒が

君をすり抜けていってしまう。

今はまだ何も考えたくない

君の笑顔だけ見ていたい

君の声だけ聞いていたいのに

もう何処にも君はいなくて。


きっとこのまま夏が来て 秋が来て

そして冬を越えて 春に戻って

そうしたらまたこの桜は綺麗に咲き誇って

皆に希望を齎すんだろう。

来年も見れたらいいねって

隣り合う人と笑うんだろう。

去年の僕らがそうだったみたいに。


また少し上がった熱で身体が浮いた感覚。

沈んでいく心と 浮つく身体が反比例して目眩を起こす。

君が笑う

花の様に

花より美しく

君が僕を呼ぶ

鈴の様な声で

鈴より透き通った声で


夢でも幻でも

この世の終わりでも構わない

君と一緒にいられるなら。


遠くで聞き慣れた看護師の声がする

だけど僕は君の声がした方へ意識を向ける

今行くよ

君が呼んでくれるなら

何を失っても厭わない

君が僕の世界の全てだから。

『共食い』

誰もが誰かの犠牲の上にいる。

僕だって君だって貴方だって。

誰かを食い潰すことで食い繋いで

そしてその片側を誰かに食い破られている。


その傷は痛むだろう

その傷は癒えないだろう

血液をどろどろと零しながら

息も絶え絶えに泣きながら

僕らは笑っている振りをする虚栄心の塊


自分の上に誰がいるかなんて知らない。

自分の下に誰がいるかなんて気にしない。

いつでも自分一人の事で精一杯。

大人は「子供の為」なんて言うけど

子供が大人の理想通りに育つためだって認めろよ。

所詮は自分の為なんだって。


下を見れば優越感

上を見れば劣等感

類は友を呼び

朱に交われば赤くなる


だって覚えてないでしょう?

泣いて見送った人の事さえ。

愛すら上書きされるこの世界で

誰を蹴落としたかなんて些細な事。

「誰彼の肉が美味しかったです」なんて

一々感想を述べてらんない。

そのくらい穢れた世界にいるってことを自覚したい。


誰かの為に流した涙じゃ植物は育たない

並々と注がれても水道水じゃ魚は生きられない

人間は生臭くて醜悪なものでできている

だから人間は人間の餌にしかならない

人間は人間の餌でしかない

飼い殺しのシステム


社会に食われて死んでいく奴もいれば

食いっぱぐれもなくブクブクと太る奴もいる

世渡り上手はきっとこの上なく血塗れなんだろう

勿論それは他人の血で


この継ぎ接ぎの身体で何が出来るか考えてみようぜ

血を吐いて脚を引きずって

それでも這って進むぐらいの理由をくれよ


生きる事はただ罪で

生きる事はただ贖罪なんだ


これ以上醜くなる前に

誰か俺の心臓を食い破ってくれ。


原点回帰

今日は久しぶりに

本当に久しぶり、1年振りくらいに

メトロノームの初期のDVDを観ました。


そこには病んだシャラクさんと病んだ曲があって。


あぁ、そうだ

俺はシャラクさんがそれでも笑顔をつくるから

此処に居てもいい気がしてたんだ。

病気でも、根暗でも、人見知りでも、それでも

シャラクさんは笑うから

自分も同じように笑えるような気持ちになって。


もうあの頃のシャラクさんはいない。

僕もあの頃とは随分違ってしまった。

それでも。

それでも、テレビの中のシャラクさんは

病みながら、笑っていた。

病気と戦っていた。


勘違いされることを恐れずに言うと

僕は今のシャラクさんにはあまり興味が無い。

GalapagosSもFLOPPYもCDは買ってるけど殆ど聴かない。

自分にとってのシャラクさんは、やっぱりメトロノームで。

ここ最近ずっと頭の中でもやもやしていたものが

メトロノームのDVDを観たらすっきり無くなった。


ねぇ。

病んでいても、いいんだよね?

笑えなくても、社会人として駄目な人間でも

あの頃のシャラクさんなら許してくれるよね。

「オイラもだよ」って言ってくれるよね。


そうやって許してもらえる気がしたから

俺はメトロノームが大好きだったんだ。

いつだってシャラクさんの歌詞に救われていたんだ。


DVDの中でフクスケさんが

「是非ライブに来て下さい!」

と笑っていた。

それがどうしようもなく悲しかった。

貴方はあの日もそうだった。

10周年目のあの日。

「10年20年とメトロノームを宜しくお願いします!」

確かに貴方はそう言った。

それから間を置かずに出された無期限活動休止。

「新しいことが出来なくなった」

その理由からしたら、事実上の解散。

今思い出しても泣いてしまう。それくらいの衝撃だった。


僕は、ラストライブには行っていません。

裏切られた気持ちが溢れかえっていて、ライブに行く気になれなかったのです。

家族の前では何でもない振りをして

一人の時に只管泣いていました。

自分の居場所が無くなってしまう。

自分の帰るべき場所が、無くなってしまう。

自分を肯定してくれるものが、無くなってしまう。

それはとても悲しくて辛いことでした。

その最後を正気で見届けられる自信が、ありませんでした。


今の僕には、何の支えもありません。

僕に共感してくれる人も

僕が共感できるものも

僕を信じてくれる人も

僕が信じられるものも

何も無いのです。


メトロノームの頃のシャラクさんだけが

唯一僕を現実に繋ぎ止めてくれる鎖でした。

それがなくなった今はもう

僕はただただ深くへと沈んで

目も耳も退化した

グロテスクな深海魚の様な存在です。

悲しい。苦しい。

それだけを毎日繰り返す

針のとんだレコードです。


助けてほしいとは思いません。

もう僕には水面の光は強すぎるから。

ただ、そっとしておいてほしいのです。

肯定も否定もせず

「あぁ、そうなんだ」

と見過ごしてもらえればそれでいいのです。


何の光も届かない此処で

僕は過去に縋るだけ。

もう存在しない人の記録を見て

もう存在しない思いに心を馳せるだけ。


メトロノームだけが

僕の唯一の真実でした。

何れ全てを失うなら。

何れ全て亡くなってしまうのに

埋められる筈の無いその穴を

未だに必死になって紛い物で埋めようとしている。


それはとても滑稽で惨めな様だ。


欲しいもの全てを手に入れるなんてことは

大富豪でもない限り出来ないことで

そして俺はもし大富豪になって全て手に入れても

手に入れたことに満足して内容など頭に入れない気がする。


所詮は無い物強請りなのだ。

生きている間は、きっとずっと。

だってどんなに新しいものを手に入れても

失ったものは返って来ない。

俺が求めているものは、ずっと昔から変わらずに

あの時失ってしまった

もう形もろくに覚えていないような

けれどとても大事だった何かなのだから。


死にたいと思うのは

死ねば失ったものの所へいけると思うから。

あとは、これ以上失わなくて済むから。

命だって何だって

詰まる所この手にあるかないか、それだけ。

好きなものを全て

永遠に手にしていたいと思うのは

多分ずっと一人だったから。

理解者も共感してくれる人間も誰一人いなくて

皆が自分を否定するから

俺は皆の目から隠れて

いつも一人で物言わぬ玩具と遊んでいた。


一番最初に失ったものは今でも覚えている。

無関心な母親と、怒鳴り散らすだけの父親。

俺が一番初めに失ったものは、きっと家族だ。

でも捨てたのはどちらかと問われれば、きっと俺からだと思う。

心配されることを嫌い、触れられることを嫌い

意見されることを嫌い、知られることを嫌った。

それはおそらく幼稚園に通っていた頃だと思う。


俺は嫌いだった。

家族という偽物の器が。

当時の自分が何故自分の家庭を偽物だと感じたかは分からない。

だけど確実に家庭は偽物臭くて

そしてそんな偽物の愛情など貰いたくなかった。


だから離婚の話が出た時は嬉しかった。

自分が家にいて起きている間は誰も家にいなくなった。

何一つ気にしなくて良いということを自由と履き違えて

失ったものの大きさも形も気になんてしてなかった。

それくらい、もうその頃の自分は歪んでいた。


歪みに歪んだ俺は、物に走った。

作り物の世界。夢物語。

物が俺の全てになった。

だって物は裏切らない。

けれど物も万能ではない。

物はいつか壊れてしまう。

それにいつまでも慣れずに

一々傷付いては代わりの物を探す。

多分一生これを繰り返していくんだと思う。


失った物の代わりなんて存在しない。

失った物は永久に返ってこない。

それは死んでしまった人と同じ。

失う度に深く抉られる傷を出鱈目に縫って

涙の代わりに血を流す。


こんなにも歪になった存在を

誰が許してくれるのだろうか。

死にたい。

埋められない傷痕に爪を立てて

何度でも願う。


この叶わぬ願いを背負っていくなら

失うばかりの人生ならば

今終わらせてほしい。

今、終わらせてほしいと。


だって代わりが無いのなら

痛みばかり背負うなら

生きていくことは

こんなにも苦しすぎる。


それでもまた新しいものに手を伸ばして

俺は幻影を負い続ける。

失った自分の形を。

『黄昏の微熱』

夜の帳が降りるのを

河川敷のブロック塀の上から

二人で並んで見てた


会話は無かった

ただ、隣り合う指先が

ほんの僅かだけ触れていて

そこから微熱が伝っていくみたいで


「青春だなぁ」


言えば、君が「何のこと?」って笑う。

それがとても儚いもののような気がして

僕はどうしたらこの手の平から零さずに

君を掬い上げられるか迷う


迷って


迷って


答えが出ない内に

陽が落ちてしまいそうになって

僕は慌てて なんでもない振りをして

「帰ろっか」

と触れていた指先を離す


「ねぇ」

君が僕を呼び止める。

「魚みたいに、泳げたらよかったのにね」

何のこと? って僕が訊く

「青春だなぁって話」と言う君の顔は

落ちてしまった陽の所為でよく見えなかった。


この同じ帰り道を

後何度二人で辿れるだろう。

海の香りが混ざったこの川の空気を

後何度二人で共有できるだろう。


願っても願っても

意地悪な神様がいつか二人を分かつなら

”今”をずっと覚えていよう。


触れた指先の微熱も

黄昏に映える君の横顔も。