中小企業は大企業と戦ってはならない | 「売れる仕組みづくり」を伝えるコンサルタントのブログ

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[要旨]

経営コンサルタントの三條慶八さんは、かつて、貸ビル業の会社を経営していたとき、大手の会社と同じ土俵にのらないようにするために、内装つきの店舗ビルを建築してテナントに貸したところ、成功を収めたそうです。このように、中小企業は大企業と異なる顧客を対象にすることが望ましいということです。


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経営コンサルタントの三條慶八(さんじょうけいや)さんのご著書、「1000人の経営者を救ってきたコンサルタントが教える社長の基本」を拝読しました。同書で、三條さんは、中小企業は大企業と戦わないようにすることが望ましいということについて述べておられます。「私は大学入学と同時に、卒業と同時にではありません、入学と同時に父の会社に入社し、仕事をスタートしました。

入社したのは1970年代。父の会社は粗利率50%ほどと、信じられないくらい儲かっていました。しかし、1980年代になると、飲食業界の競争が激しくなり、関西では『やぐら茶屋』とか『がんこ寿司』、関東では『養老乃瀧』や『北の家族』など、多店舗展開でコストダウンを図る飲食店が出現するようになりました。

一般的には、こちらも多店舗展開を図るとか、コストダウンしていき、ライバルとの競争に勝とうとするのでしょうが、私はそうはしませんでした。いくらがんばったところで、相手は全国展開の大企業です。企業体力の差は歴然です。そこで、私はあえて同じ土俵では勝負しないという戦略をとったのです。私が考え出したのは、内装つきの店舗ビルを建築し、テナントに貸すというビジネスへの進出です。

これならテナントは少ない開業資金で商売を始められ、やめるときも原状復帰をする必要がない。始めやすく、やめやすい、画期的なビジネスモデルでした。三條コーポレーションは家賃プラス内装コストをいただきます。賃料の回収がちゃんとできれば、自ら店舗経営するよりも楽で、儲かるビジネスでした。飲食業経営は人の確保が大変で、気苦労が絶えないのです。

この賃貸ビジネスは大ヒットし、金融機関から次々、『どんどんビルを建ててください、資金は融資します』といわれるようになり、ついには賃貸ビル業で三宮一帯のシェアトップを占めるまでになったのです。もちろん私にも、大手企業に借りてもらえるような立派なオフィスビルを経営したいという気持ちがなかったわけではありません。しかし、三條コーポレーションにそこまでの体力はありません。

そこで、私が選んだのは『戦わない』という戦法だったわけです。大企業が入り込まないスキ間を見つけ、そこで戦わずに勝てる戦法を考え出し、独自のビジネスを展開したのです。一時は三宮の繁華街の飲食ビル業界では実績も知名度もナンバー1、地域の家賃の価格決定権を握っていた三條コーポレーションの繁栄が崩れ出したのは、1995年1月17日の阪神・淡路大震災で大きな打撃を受けたことがきっかけでした。

その後、悪夢のような金融恐慌(1997年の山一證券、北海道拓殖銀行破たん)……。そして140億円の借金となったわけです。一時期にせよ、地域最高の繁栄を手にしたのは、ライバルと戦うのではなく、独自のフィールドを考え出したからです。これは私の誇りであり、いまも私の仕事を支える基盤の1つになっています」(30ページ)

三條さんは、大企業と戦わないという戦略をとり、一時的に成功しました。では、大企業と戦わない戦略とは、具体的にどのようなものがあるのかというと、これについてはさまざまなアプローチがありますが、基本的なものは、ポーターの提唱した3つの基本戦略だと考えられます。3つの基本戦略は、(1)コストリーダーシップ戦略、(2)差別化戦略、(3)集中戦略のことです。

このうち、コストリーダーシップ戦略と、差別化戦略は業界全体を対象とする戦略なので、大企業に向いている戦略です。そして、コストリーダーシップは、低価格で勝負する戦略であり、ユニクロやニトリなどは、この戦略をとっていると考えられます。差別化戦略は、品質の高さで勝負する戦略であり、スターバックスコーヒーや成城石井などがこの戦略をとっていると考えることができます。

一方、集中戦略は、特定の分野、特定の顧客などの対象にする戦略であり、中小企業に向いている戦略です。集中戦略をとっていると考えられる会社は、スープストックトーキョーで、この会社は、「秋野つゆ」という仮想の女性をターゲットにしてお店の特徴を極めていることは広く知られています。すなわち、秋野つゆさんとは、「37歳女性、都内在住、駅チカまたは高級住宅街が行動範囲、独身または共働きで経済的に余裕がある、都心で働くバリバリのキャリアウーマン、人のことはあまり気にしない」等々の特徴を設定して、この人の好みに合わせたメニューや店づくりをしています。

話しをもどすと、中小企業では集中戦略をとるべきなのですが、いわゆるオーナー会社の場合、「自社はこういった製品をつくる」、「自社はこういった商品を売る」とは考えるものの、戦略策定までは考えて事業活動を行っている会社は少ないようです。なぜなら、現在の経営環境は、顧客志向、マーケティング志向でなければ顧客から支持されることはないのですが、中小企業では、製造志向、販売志向、すなわち、ものをつくったり売ったりする側の論理で事業に臨んでいることが多いからだと考えられるからです。

そのため、結果として、大企業と同じ土俵で勝負をすることになり、そして、価格勝負をしてしまうという状態になっているのではないかと、私は考えています。したがって、中小企業は大企業と戦うべきではないということは、誰でも理解できるわけですから、現在、大企業と戦っている会社は、どうすれば大企業と戦わないですむのか、すなわち、どのような集中戦略を実践すればいのかを考えることが、改善の手がかりになると思います。


2025/11/14 No.3257