仕事前にジョギングを。
晩秋の港町で、私の好きな場所をはしる。
私のお気に入りのホテルもある埠頭。
観光地にもなっているが、微妙にそれになりきれず。
そのバランスがまたいい。
埠頭沿いにはしり、ホテルの周囲をはしる。
釣り人や家族連れ、カップルが楽しそうにいる。
対岸のドッグに、潜水艦が修理で停泊している。
黒いクジラのようだ。
はしりながら、頭の中は
仕事のだんどりや書類作成のことなど。
大型帆船とともに海上保安庁の巡視船が停泊している。
白い船体に青いラインが晩秋の青空にはえていた。
それを見ているとある記憶がふいによぎった。
海上保安庁SSTとの合同秘匿作戦。
房総半島沖合50キロ
深夜0200 マルフタマルマル。
貨物船舶を装う航行中の不審船へ
ファストロープ降下による急襲。
降下した後、SSTの突入を支援。
彼らの後方からMP5A5自動小銃をかまえ照準を前方にむけて安全装置をはずす。
照準器にはブリッジにむかうSST隊員たちが。
のどの渇き。
人質事案でないだけストレスは少なかった。
音響閃光弾のフラッシュと鈍い音。
作戦統括官を兼ねる
SST隊長がのりこむベル212ヘリ。
暗い夜を旋回し目もくらむようなサーチライトをなげる。
昨日のように鮮明であり
遠い昔のようにおぼろげでもある。
私に懐古趣味はとくになく
また頭を仕事のプレゼンにきりかえた。
目には巡視船のすがたはもうなく
はしるのをとめて息をととのえた。
シャワーを浴び、仕事へ。