婦人科便り188 「若い」っていつまで | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

先日、40代前半のマダムが彼女のオットとお越しなり

子宮摘出でいいかどうかの相談をされた。

お二人には健やかな二人のお子が五体満足で育っており

お一人はやや不登校気味ながらも

特に病気はない。

美しいマダムは過多月経を長年患っており

もうげんなりonげんなりで

これから進学費用もかかるし、

ナプキン代に家計をこれ以上割く余裕はない、と

思っておられた。

 

ところが!

オットがやおら口を開き

「美しい君から

 子宮を取るなんて・・・

 なんて悲劇なんだ!」

・・・ハムレット?ハムレットなの??

ちょっと待って?

 

子宮腺筋症でお化けみたいになっている

子宮を骨盤MRIでお示しし、

奥様、かなりきつそうですよ、

と言葉を尽くして説明した後に

この決め台詞をいただき

ちょっと血圧が下がった。めまい?

 

やはり、男女の間には

マリアナ海溝よりも深い深淵があると見た。

反対意見がある人、一歩前へ。

 

よっくよく話を聞くと

単身赴任先から新幹線で駆け付けた(推測)オット

私がついうっかり口走った

「奥様はまだお若いからつらいでしょうけど」

と言ったセリフに引っかかっていたようである。

オットが言うには

「若い、若いって先生が言うからー

 若いんだったらかわいそうでしょ。」

ということのようです(推測)。

他にもいろいろ言っていたが、

朝からちょっとむつこい

(しつこい、の意味)ので割愛。

私は口をあんぐり開けて彼を見ていたのであるが

ちょっと横を見たら

マダムも口をあんぐり開けて彼を見ていた。

 

まあ、その手術をする

平均年齢ってのがあるかな、とは思う。

 

私調べだと

 

20代 卵巣嚢腫摘出に始まり

30代~40代前半 卵巣嚢腫摘出、子宮筋腫核出と不妊治療など

40代半ば~50代前半 子宮摘出、付属器摘出

50代後半~60代前半 がんの手術、子宮摘出、付属器摘出

60代半ば~70代半ば 骨盤臓器脱手術1回目

70代後半~80代半ば 骨盤臓器脱手術2回目もしくは腟閉鎖

 

以上が平均年齢のような気がする。

勝手に作ったのでそこ!メモしない。

90歳を越えるとすべてを超越し

私などの手に負える年齢ではない。

ちなみに40代後半が更年期治療の主力。

 

もちろん、人生は悲喜こもごも、いろいろなので

当てはまらないと感じるマダムも多かろう。

ついつい上記よりも「若干」年齢が下だと

若い若い言うてしまいます。スミマセン。

だって皆が喜ぶんだもん。

 

上記のマダムは子宮との別れ

(自分のタマではない)を

嘆き悲しむオットを

「あなたの子以外は産む気はないのよ」

という全世界がしびれる愛の言葉を吐き

ハムレットおぢさんを黙らせた。

モノは言いよう。

よってこの春に予定した術式は

私が思い描いていた通り、

子宮全摘一点決めでよさそうです。

 

ハムレットおぢさんを安心させるよう努めます。

愛はいつでも美しいバラのようです。