富士の裾野で源頼朝主催の大規模な巻狩りが行われる事を知った曽我兄弟は、長年世話になった箱根権現別当・行実の下を訪れ、実の父・河津祐泰の仇、工藤祐経との因縁を話したという。

おそらく、二人が工藤祐経を仇として狙っている事を他言した、生涯初の瞬間であろう。

これを聞いた箱根権現別当・行実は、二人の門出への祝い、並びに仇討ち成就の願いをこめて、神宝を渡したのである。

兄・曽我十郎祐成には、かつて木曾義仲が所持していたと言われる太刀
“微塵丸”を。

弟・曽我五郎時致には、源義経から奉納されたと言われる太刀
“薄緑”を。

行実は二振りの太刀を手渡しつつ、

“この太刀は一時的に貸すだけだ。必ず返しに来るように。”

と言ったとか…。


歴史は常に動いている。