奈良時代には、
遣隋使によって請来された
経典の研究を行うために、
法相宗、倶舎宗、三論宗、
成実宗、華厳宗、律宗の
六つの宗派ができました。
これを南都六宗といいます。
宗派とはいえ、現在の感覚とは違い、
経典や教えを研究する
学問のグループ的なものでした。
その中で今でも残っているのが、
法相宗、華厳宗、律宗の三つです。
法相宗は、玄奘が中国にもたらした唯識の思想を
その弟子が大成させたもので
華厳宗は、有名な大乗経典である『華厳経』の教えを
権威とした宗であり、
律宗は、戒律を守ることが悟りへの道であると
考えていたといわれます。
いずれの宗派も、現在では大きな勢力とはいえませんが、
奈良の本山を元に日本で確固たる地位を有しています。
また、諸宗兼学というように、後に成立する
真言宗や天台宗の僧たちは
これら他宗派の教義を併せて学んでいました。
・法相宗
興福寺、薬師寺を本山とする。
その教えの根幹は唯識思想であり、
南都六宗で最も大きな勢力であった。
唯識とは、この世のすべての事象は
心のはたらきであって、心の深層には
過去から現在までのすべての行為を蓄える
アーラヤ識がある。それを清らかにすることで
悟りに至ると考える。
・華厳宗
東大寺が本山である。
本尊は宇宙そのものを体現した毘盧遮那仏。
自己とそれをとりまく宇宙の全体は、
仏の超越的な力の表れだとみなし、
仏とわれわれは一体であって、
あらゆる現象は一つの生命活動であると考える。
・律宗
唐招提寺が総本山。
中国で戒律の講義や受戒に携わっていた
鑑真が日本にもたらしたものである。
仏教の基本である戒、律、慧の中で、
戒律を守ることを重視している。
このように、現在では多くの参拝客が
訪れる寺院には、多くの伝統が残されています。
京都には、清水寺や東寺、鹿苑寺(金閣寺)
といった観光でも有名なお寺は多いですが、
上に示したように、奈良にも南都六宗の本山があり、
それに加えて、多くの真言宗の寺院もあります。
その歴史や思想も興味深いものといえます。