観音菩薩は、十一面観音や千手観音、
如意輪観音といった変化観音の登場によって
大きく発展していきました。
特に日本では六観音や三十三観音という形で
まとめられました。
六観音といえば、六地蔵信仰と同様に
六道の輪廻に苦しむ衆生を救う目的として
配当された六体の観音菩薩のことをいいます。
平安、鎌倉時代には末法思想や世情の不安が
大きくなるとともに、特に地獄への恐怖が
説かれると、六道の苦しみを取り除く六観音が
注目されたといわれます。
六道とそれに対応する観音は
地獄…聖観音
餓鬼…千手観音
畜生…馬頭観音
阿修羅…十一面観音
人…准胝観音
天…如意輪観音
となっています。
これは真言宗における六観音であり、
天台系では、人に対応する准胝観音の代わりに
不空羂索観音を置いています。
末法思想は、教えだけがこの世に残り、
人がいくら修行をしても悟りを得ることは
できないという観念のことです。
この思想は、鎌倉時代以降に浄土教が
隆盛するきっかけとなったともいわれます。
いずれにしても、六観音の信仰は
地獄をはじめとする六道輪廻への恐怖を
慰安することを願うためのものであったと
思われます。
来世ではできるだけ悪い世界を逃れて、
より善い世界に生まれようと願う機運が
高まっていたことから広まったのです。
このような展開も観音信仰の
新たな形の一つといえます。