【題字のイラスト】 間瀬健治     

 

〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉
第7巻 解説編
2019年4月24日

 

紙上講座 池田主任副会長


〈ポイント〉
①師の(ちか)いを弟子(みずか)らの(せい)(がん)
②地域の(じつ)(じょう)に合わせた活動 
③世界の指導者と対話する理由

 

池田先生が「世界広布の第一歩」をしるしたハワイ。ヤシの向こうに名勝「ダイヤモンドヘッド」が見える(1995年1月、先生撮影)。第7巻「萌芽」の章には、2回目のハワイ訪問の模様がつづられている

 

イタリアのナポリで子どもたちと記念のカメラに納まる池田先生(1963年1月)。「早春」の章では、ヨーロッパ訪問の様子が記されている

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第7巻の「解説編」。池田博正主任副会長の紙上講座とともに、同巻につづられた(しゅ)(ぎょく)の名言を紹介する。次回は、第8巻の「基礎資料編」を5月8日付に(けい)(さい)予定。(第7巻の「基礎資料編」は4月2日付、「名場面編」は10日付、「御書編」は17日付に掲載)

 

 1962年(昭和37年)11月、創価学会は第2代会長・戸田先生の(ゆい)(ごん)であった300万世帯を達成しました。第7巻の「文化の(はな)」の章で、その当時の様子がつづられています。
 300万世帯の達成は、師匠・戸田先生の思いを、弟子・山本伸一が(みずか)らの(ちか)いとして()()ぎ、(ひっ)()の一念と行動に(てっ)する中で、もたらされた結果でした。そして、“次は、いよいよ六百万世帯だ。先生! 見ていてください”(90ページ)と決意しています。この目標は、広宣流布を自らの使命と責任であると、()(かく)することから生まれたものであったといえるでしょう。
 『新・人間革命』第30巻〈下〉に、「広宣流布という(だい)()(ぎょう)は、一代で()()げることはできない」(434ページ)と記されていますが、師の精神が世代を()えて(けい)(しょう)されてこそ、初めて広宣流布は(じょう)(じゅ)します。その意味において、次代を(にな)う青年たちへの深い思いが第7巻でもつづられています。
 伸一は青年に対して「自分たちの世代の広宣流布は、自分たちが責任をもち、最も(ゆう)(こう)な運動をつくり上げていってこそ、仏法の永遠の流れが開かれる」(24ページ)と期待し、青年部の“若人(わこうど)の祭典”や(べん)(ろん)大会などに出席しました。その弁論大会では「広宣流布は青年の手で成さなければなりません。そのために、青年部の(しょ)(くん)は、(中略)大聖人の仏法こそ絶対であるとの、大確信をつかんでいただきたい」(372ページ)と激励しています。
 師弟の道を歩むということは、単に師の後に弟子が続くことではなく、弟子が師の誓いをわが(せい)(がん)として全身で受け止め、行動を起こすことです。「(だれ)かが」ではなく、「自分が」一切の責任を()たす。この一人立つ精神を弟子が受け継いでこそ、師弟の道があることを(むね)(きざ)んでいきたいと思います。

 

( )( )の春”が来た


 「(ほう)()」「(そう)(しゅん)」の章では、63年1月の伸一の海外訪問の()(よう)が記されています。アジア・ヨーロッパは2年ぶり、アメリカは3年ぶりとなる2(じゅん)()の世界旅でした。伸一は「十年(さき)、三十年先、百年先のために、世界の広宣流布の()(せき)をする決意」(105ページ)で取り組み、幹部と共に、3コースに分かれて(じゅう)(そう)的な指導を行いました。
 「広宣流布は、決して(かく)(いつ)的な方法では進めることはできない。(こく)(じょう)や文化、民族性などを深く理解し、その国、その地域に価値をもたらす方法を()(きわ)めていくことが大切」(119ページ)であるとの(かん)(てん)から、さまざまな指導を行い、信心の基本を打ち()んでいきました。
 例えば、()(きょう)については「友の幸福を(ねん)じ、自分の信ずる最高の教えを、最高の生き方を教えていく、(すう)(こう)()()(こう)()」(125ページ)であり、「布教は、自分の(おく)(びょう)な心や生命の弱さを打ち(やぶ)るという、()()自身との戦いから始まる」(同)と語っています。
 また、「私どもの信心は、どこまでも『法』が(こん)(ぽん)です。(中略)みんなが心を合わせ、団結して活動を進めていく必要がある」(126ページ)と団結の重要性を強調しています。
 さらに「正しい信仰には(だい)()(どく)がありますが、同時に必ず(なん)もあります。その時に教学がないと、信心に()(もん)をいだく」(147ページ)ことになると、教学研さんの意義を教えています。
 初訪問した(おり)の座談会では、人生の()(あい)()(のう)に打ちひしがれ、質問の()(ちゅう)で泣きじゃくる人もいました。しかし、2巡目の世界旅では「どうすれば広宣流布が進むのかという、妙法流布の使命と責任から(はっ)する()い」(127ページ)が数多く見られました。その姿(すがた)に、伸一は“広布の春”が来たのを感じ取っていきました。
 世界旅の中で、伸一が心を(くだ)いていたことは、各国において、いかに社会に()()した活動を(てん)(かい)していくかでありました。そのために、それぞれの国で(ほう)(じん)(かく)を取得していく必要があると考え、その具体的な準備にも、この時から取り()かっています。
 また、会員の激励とともに、伸一が(ちから)(そそ)いだのが、各国のリーダーとなるべき人材の育成でした。当時のメンバーは、仕事や結婚で海外に(わた)った人が(たい)(はん)でしたが、ドイツなどにおいては世界広布の使命に燃えて、自らの()()で渡った青年も誕生し、(あら)たな広布の流れが生まれつつありました。
 そして、伸一はパリで同行の友に「国際人として最も大事なポイントは、()()主義に(おちい)ることなく、人びとを幸福にする哲学をもち、(じっ)(せん)し、人間として(そん)(けい)されているかどうかである」(238ページ)と語り、学会員は真の国際人として生きるよう(うった)えています。

 

平和の(しゅ)()()


 この世界旅の前年10月には“キューバ()()”が起こり、東西冷戦の緊張が高まっていました。伸一は「それまでに(こう)(そう)してきた、世界の指導者との対話が、(きわ)めて大事である」(80ページ)ことを(つう)(かん)します。
 そうした中で、アメリカのケネディ大統領との会見の()(しん)がありました。伸一はそれを(じゅ)(だく)し、戸田先生の「(げん)(すい)(ばく)禁止宣言」の精神を伝え、米ソ(しゅ)(のう)会談の再開や世界首脳会議の開催を提案しようと()(さく)を重ねていました。
 大統領との会見は実現しませんでしたが、その後、伸一は世界の指導者との語らいを広げていきます。そこには、大きく二つの理由がありました。
 第一は、仏法者として「人類の平和への流れをつくりたかったから」(329ページ)です。
 そして第二は「学会は、決して日本人のためだけの宗教ではなく、全人類のための世界宗教であることを、(にん)(しき)させる努力が大切」(273ページ)であり、「メンバーを守るためにも、自分が各国の指導者と会い、学会の真実を(うった)()いていこう」(同)と決意していたからです。
 人類の平和を実現するため、そして社会の()(かい)によって同志が苦しまないようにするために、伸一は自ら“(たて)”となることを誓い、世界の指導者たちと語り合っていったのです。
 伸一は帰国後、男子部幹部会の席上で()()けました。「一国の(はん)(えい)や利益のために、あるいは、一国を守るために、他の国を()(せい)にしては絶対にならないし、そのための指導(げん)()こそが仏法です。ゆえに、その仏法を(たも)った私どもが立ち上がり、十年先、二十年先、いや、百年先の人類のために、平和と幸福を(じゅ)(りつ)する哲学の(しゅ)()を、世界に()いてまいろうではありませんか」(332ページ)
 広宣流布は、人類の精神性と(きょう)(がい)を最高に高めゆく崇高なる挑戦です。この伸一の(さけ)びを受け継ぎ、私たちも今いる場所で、平和と幸福の連帯を広げていきましょう。

 

名言集


●永遠()(へん)の方程式
 太陽の(とう)(こん)をいだいた一人の(ゆう)(しゃ)がいれば、その勇気は波動し、(ばん)()()ぶ。そこに、広宣流布という(なん)()(ちゅう)の難事を()()げる永遠()(へん)の方程式がある。(「文化の(はな)」の章、89ページ)

 

●一日一日が勝負
 一日一日が勝負である。(いっ)(しゅん)一瞬が決戦である。“この時”を(のが)さず、(ちから)(かぎ)り道を切り開いてこそ、未来の(さん)たる栄光が待っている。(「(ほう)()」の章、105ページ)

 

●歴史の主役は民衆
 歴史をつくるのは民衆です。一人ひとりが()()自身に(いど)み、わが人生、わが()(たい)の“主役”として力を出しきっていく時、必ず新しい時代の(とびら)は開かれます。(「萌芽」の章、111ページ)

 

●敵をも味方に
 行動すれば、(ちぢ)こまった心の世界が大きく広がっていく。信心も同じことだよ。()(はん)され、(たた)かれるからいやだと思って、()じこもっていたのでは、何も()(たい)は開けない。しかし、勇気をもって、戦うぞと決意してぶつかっていけば、敵をも味方にすることができる。(「(そう)(しゅん)」の章、242~243ページ)

 

●師の()(あい)
 たとえ、草の根をかみ、(がん)(ばん)(つめ)を立てても、前へ進み、勝って、(ちか)いを()たし()いてこそ、“()()”であるというのが、戸田の指導であった。それは広宣流布の責任の重さを、弟子たちに教えようとする、師の()(あい)でもあった。(「(そう)()」の章、373~374ページ)

 

 ※『新・人間革命』の本文は、聖教ワイド文庫の最新刷に基づいています。

 

(2019年4月24日 聖教新聞 https://www.seikyoonline.com/)より