今朝はとても風が強かった。時折吹き荒れるミニ突風のなか
歩道のアスファルトの上を木くずが横切っていた。あれ?
何故木くずが吹き飛ばされずにその速度で???よく視ると
木くずだと思っていた物体はミノムシだった。

 ミノムシがこのミニ突風が吹く中、懸命に拵えたであろう
自らの住み家(ミノ)ごとアスファルトにしがみ付きながらも
自分が出せる最高速度で歩道を横切っているのだった。進行方向
から逆戻すと出発点はかなり広大な草むらになる。そして向かう
先はコンクリートの大型建物が林立するところ・・・

 ミノムシが何か考えが有って行動しているとは思えない、なら
本能的に自らの未来の命運を掛けてたどり着く先は?・・・
ミノムシにとって今一番重要なのはミノごと我が身がぶら下がる
コトが出来る確実な固定場所である、その観点から大型構造物は
理想的なのかも知れない。

 風が吹き荒れればゆらゆら、下手をするとちぎれて飛ばされて
しまう草むらより、無機質な環境ではあるが少々の嵐が吹いても
微動だにしない環境の方が自らの一生の大イベントである蛹化し
羽化するという極めて重要な時期を過ごすのには売って付けである。
後はどれだけしっかりと糸を絡めて壁に固定するかだけである。

 でも彼はおそらく考えて行動しているのではない、本能の衝動に
突き動されるのみである。自分(人間)の浅はかな推測から導かれる
判断は、元の草むらの方がよかったのに、なんて余計な意見を尻目に
、彼の本能の選択は全く正解の可能性が大きい、ミノを被って擬態は
しているものの草むらには天敵が五万といる。

 そしてミノムシは羽化するまで逃げ出すコトも儘ならない。羽化さえ
完了すれば一生の最終目的である大空を飛び回り、オスメスが出会い
子孫に遺伝子を伝え命のサイクルの輪に自らも参加する権利を得る
のである。自らがそうしてこの世に産み落とされたように・・・

 考えて行動するコトは大事である。でも時折考えを凌駕する衝動に
駆られて行動するコトもある、どちらが正しいという問題ではない
またどちらが強いというコトもない、理性が本能に負ける時もあるし
本能を理性がねじ伏せる時もある、意識と無意識脳関係も然りである。
意識は変化するモノであり、無意識は書き換えが可能なのである。

 ただ裏表の関係をひっくり返せるかという問題なのである。
無意識が引き込む幸運は不運とセットであり、舞い込むピンチは
チャンスの裏返しなのである、ピンチがくればすぐ裏にチャンスが
潜んでいるのである。ならどうすれば望む方を手にできるのか?
・・何が訪れてても感謝して受けきるのみである、良い処取りを
する為に良きも悪きも良く受け取れと・・

 モノゴトを悪く観るなというコトなのである。悪く観えるモノ
のすぐ横に良いモノが必ずあるからそちらを観ようと・・そもそも
良いも悪いもこの世にない、あるのは思い込みの中だけなのである。
そんな邪な役に立たない思い込みは捨て去らなくては飛び立てない
のです。ミノムシがミノを脱ぎ捨てて自由を得るように・・

 ミノも思い込みも心身を護ったけれどいずれ手放すモノだから・・・