2017年 フランス
強度の広場恐怖症と強迫性障害に悩むサラ。彼女は二年間も家に閉じこもったまま。毎日、いろいろな儀式が八回繰り返されます。しかし、今日サラは、一見不可能で簡単なの1つタスクを達成しようと試みます:それは、ドアの外に一足踏むということ。

いきなり別の映画の話になりますが…。
数年前、NHKで大昔の邦画「裸の島」っていうのが放送されていたのを見ました。
孤島で自給自足の生活をする家族の生活を赤裸々に描いたものでしたが、白黒でセリフ無し。おまけに冒頭の30分ぐらいは、夫婦ふたりが隣の島で汲んだ水を自分たちの家まで運ぶ様子が映し出されていました。何も知らずになんとなくその映画を見始めた私は、途中で10分ぐらいうとうとしちゃって、ハッと目が醒めると…夫婦はまだ水を運んで山道を歩いてた。それだけ、島の生活が単調で過酷であるって事を表現していたのですが、その時の私は「なんじゃ?この映画?」と思ってしまいました。

薄明かりしか入らない家の中で、ひたすら主人公の行動を追うだけの映画。80分間、ワンショットで…。この「八つ」って映画も、何も知らずに見始めると、「裸の島」の冒頭のように、単調でわけがわからなくなってしまうかもです。

でも、主人公が心の病を持っているという事を知った上で見続けると、もう本当に痛々しかった。ただ家の中で、ただ日常的なことを繰り返しているだけなのに、一つ一つの動作に対する激しいこだわり。こんなこだわりは意味がない…と頭ではわかっていても、そうせずにはいられない。彼女の苦しそうな息づかいは、そんな自分への苛立ち、絶望の現れか。
人に強制されてやっている事ではなく、あくまで自分自身でそれを選択してやってしまうのだから、ある意味、飲酒や喫煙、ドラッグにも似たような感じかな?飲酒、喫煙、ドラッグなら、それに伴い快楽というものもあるけれど…。いや、彼女にとっての快楽は「そうしているとなんとなく安心」という事なのか。どちらにしても、制御が効かなくなってやり過ぎてしまうのは辛い。

彼女がそうなった理由は、最後までわからなかった。この映画、実話ではないけれど、ああいう心の病に苦しんでいる人は実際にいるのだろうし、人は何かのきっかけであんな風になっちゃう事があるんだって事を思うと、本当に怖い。