”忘却される印章”→忘却された印章 | はんこや夫婦のつれづれ日記

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黄綬褒章受章・現代の名工・なにわの名工・厚生労働大臣検定一級印章彫刻技能士・愛知県印章協同組合技術講習会特別講師・全国印章技術大競技会審査員の「きあんおじさん」が、はんこのうんちく・職人としての生き方・はんこ業界のあり方を綴っております

コロナ禍での「押印廃止」からくる押印機会の減少が、「忘却される印章」をつくりだすという3年前のブログは、今に至り需要減を生み、「忘却された印章」となり果てているような気がします。

 

以下は、前回のリブログ「仕事」へいただいた震洋さんからのコメントです。

「先日の記事の日本刀のように美術品、伝統工芸品として生き残るしか道はないような風潮にな

ってきた気がします。車を買うときにも必要とされず婚姻届にも実印不要となればそのうち家の購入にも必要とされない日が到来するでしょう、商売にならなければ職人も育たない、しかし印章不要という方は本物の職人の印章を見たことがあるのか?美しい文字、彫刻技術を見たことがあるのか?今の我々中年世代ではインチキ占いの新聞記事の印影が印鑑そのものと思っているのが当たり前です。数は少ない本物の職人達がその本物の技術を我々素人に見せない限り日本人が大切にしなければならない文化がまた一つ消えていくのはほぼ確実であり極めて残念です。」

 

震洋さんは、印章業界の人ではありません。

一般消費者が印章を取り巻く環境を憂いてのコメントです。

コロナ禍での「押印廃止」世論に対する対応が、今までの経営論を中心にした考え方や政治への依存で終始してしまい、新たな視点を傾注することなく終始した結論であると私は思います。

そこをきちんと総括したうえで、今後どうするかが、今問われています。

業界人の思考や今まで通りの経営論を脱ぎ捨て、業界外に門戸を大きく開いて、哲学と知恵を頂くための企画や勉強会、新たな集まりが求められています。

おそらく業界はそうは動かずに黙して語らずを貫くのかも知れません。

今までと同じように・・・商売も技術も啓発活動も同じを繰り返す。

これが一番できなくなるのではないだろうか?

現に、紙に捺す印章は、機械彫り、粗悪品、完全手彫り?、手仕上げ、浸透印に関わらず「忘却された印章」であることには変わりはない状態なのです。