食事が終わって、ベッドに横になっていると、廊下から話し声が聞こえてきました。
実は、廊下には公衆電話が置かれていて、それが、私が入院した部屋のドアの真向かいで、お声がまるまる部屋に響いてくるのでした。
換気をよくするため、ドアは開けたまま。
閉めるわけにはいかないので、お話に付き合うしかありません。
聞き耳を立てずとも、大きな声で話されるので、丸聞こえです。
しかもお話の内容が、相手を責めたり、時には激高したり…
お話は2時間以上に及ぶこともありました。
長く入院されている方のようで、ほかの方は慣れているのか、看護師さんまで、見て見ぬふりで、大声で話すその女性に「声が大きいですよ」と注意する人はいませんでした。
うらみつらみを長々と聞かされて、私は、このままではノイローゼになってしまうかも、と入院初日に落ち込みました。
けれど、夕食後の電話で(一日に何度も電話をかけています)その女性は声をあげて泣いていました。
「だからさぁ、たのむよぉ~。もうさいごだからさぁ。」
その方は、もう治療のしようがないと、医師に言い渡されていました。
誰も文句を言わなかったのは、明日は我が身と、皆が思っていたからかもしれません。