新年党報(労働新聞)、軍報(朝鮮人民軍)青年報(青年前衛)「三紙共同社説」(下) | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

次に共同社説は次のようなスローガンを今年、全党、全軍、全人民が掲げるべきだと指摘しています。そのスローガンとは「偉大な金正日同志の遺訓を掲げ2012年を強盛復興の全盛期が開かれる勝利の年として輝かそう」です。そしてこのスローガンこそ今年の総体的方向だと指摘しています。


そしてそのための具体的課題として政治的威力、団結の威力を万全に強化すること、全党、全軍、全民の一心団結を一層強化すること,金正日国防委員長の遺訓貫徹こそ生命線であり、万年にわたる財宝として掲げること、一心団結は金正恩大将を領導者として強化されねばならないこと、などが指摘されています。


続いて具体的な分野別課題が示されます。最初に来るのはやはり農業と軽工業です。ターゲットは人民生活の一層の向上です。農業では町歩当たり米生産高を画期的に高めることを第1に掲げて,継いで農業と畜産を結合する「コリ(環)型循環生産体系」と朝鮮式有機農法を積極的に取り入れること、農業生産目標達成に必要な営農物資や設備を需要に応じて必要な時に与える事などが強調されています。毎年強調されてきた肥料については言及がありませんが、それはチュチェ肥料生産の正常化を前提にしているからでしょう。


そして畜産、家禽と大規模果樹農場と魚の養殖についてですが、これは現在ある能力を最大限発揮することだけが指摘されています。


次は先行部門、基礎工業部門です。まず先行部門ですが、電力部門では大規模水発電所の建設を引続き力強く推し進めると同時に、現在ある発電所の設備や技術管理を高い水準で補償し電力生産を正常化することを強調しています。現在朝鮮ではフィチョン水力発電所や白頭山先軍青年発電所など大規模水力発電所の建設が進められていますが,新たな建設対象については言及されていません。


次は石炭工業ですが,とくに新しい言及はなくただ、何時でも必要な量の石炭を保障し、新たな炭田を開発することが指摘されています。
続けて金属工業部門ではチュチェ鉄の生産能力をより高め、朝鮮式の高温空気燃焼技術を積極的に取り入れ、圧延生産工程の現代化を力強く推し進めるとなっています。


鉄道部門では全国の鉄道レールを全面的に一新させることに集中し、輸送能力を高め鉄道発展の物質的準備を滞りなく進めるとしています。すでに重量レールの生産が始まっています。化学工業ではなによりもチュチェ肥料生産体系をいっそう強固にし、その生産能力を飛躍的に高めると共に、ビナロンを始め合成繊維、合成樹脂生産を高い水準で正常化するとしていますが、無煙炭からナフサの代用品を造りそこからエチレンを造る技術が確立したので,これからは化学工業もしっかりした土台の上で発展していくでしょう。


そして科学技術部門では情報技術、ナノ技術、生物工学などの核心的基礎科学技術と技術工学分野に力を入れ、最先端レベルを突破しなければならないとしつつ、科学技術発展においてチュチェを堅持し、集団主義を具現して科学技術と生産実践を結びつけなければならない、と強調しています。


科学技術の発展において集団主義を具現するという下りは自由主義諸国では特定分野でのチームによる研究開発の形しかとれませんが,ここで言う集団主義とは生産現場の労働者らとの密接な協力のことを言っていると思った方が良いでしょう。


次にこれも特徴的ですが、都市建設についての言及があります。平壌を一新し地方都市も地方の特性を考慮しながら、新たな時代の文明に見合った都市作りをし,全国的に発展した社会主義文明国の面貌を持たねばならないとしています。


「共同社説」は引き続き国防力の強化について指摘していますが、とくに目新しい言及は無く、朝鮮の武力は領首の軍隊、党の軍隊としての英雄的姿と戦闘力を力強く指し示さねばならないとしながら、何よりも人民軍を鋼鉄の隊列にしなければならず、全軍が「敬愛する金正恩同志を首班とする党中央委員会を命を持って死守しよう」というスローガンを高く掲げ、金正恩同志を絶対的に信じ,決死擁護しなければならないと人民軍強化の総的方向について指摘している点が特徴的です。


そしてそのためにも全軍に金正恩同志の唯一的な領軍隊系を、徹底して確立するための党政治教育の徹底を呼びかけています。そして敵の武力挑発には無慈悲な懲罰を加えられるように徹底準備すべきだとしています。また金正日国防委員長の軍民一致の思想を徹底して実践しなければならないとも指摘しています。


「共同社説」は次に党建設問題、大衆団体強化の問題、統一問題について言及していますが、これについては割愛しようと思います。ただひとこと言わせてもらえば、党の建設や大衆団体強化の問題で強調されているのは、金正恩大将の唯一指導体系を確立する問題が最重要課題として指摘されている点です。これについては追々言及することもあるかと思うので、ここでは扱いません。


つぎに「共同社説」は統一問題について指摘しています。∇民族自主、民族優先の立場を徹底して堅持しなければならない、∇民族的和解と団合は祖国統一問題の前提であり、担保である、∇内外の好戦者らによる戦争政策を破綻させるのは、現在もっとも焦眉の問題であると原則的問題について再度指摘しているのは、最近の韓国政府と韓国軍部の動きを牽制したものであるとも受け取る事が出来そうです。またとくに内外の好戦集団らの戦争政策と関連して,駐韓米軍の撤退について指摘している点は重要です。


またとくに今年は10.4南北共同宣言5周年に当たる年です。「共同社説」はその5周年を迎え。この共同宣言を積極的に支持し履行しようとする雰囲気が全半島にこだまするようにし、韓国でも外勢と一緒になって民族の念願を踏みにじっている、現政権の事大売国的策動を断固阻止するための大衆的闘争の炎を燃えたぎらさねばならない。と指摘している点も重要です。


さらに昨年12月30日に国防委員会が声明を出し,「李明博政権とは永遠に相い対しない」と、完全な絶縁を宣言していることを忘れてはならないでしょう。当の2MBはそれをまったく知らないようです。あるいは知っていてもさして重要だとは思っていないのかも知れません。朝鮮について一から勉強し直す必要がありそうです。考えが甘すぎます。遠からず強烈なショックに見舞われるでしょう。


「共同社説」は最後に、とくに昨年の国際環境の著しい変化について言及しながら、金正日国防委員長の中国、ロシア訪問は世界平和と東北アジアの安全を保障し、親善関係を深めるのに重大な契機となったと指摘、帝国主義勢力がいかに騒ごうとも社会主義一路を進む朝鮮を止めう事は出来ないとし、朝鮮は引き続き自主、親善、平和の理念に基づき、朝鮮の自主権を認める全ての国との善隣友好関係を拡大発展させていくと指摘しています。


総じて「共同社説」は何よりも金正恩大将を領導者としてその周りに全党、全軍、全人民が一心団結し、金日成主席と金正日国防委員長の遺訓貫徹を使命とする、朝鮮の革命と建設を導く金正恩体制を鉄壁に築くべきだということで一貫しています。今後朝鮮はまさにその道を動揺することなく進むことでしょう。それこそが金日成主席の遺訓を受け継いだ金正日国防委員長が次世代に託した遺訓なのです。しかし古くさい自由主義のルールや原則を頑なに守ろうとする保守主義者らにはこの革命的な朝鮮の姿は見ても見えないのです。


金正日国防委員長が残した次の言葉が浮かびます。「人間は自分が知るだけ見、聴き、感じ、受け入れるものです」
知ることの少ない者には見えるものも,聞くものも,感じるものも、悟るものも,受け入れるものも少ないのです。(了)