南北関係は改善に進む?米韓の動きが鍵 | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

李明博政権登場後の対北朝鮮敵対政策のために隔絶していた南北関係が、以前の水準に戻ろうとしているようです。もちろん李明博政権が簡単に敵対政策を引っ込めるようには思えませんが、まずは最近の変化をお知らせします。


南北赤十字社が18日午前、開城工業地区の北側通行検査所で盆にちなんだ離散家族面会参加者の候補に対する生死確認回報書を交換しました。今回の解放書交換では北側が依頼した200家族のうち162家族が、南側の依頼した200家族のうち140家族の生死がそれぞれ確認されました。今後は、確認された生死確認回報書にもとづき直系家族と高齢者を優先した最終面会対象者100人を選定し、来る20日に南北が最終名簿を交換する予定です。


今回の離散者家族の面会は2度に別けて金剛山で行われますが、10月30日から11月1日までは北側が申請した離散家族100人にの南側に住む家族が面会し、11月3日から5日にかけては南側が申請した離散家族100人の北側に住む家族が面会することになります。


李明博政権が登場して初めての離散家族の再会です。離散家族の方々は分断以後初めての再会なので、さぞ興奮していることでしょう。嬉しいことです。


次は、「天安艦」事件の余波で遮断されていた南北の航空通信網が5ヶ月ぶりに開通した話です。
韓国の統一部スポークスマンは18日午前のブリーフィングで北側から連絡が入り、「遮断していた北南民航直通電話を10月18日午前から再び運営するとの方針を通報してきた」と明かしました。さらにこれと関連して18日午前9時頃に仁川航空交通センターと北韓の平壌飛行区域指揮所間で試験通話があった」と明かしています。同スポークスマンによると北側からの通告は16日、開城工団管理委員会を通じて口頭で伝えられたと言います。


北朝鮮は、韓国政府が「天安艦」事件の「報復措置」として、全般的南北関係を遮断する5.24措置を発表したのに対する 報復措置として北側が取った措置の一つです。実は北朝鮮政府は、韓国政府が5.24措置を発表した翌日に8項目の措置を発表していますが、そのなかの「南朝鮮船舶、航空機の我がほう領海、領空通過を全面禁止する」とした具体的措置の一つとして北南民航直通電話を遮断していたのです。


これにより韓国の航空機は北側領空を避けて迂回運行しなければならず、また南北の航空区域を往来する外国機に対しては予備用の衛星網を通じて通信を連結してきました。しかし衛星通信網は5.24措置以後2度に渡って3~4時間ほど断絶するなど、航空機の運行の不安定性が増大していたところでした。


5.24措置以前には南北間に地上2回線、それに予備用の衛星1回線で運営していたのですが、今回の北側の措置によって切断されていた地上2回線が復旧されたわけです。もっともこの措置は領空、領海通過を認めたことではありません。領空領海通過には別途措置が必要です。
現在南北間をつなぐ通信網は、軍通信網と航空当局者間の通信網の2つだけです。しかし、北側の今回の措置によって今後板門店赤十字社チャンネル,海事当局間通信網などが追加的に復旧される可能性が注目されていると言います。


北側のこうした措置について、韓国統一部のチョン・へソンスポークスマンは「それだけのこと」とずいぶんとあっけない評価を下しました。しかし、こうした評価だけでは北側の意図は読めません。離散家族の再会問題も含めて北側がなぜ積極的な姿勢を見せているのかについて考える必要があるでしょう。この問題と関連して16日に、中国御訪れていた金桂寛外務部副部長が、「9.19共同声明履行の意志」があることについて発言している点に注目する必要があると思われます。


金副部長の発言は12日から16日にかけて中国側の招待を受けて訪中した朝鮮外務部代表団の団長として中国を訪問し、朝中関係、6者会談再開、朝鮮半島と地域情勢などについて真摯に虚心坦懐に会談し、「全朝鮮半島の非核化を実現するために6者会談9.19共同声明を履行すると言うわれわれの意思には変わりはない」(外務部スポークスマン)ことを確認したものです。


これと関連して外務部スポークスマンは、朝中外務部会談と関連した朝鮮中央通信とのインタビューで、「われわれは6者会談再開の準備を終えているが、アメリカをはじめとする一部の参加国がまだ準備が出来ていない条件の下で、急がず、忍耐強く引き続き努力することにした」と語っています。ここでいう「一部の参加国」に韓国が含まれているのは言うまでもないでしょう。


この朝中外務部会談について日本では主に中国側の意見が紹介されただけで、北朝鮮側の意見については重きを置かなかったようですが、それでは北側の考えを知ることは出来ません。当然です。北側の考えではアメリカや韓国さえ準備を済ませばいつでも6者会談を再開差売ることが可能だと言うことです。つまり問題はアメリカや韓国にあるということです。


ではアメリカや韓国の考えはというと、すでにブログでも強調してきましたが、次の二つさえクリアできれば6者会談の段階的再開へ動くことができると言うものです。その一つは南北関係の改善であり、二つ目は非核化へのはっきりした姿勢を見せろと言うことです。


最初の南北関係の改善について言えば、北側はすでに「天安艦」事件を巡る安保理議長声明直後からすでにその動きを示しており、それが最近では金剛山観光再開に向けた柔軟な姿勢や、離散家族の再開問題、南北航空通信の再開問題として現れているのです。「天安艦」事件の真相究明についてもその方法論が柔軟さを帯びてきています。


二つ目の非核化問題と関連しては、まだはっきりとした具体案を提示してはいませんが、9.19共同声明が頓挫したのにはアメリカや韓国こそ圧倒的に責任が問われるべきであり、その点で北朝鮮は「まだ準備が出来ていない」と指摘していると見たほうが良いでしょう。


現在アメリカと韓国は北朝鮮が9.19共同声明を履行する意思があることを立証するものとして延辺各施設のモラトリアム(稼動中断)宣言と国際原子力機構(IAEA)の査察復活を上げているようですが、はっきり言ってそれは手前勝手な要求でしょう。IAEAに対する北朝鮮の不振は極めて強く(何しろ北朝鮮の核問題が、北朝鮮の核武装にまで発展した主要な原因を作ったのが、他でもないアメリカの手足となって動いたIAEAでしたので)簡単に解消できるものではなく、北朝鮮にIAEAの査察を受け入れるよう説得するためには、IAEAが過去の愚行について北朝鮮に明確な形で謝罪する必要があるでしょう。北朝鮮もそれを前提にする可能性が濃いです。


それに延辺の各施設のモラトリアムですが、そのためにはまずアメリカが核先制攻撃の対象から北朝鮮をはずし、核攻撃をしないと言うことを約束する必要があります。つまりアメリカや韓国の言う条件とはまず自らがそのために動かない限り満たされることはないということです。日本について言うならば、すでに6者会談参加国としての資格さえ疑われているのですから論外です。


総じて結論するならば、やはり米韓が先に動かない限り6者会談最下の道は険しいと言うほかないようです。