「脱北者証言」の多くは「情報ブローカー」の捏造 それを紹介する産経の変な記事 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

MNS産経が不思議な記事を載せています。21日の「ソウル=水沼啓子」発の「北朝鮮最新情報を携帯形態でキャッチ 脱北者ルート、ただし玉石混淆」という記事です。


既にお読みの方もいると思いますが、一応内容を掻い摘んでご紹介することにします。最近、北朝鮮の最新情報がリアルタイムで流れていますが、それらの情報が「脱北者」が携帯電話を利用して、北朝鮮内の家族や親戚(しんせき)と連絡を取り合って情報を流しているためであり、韓国の対北関連団体も独自の情報源を持って、携帯電話で北朝鮮内の最新情報を得ているというもの。ただし、流入する大量の北朝鮮情報の中には、情報ブローカーが作った偽情報もあるという指摘も紹介しています。


北朝鮮で携帯電話が急速に普及していることはよく知られています。しかし北朝鮮の携帯電話は国内通話以外鹿で来ません。国際通話はできないということです。記事では中国から秘密に持ち込んだ国際通話が可能な携帯電話を使って情報を得ていると言いますが、仮にそういう事例があったとしても極一部でしょう。高官らにもそうした携帯電話を使って情報を流す者がいるとも書いていますが、日本や韓国ならいざ知らず、それが事実として確認された事例は皆無です。ですからそれは単なる興味本位の憶測の類でしかありません。もっとも「情報通う」をひけらかす「自慢屋」たちにとっては、飛びつきたくなる話ではありますが。


記事では「情報ブローカーが作った偽情報もあるという指摘がある」とも書いていますが、この記事自体がそうした情報ブローカーの作った偽情報の可能性もあるわけです。水沼記者自身が、これまでこうした偽情報を流し続けた自称「脱北者」、姜哲煥が「北朝鮮から出てくる大量の情報の80%程度は(真偽を)確認できない。最近は金総書記の後継者に3男、金ジョンウン氏が決まったとの情報もあるが、決定的な証拠がない。この情報は海外メディアも伝えているが、北朝鮮国内の(正確には「脱北者」らと言ったほうが事実に近いのですが)情報ブローカーが作った情報を中国人が持ち出し、売っていたりする」と指摘したことを紹介しています。


もちろん姜哲煥自身もこうした偽情報を随分と流してきたわけですから、彼の言葉は自己弁護を狙ったものだということもできるでしょう。あるいは他の情報は全ていんちきだが、自分の流す情報は「正確」だとでも言いたいのでしょうか。しかし彼の流した情報の中でそれが正確なものだったと確認された情報は皆無です。
また仮にいくつかの情報に間違いはなくてもその情報の文脈を読み、その情報の意味する所を正確に伝えてきたかと言うとやはり答えはNOです。大事なことは情報そのものではなく、その情報が伝えていることの文脈をいかに読むかということです。


例えば私が道を歩いていて小金を拾ったとします。そしてその小金を交番に届けずにポケットにしまったとします。それを見た人物が私が落し物を着服したと報道機関に伝え、報道機関はその事実を報道したとします。もちろん当の私には落ちていた小金を着服するつもりなどはなく、しかしすぐに交番に届けなかったのは事実です。問題はその事実を伝えるときにその文脈も考えずに、現象だけを持って勝手に推測し、それを情報として流したことにあります。情報リテラシーが望まれる理由の一つでしょう。


水沼記者が言うように、中国から持ち入れた携帯電話を使って、情報が流れている可能性を100%否定することはできないでしょう。しかしそうして得た情報が先の例のように、勝手な解釈によって事実が捻じ曲げられており、信じるに値しないものであるかも知れないということを、常に警戒しなければならないことは言うまでもありません。少なくともジャーナリストを自認する者であればです。


ところが産経新聞ほど姜哲煥など、「脱北者」の流す情報に敏感に飛びついてきた新聞もありません。つまり朝中国境地帯の「情報ブローカー」の作り上げた北朝鮮の内部事情を扱ったでっち上げ情報に、もっとも機敏に飛びついてきたのはほかでもなく産経ではなかったでしょうか。つまり姜哲煥の言った80%の「真偽の確認できない」情報を無責任にも垂れ流してきたことを忘れてしまったとでも言うのでしょうか。それとも「新聞の命は僅か1日」の例えを受け入れ、過ぎてしまえばすべてチャラと言うことなのでしょうか。まさか自分が卵を産んだことも忘れてしまう「鶏の頭」ではないとは思いますが。


加えてこうした「情報ブローカー」(韓国やアメリカの情報機関と繋がっている輩も含めて)にとってもっともありがたい取引相手が、ほかでもなく日本のマスメディアであることを指摘しておきます。何しろ日本のマスメディアは大金を使ってまでして、彼らに情報の捏造さえも依頼するのですから。管理人はそのために酷い目にあったTVキー局を知っています。


君子危うきに近寄らずです。産経も姜哲煥や高英煥のような人物が流す「情報」、朝中国境地帯で暗躍する「情報ブローカー」らの流す情報を鵜呑みにするのは止めたほうが宜しいのでは。そして読者も産経や読売、毎日などに良く出てくる「脱北者」とその周辺から流れる情報は、頭から信じないほうが利口ではないのかとも思います。


もちろん「北朝鮮、政治犯収容所に20万人 韓国政府が調査」などといった報道も100%そうした危険性を持った記事だと思ったほうが良いでしょう。何しろたった49人の「脱北者」の流した情報に全面的に依存した情報ですから。


いずれにせよ、朝中国境地帯の「消息筋」や、韓国の「脱北者支援組織」やグッド・フレンズのような「対北人道支援団体」の看板を掲げた、得体の知れない団体(その多くは韓国やアメリカの情報筋の援助を受けているといわれています)が流す情報には気をつけたほうが良いようです。でなければ「北朝鮮の女性下着」に異常な関心を持っている山梨学院大経営情報学部の宮塚某教授や「4人の影武者」説で名を馳せた早稲田大学の重村某教授のように、学界でも信用されず、笑いのネタにされるようになってしまうこともありますので。