憲法裁判所は「最高のギャグマン」 | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

この表題、別にふざけているわけではありません。皮肉でもありません。まったくその通りなんですから。


韓国民をそのように思わせた判断を10月29日に、韓国憲法裁判所が下しました。実は去る7月22日に韓国国会で放送法、新聞法、IPTV法など言論関係法が採択されましたが、違法な議会運営(方案の趣旨説明の省略、質疑討論の省略)や、代理投票の乱舞などによる多数決の手続き違反による議員の権限の侵害が問題になり、「議員の審議、採決権限侵害による採決は違憲」だとの訴えが野党から出されていたのですが、これに対し、放送法と新聞法を採決する際の手続きは「違法」だが、採決された法は「有効」だとの判断を下したのです。

言論関係法の国会採択についてはhttp://ameblo.jp/khbong/entry-10305391591.html


不法に法を採択したけれど採択された法は有効だというわけですから、怒りを越えて笑えませんか?これにより放送法、新聞法は11月1日発効となります。


新たな新聞法や放送法は新聞と放送間の資本の垣根をなくすことによって、権力と癒着した大資本が言論を牛耳ることができる道を開いたもので、民主主義を根底から瓦解させることに繋がる危険なものです。韓国のように大資本が権力から自由でない社会では、政権が言論を牛耳ることを可能にすることを意味するので、いっそう危険です。


憲法裁判所はこうした決定を下すために、以前の判例にはない「新たな論理」を開発しました。「権力分立と国会の自律権を尊重するということから、憲法裁判所は原則的に処分の権限侵害だけを確認し、権限の侵害により生まれた違憲、違法状態の是正は被請求人に任せるのが妥当だ」というものです。簡単に言えば新聞法、放送法の処理手続きは「違法」だが、違法状態の是正、つまり違法に採決された法の「効力」に対する事後措置は国会の「自律的意思」に任せるのが妥当だというものです。


韓国ではこの憲法裁判所の判断を「□□□だけれども□□□ではない!」というように冷笑したパロディーが、「憲裁遊び」となって流行っています。核心を突いているのをいくつか紹介します。


「偽造紙幣ではあるが、通貨価値は有効だ(使っても大丈夫)」
「ドロボーは違法だけれど、盗んだ商品をドロボーが所有するのは有効」
「カンニングはだめだが、カンニングで得た成績は有効」
「代理受験は違法だが、それで入学したのは有効だ」
「強姦したのは違法だが性交は有効だ」
「飲酒運転は違法だが、運転したのは違法ではない」

「選挙は違法に行われたが、当選結果は有効だ」


問題は違憲裁判所が法理論または解釈では違憲だが、政治的理由から違憲にはできないという、その狭間で自らの存在理由を否定したということにありそうです。


この判決を聞いて、現ハンナラ党のチャン・ユンソク議員が金泳三政権当時のソウル地検公安1部長だったときに、光州事件関係者に対する司法処理と関連して「成功したクーデターは処罰できない」との「迷言」を吐いたことが思い起こされます。クーデターはもちろん違憲です。しかし成功した以上は処罰できないというのです。過去のクーデターに対して言っているわけですからとんでもない話です。ところがその論理が今また息を吹き返したというわけです。


法曹界にどんな高尚な法論理があるのかわかりませんが、普通の常識を持っている人間にはとても受け入れられない結果であれば、いかに整然として高尚な論理であっても、墨汁を無駄に使った言葉遊びにしかならないでしょう。


現在の憲法裁判所は1986年の6月民衆抗争の産物で、1988年に始めて構成されました。実は韓国の初代大統領だった李承晩の独裁政権が、1960年の4.19蜂起によって崩壊した後に登場した民主党政権が憲法裁判所を設立しようとしたのですが、1961年の朴正熙による5.16軍事クーデターのために実現できませんでした。法治を否定して登場し、法治を否定することで生き延びてきた政権だけに憲法裁判所は望むところではなかったということです。


憲法裁判所の設立自体が独裁とのたたかいの成果だったわけですが、その憲法裁判所は2004年には「新行政首都建設のための特別措置法」が「慣習憲法」に違反するという奇怪な「法理論」を持ち出して違憲判決を下すなど、政治に左右されてきた経験を持っています。独裁政権下での今回の「手続きは違法だが結果は合法」という判決も、あまりにも政治的だというほかありません。