昔、近所の家にジョンという犬がいた。

ジョンは、とても頭がよく人間の言葉を理解しているのではないかと思ったほどだ。

私は、犬は苦手だが、ジョンだけは別であった。

 

ある日、老犬になったジョンが突然姿を消した。

近くに小さな雑木林があったが、あとは住宅街である。

どこを探してもジョンは見つからなかった。

 

犬は、自分の死期がわかるといわれており、利口でやさしい犬は自分の逝く姿を見せないようにするという。

迷い犬のように帰る場所を見失ったのではなく、自らの意思で姿を消したのである。

 

まるで、神かくしのように忽然と姿を消し、ついにジョンは見つからなかった。

あれから60年以上も経った。

 

最近、私も霧のように忽然と消えたくなることがある。