手持ちのパソコンで「たいとうする」と打って変換すると「台頭する」が出る。
国語辞典では「台頭」のほかに「擡頭」があり、「擡」は「もたげる」で出てくる。

「台頭」は現代大陸シナ語に翻譯すると「抬头」táitóuである。
つまり、台湾(臺灣、台灣)の繁体字で「擡頭」、大陸中国の簡体字で「抬头」になる。

日本では「頭」を「头」にする略字は採用していないが、「臺」を「台」にする略字は使っている。
「台頭」では「台」に手偏が足りない。日本で「抬」を採用せず、「台」にしたようで、それで手偏つきの「タイ」を使うなら「擡」のように画数の多いほうに戻すらしい。

では、なぜ日本では「抬(=手偏+台)」を採用しないのか。

これは日本で「彎曲」を「湾曲」にして、わざわざ「彎」の略字「弯」にサンズイを追加して「湾」にしたのと逆の現象である。これのどこが「漢字の簡略化」なのか。
「彎曲」は中国大陸でサンズイなしの「弯曲」wānqūになる。
サンズイは中国で「三点水」sāndiănshuĭである。
中国式の簡略化ではもとの「彎」にサンズイがないので、簡体字「弯」でもサンズイはない。このほうが合理的だ。

手偏は中国で「提手旁」tíshŏupángである。

また、格闘技のテコンドーは漢字で書けば「跆拳道」である。
だから、中国では「跆拳道」と書いてtáiquándàoと呼ぶ。
朝鮮語で태권도[thɛʔkwʌndo]である。
英語ではtae kwon doで、發音は[táikwɑ'ndóu]である。
この「跆」は「台」に足偏がついており、環境依存文字になるようだ。

このように「常用漢字」枠やコンピューターのcodeなど、漢字の扱い方が非合理的である。

ちなみに、「台風」の第1字は「台」または「颱」である。


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2008年8月