ねえ、

 

なあに?

 

多くのすばらしいものを知ることは、ほんとうにしあわせなことなんだろうか。ぼくは地球に来て薔薇園を訪ねた星の王子さまのことを思っているんだよ。たった一枚の絵で満ち足りているひとに、美術館に行くことをほんとうにすすめていいんだろうか。知ることの義務というのは、強迫観念ではないだろうか。愛をほんとうに得たいと思っているぼくは、どうしても広範な知を得る欲に憑かれることはなかった。 

 

 

じぶんの花壇に沈潜できることこそは仕合わせじゃないのだろうか。世間に知られなくとも。多くの花壇を知れば学者で、世間は認めるだろう。人生にはいつも逆説があるんだよ。

 

 

ぼくは、ぼくの花壇の一本の薔薇であるきみが居れば、仕合わせになれる。そのぼくの世界の展開がぼくにしか意味をもたなくとも。