(つづき)なぜなら、この羨みのなかには、僅かの辛さも恨みも入っていないからです… それでも、ひとりの女にとって、運命から裏切られた自分を知ったことは、酷いことではありませんか?… 

 

(ヴィオレット) でも、あなたはご自分が最も優位の立場にあることを確信していらっしゃいます。

 

(アリアーヌ) 多分、実際には、私次第でしょう、その立場が最も優位のものであるかどうかは。それにしても、どんな条件で? 私の立場が最も軽蔑すべき立場になるには、エゴイズムか個人的意志の一かけらでもあれば、充分でしょう。

 

(ヴィオレット) わたしが、あなたに、自己犠牲という特権を許しておくつもりかどうか、お分かりになりますか?

 

(アリアーヌ) ヴィオレット、私は自己犠牲のことを話題にしたことは一度もありません。私は自己犠牲に不信感をもっています。自己犠牲を信じません。私たちは、私の許容しない不具化か、あるいは、私の忌み嫌う内面的な嘘によってのみ、幸福を放棄するのです。

 

(ヴィオレット) でも、それでは… 

 

(アリアーヌ) 私は、私の周囲に、自己犠牲をする人々を見てきました。その自己犠牲は、この自己犠牲から恩恵を受けるはずだった人々自身の上に、呪いのように重くのしかかりました。自己犠牲から生じることのできるような調和は、存在しないのです。

 

(ヴィオレット) 解りませんわ。