初再呈示 



テーマ:

 

この世のモラルはね、

 

ええ、

 

本気で自分自身であろうと努めることのできない大方の者たちが、自己弁護・自己正当化つまり自己隠蔽するための、観念システムなんだよ。

 

やっぱりね。

 

うん、だから(この世のモラルそのものが)根本的に偽善性をもつ、と言わねばならない。理論も思想も全部この偽善隠しのためのものだよ。このことをぼくは、人間世界の多方面において経験して、いまやその経験の意味を知ったよ。この世のモラル意識の正体を、知った。だから、学問の世界においても、実業の世界においても、芸術の世界においても、幻想的期待など全くしない、幅広い精神を実地で自分のものにしたんだ。この世の大抵の者たちは、じぶんの自己隠蔽を完成するために、感情や理屈や世間の空気などを総動員して、つまり、現実の経験と彼らが云うものを総動員して、この「世のモラル」を、すべての他者にまで強制するのを常とする。じぶんの内だけに留めて他に関知しないという態度がとれないのが、この「世のモラル」を抱えている者らの特徴さ。

 

あなたもよく我慢したわね。

 

彼らの幼稚さ愚劣さに耐えるには、祈るしかない場合も相当あったよ。それにしてもぼくは彼らと論争はしなかった。論争の次元の問題ではないし、論争という行為自体が、彼らと同じ水準にじぶんを下げることだから。絶対的意識の導きがあったとぼくは思う。自分で自分を導いたんだよ。同じ席にいても交わらなかったんだ。この徹底ぶりそのものがぼくの本質で、この態度そのものが相当誤解されたが、いまではやはり正しかったと、ぼくはぼくを評価している。

 

あなたはほかのひととは本質がちがうから、表面からは何も解らないわ。 

 

とくに日本ではね。きょうはこれでおしまいにしよう。