人間は、言葉を受け入れるのではなく、言葉を発する人格を受け入れるのである。受け入れる言葉は、その人格への愛や好意と結びついている。誰が言っても真理は真理だということはない。ひとつの人格が、自分を侮辱しているなら、その人格をその言葉もろとも捨て去るのが、自尊心をもつ人間である。人格を離れた真理などない。数学や科学など、人格を離れて問題にしうる「意識一般」の真理のほかは。

 

 

ところで、言葉を、じぶんへの侮辱ととるかどうかには、本人の自己意識の正確さがかかっている。ただ侮辱と受けとめるだけなら、誰でもできる。正確に侮辱かどうか判断することは、真の自己意識から生ずる。真の自己意識から生じた判断なら、相手を捨て去るがよい。