求めよ国債… | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

些か本業に関連するネタで恐縮ですが、葉書の束を整理していましたら、こんなものが出てきましたので採り上げてみます。

昭和14(1939)年12月18日に東京・荻窪局から差し立てられた茨城あての葉書です。この葉書の料額印面には忠義の士といわれる楠公(楠正成)が描かれており、コレクターの間では「楠公2銭葉書」と呼ばれています。



消印の部分をよくみてみると、丸い部分(局名と日付)の上部には標語が記載されています。内容をみると「求めよ国債 銃後の力」とあります。大東亜開戦を2年後に控えたこの時期には、戦費調達のために国民に対して国債の購入が奨励されていましたので、この標語もそうした官製プロパガンダの一環と位置付けられます。



この葉書が使用された1939年から実に75年以上が経過した今日ですが、政府が「求めよ国債」などと言わなくても、超金融緩和局面であることに加えマイナス金利時代にあって、金融市場では日本国債は大の人気商品となっており、「マイナス利回り」(瞬間的なものですが)であっても売れていく状況です。

当時の人たちからすれば、こうした事態は到底想像できないものであったことは間違いないでしょう。