東京府から東京都へ | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

郵便の歴史を辿る際に、無視できない重要な要素の一つに「郵便印」というのがあります。

これが切手を抹消する役割で使われていれば「消印」ということになります。

郵便印には切手とともに様々な変化がみられるので、これを追いかけると興味深い事実がわかってきます。

画像はJAPEX2015の切手商ブースにて入手したアイテムです。



これは、昭和18(1943)年6月17日に東京・本郷蓬莱局から差し出された速達はがきで、日付の下の欄に「東京府」の文字が入っています。

従来は、この欄には時刻(午前何時から何時といったもの)が表示されることになっていましたが、大東亜戦争中の昭和18(1943)年6月1日から、戦時体制下での金属資材節約のために郵便印用の時刻欄も活字交換不要の都道府県名などに変更され、東京では「東京府」の文字の入った消印が使われるようになりました。

ところが、その翌月の昭和18(1943)年7月1日には東京都制が実施され「東京府」は「東京都」となってしまいました。この結果、消印の表示も東京「府」から東京「都」へと変更され、これに伴って「府」の郵便印は短命に終わっていますので、「府」の文字のはいった郵便印の使用例はコレクターの間で短期使用例として人気があります。