2005年06月23日(木) 13時37分27秒

「イキモノノキモチ(小説ばん)」第二回

テーマ:小説

「そういえば・・・千尋さんってアニマル・テレパスなんでしょう?あの動物の考えていることがわかるって・・・」

「うん、動物だけじゃないんだけどね・・・」

 アニマル・テレパス。動植物の感情が理解できる人間の特殊能力。レベルⅠからⅣまであり、レベルが高いほど多くの感情を理解することが可能である。千尋はアニマル・テレパスであった。レベルはⅠ。生活に支障は出ない。いままでは・・・。

「若林君、おしゃべりもその辺にして。早くしないといつまでも終わらないよ」

「あ、すいません」

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2005年06月17日(金) 02時37分56秒

「イキモノノキモチ(小説ばん)」第一回

テーマ:小説

空は晴れ渡っていた。しかし雲は遠い、冬の終わりである。賑やかな商店街。そこに一軒の花屋があった。子供連れの母親が店内を物色している。子供は不満そうだ。エプロン姿の千尋は子供の目線までしゃがみこみ、鼻を一本差し出した。子供は不思議そうに千尋を見返す。千尋は笑顔で子供を見返す。子供は小さな声でありがとう」と言った。その声は母親には届かなかったが千尋には届いた。

   

その二人を笑顔で見送る。子供は彼女の姿が見えなくなるまで何度も彼女に手を振っていた。千尋もそれに答えるように手を振り返す。空を見上げる。太陽が千尋に降りかかる。同僚の若林が店内から出てきてつぶやいた。

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2005年06月16日(木) 14時22分50秒

「わたあめ」第一回

テーマ:小説

 気がつくと朝だった。

 最近眠りが深いような気がする。悠太はソファから起きて横に置いていた携帯電話を開けて見た。

 七時三十分。少し早いか?ベッドでは大河が寝息を立てている。健人は既にいなかった。いや、昨日は帰ってきていなかったのかもしれない。悠太は身体の痛みを覚えつつ、2DKの、家賃六万円の、和室の方へ移動した。悠太が寝ているのは隣の4畳半の洋室。洋室といっても、通信販売で「これであなたの汚い和室も洋室に早変わり」が唄い文句のウッドカーペットが敷いてあるだけである。

 悠太は初めてこの部屋に来たとき、「無機質な部屋だな」と思った。それは健人の趣味か渚希の趣味かわからないが、今ではそれもどうでもよくなっている。かえって健人の車趣味が高じた部屋であったのならば悠太はここまで快適に過ごしていなかったかもしれない。

 和室には渚希がテレビゲームをやっていた。「あ、おはよ」と悠太の方も振り向かず、ただテレビとにらめっこをしている。テレビゲームに興味のなかった悠太に「これ来月発売のRPGよ」と手渡されたゲームがそれだった。

「もしかしてRPGも知らないの?」

 悠太は「知っているよ」と答え、でも最近のRPGはフィルムで撮っているのか?なんて、渚希にとっては「これはCGよ」と悠太をからかうように、今や常識のCGも知らないのかと半分馬鹿にしたような、半分興味深そうな目で悠太を下から覗くのであった。

「旦那は・・・いないのか?」

 悠太が言ったその言葉は空を捕えただけだった。悠太は大河が寝ているのを確認して、渚希に覆いかぶさった。

「キスしてくれよ」

「ごめん、今仕事中だから」

 渚希はコントローラーを右手に持ちながら左手ではノートにペンを走らせている。少しうるさそうに左肩で悠太の手をどけると、またノートに走り書きした。

「仕事なんて、ただゲームしているだけじゃないか」などと悠太は言わない。それは彼女がプログラマーとしての自己を確立して、一所懸命なのと、それを言ったらこの不思議な関係にピリオドを打つことになる恐れのあるものだからだ。

 それに、彼女のいわゆるそういうところは、悠太が尊敬できる部分であるとともに彼女に惹かれた魅力だったのだ。自分はゲームどころかパソコンにすら触ったこともない。携帯電話だって通話機能以外無縁だ。よく男は「機械に強い」などと言っているが、悠太にとっては幻想ではないのか、とさえ思ってしまう。会社では後輩の女の子たちが「片岡さんもそろそろパソコン覚えた方が良いですよ」と言ってくるが、第一パソコンの使い方さえわからない。あれは一体何をするためのものなのだろうか?巷ではインターネット、ホームページと言っているがその二つの違いさえわからない。

「インターネットとホームページってどう違うんだい?」

 と聞いても、後輩たちは笑うだけで教えてくれない。多分彼女たちもわからないのであろう。先日、渚希に聞いたらわけのわからない横文字を並べ立てられ、しまいには「新聞と広告会社みたいなものよ」と答えた。じゃあ新聞を見ればいいじゃないか。

 悠太はタバコに火を点けた。この部屋は三人がタバコを吸うので「禁煙」と言う文字はない。大河は吸っているところを見たことがないが平気なのであろうか?

 部屋の隅っこには小さい空気清浄機が申し訳なさそうに小さな音をたてている。悠太はタバコを吸い終えると6畳の和室を出て洗面台へと向かった。

 洗面台にはさえない顔が鏡に写る。やはりソファでは疲れが取れないのかな?そんなことを思いつつ、顔を水で濡らし、昨日ローソンで買ってきた剃刀を袋から取り出す。横には健人のシェイビングフォームが置いてある。悠太は勝手に拝借し、泡をあごに塗りたくり剃刀を滑らせた。

 歯を磨き終え、洗面台の明かりを消し、ソファのある部屋に戻った。ここには自分のスーツが置いてある。ワイシャツも何点か買ってきた。汚れたら洗えばいいし、下着なんかはまた必要な分だけ買ってくればいい。どうしようもなくなったときは部屋に戻ってもいいが、あの部屋には当分帰りたくない。ここが自分の部屋なのだ。この4畳半の空間だけが今自分を癒してくれる場所なのだ。

 靴下を履き終え、ハンガーにかけてあったジャケットを羽織り、カバンを持つ。すると背後に人影を感じた。振り向くと渚希が立っていた。スウェットを着ているのに身体の細さがわかるな、少しはみだしている手首を見て、悠太はそう思った。

「もう行くの?」

「ああ。早く行って昨日の続きをするんだ。残業はしたくないからね。」

「そうなんだ」

「渚希は今日は仕事?」

「うん。午後から」

「寝てないんじゃないか?」

 渚希の顔にはうっすらと疲れが見える。

「少し寝てから行く。髪の毛・・・ぐしゃぐしゃだよ」

「バイクで行くから髪は会社に行ってからセットするんだ」

「気をつけてね」

そう言うと、渚希は悠太の両肩を押さえ玄関の方に振り向かせると、両手で玄関の方に押していった。「ちょっちょっちょ」と悠太は少し笑いながら歩き出した。靴箱の上に置いてあるヘルメットを持って靴を履き「じゃあ・・・行ってきます」と言った。

「いってらっしゃい」

「あの・・・」

「?」

「歯・・・磨いたんだけどな」

 悠太が、照れくさそうに言うと渚希は微笑みながら「かわいい」と言って悠太の頬にキスをした。悠太は気分が高揚したのを感じずにはいられなかった。そして手を振ってからドアを握り締めた。

 悠太は階段を足早に降りながら「俺って恋してる」と、思うのであった。バイクのエンジンをかけると2階の窓から渚希が手を振っている。こんなことはここに住み始めてから初めてであった。それは渚希の計算なのかもしれない。しかし男はそういうシチュエーションには弱いものである。わかっていても(ほんとうはわかっていないのだが、それが男が馬鹿である所以である)顔がついついほころんでしまうのだ。

 排気量220CCの「ストリート仕様」と言われ、人気の高いバイクに悠太は足をかけ、必要以上にエンジンをふかす。近所迷惑もいいところであるが、それが悠太が渚希に対する愛の証であり、またかっこよさを演出する方法だったのだ。

 悠太はクラッチを踏み、アクセルを回し猛スピードでアパートの門を出る。門から30メートルの一般道に流れ込んだ後に、渚希の手を振っている様子を思い出し、「ああ、今日もまたここに帰ってくるんだな」と信号を見つめながら考えていた。信号は赤になった。

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