「六月の文化祭で弾き語りもするから父ちゃんのアコギ貸してよ」

てなことでオイラのギターはしばらく娘の元へと渡った。

春になったばかりのことだった。


六月の終わりに
「文化祭無事に終わったよ~」
とメールが来た。

次に会うときにギターを持って来るだろうと思っていたが、
それから連絡がない。


梅雨があけて夏になり

何回か台風が通り過ぎて秋になっても連絡がない。

月に一回のペースで会っていたのに
何か変だとやっと気付いた。


「もしかしてギター壊したんなら心配するな。また買うから」

とメールをしてみる。

「ギター壊れてないよ。ゴメン、勉強忙しいだけ」

なんだ受験生だからな~
やっぱり大学行くのか。

まるで他人事だ。
オイラに大学の費用は出せない。
財産分与はしているのに後ろめたいのは変だろうか。

しばらく放置するか。

そして相変わらず連絡は全く来ない。

木枯し吹き始める十一月になってもギターは帰ってこない。


さすがに
連絡が無さすぎる。
もう許せない。

「じいちゃんが会うなとか言ってたら裁判の判決違反で問題だけど、養育費は払い続けてやるから安心しろ。じゃぁな、元気でな」

大人気ないメールを送りつける。


二度と会えなくても
いいのさ。


どうせ金もないし。


結局、問題はそこなんだよな~


なんてグダグダしていたら返信メールが来た。

「じいちゃんはそんなこと言わん。勉強忙しくてゴメン。
父ちゃん、誕生日おめでとう」

やっと
誕生日って思い出したか。

まぁ、いいか
勉強で忙しいなら仕方ない。


来年は
オイラの誕生日を忘れないだろう?


きっと


たぶん…