JIMIN >

 

連れて行った

パソコンルーム。

 

彼女の喉がなったのがわかった。

 

 

 

目の前のパーツの

色んなとこに視線が動いて

明らかにソワソワし始めた彼女。

 

大丈夫だって、言ってるのに

 

“彼女役”への責任感で

足を動かさない。

 

 

 

ほんとに、頑固なんだから・・。

 

 

そういう事なら

 

 

 

「これ、俺も使ってるけど、

すごく座りやすいよね」

 

先に足を出して

目の前のゲーミングチェアの

座面を彼女の方に向けた。

 

 

 

目・・・

 

キラキラしてる。

 

思わず口元が緩んだ。

 

「どーぞ」

 

俺の言葉に誘われるように

ゆっくり、足を出した彼女が

一瞬、こっちを見たから

 

「座って」

 

念を押すと、

ゆっくり腰を下ろした。

 

次の瞬間、

 

 

「わぁぁ」

 

アームレストに手を置いて

何度か小さくプッシュアップし始めた。


座り心地を確認してる。

 

 

 

 

 

・・可愛いな


 

 

 

 

 

・・・・・っと

 

無意識に浮かんだ言葉が

表に出なかった事に

軽く息をついて

 

「ジウさ」

「すごい、これ、このマウス、

ジミンさん見てください、

クイックストライクボタンですよ

わぁぁ、軽い、すごい。

しかも・・マウスパッドも

G840ですよ・・発売された

ばかりなのに・・うんうん、

動かしやすい。すごい」

 

スイッチが入った。

 

 

よかった。

 

「・・じゃあ、飲み物と

ゴハン、ここに持ってくるから」

 

「はい、えっ、あっ、い、いえ、

やっぱりダメです。すみません、

あの、リビングに、」

 

また・・切れたか



立ち上がろうとした

彼女の肩に手を当てて

動きを止めた。

 

口を結んだ彼女の顔が

また赤くなったのがわかったけど

 

何も言わずに正面を向かせて、

PCを起動させると

催眠術にかかったみたいに

今度は、画面を見てフリーズした。

 

ホントに・・

 

「じゃあ」

 

!?

 

今度こそ動こうとした身体は

着ていたロンTの裾を

引っ張られて止まった。

 

「ほんとに、ほんとに

大丈夫ですか?」

 

「・・大丈夫だよ」

 

一度、視線を落としたけど

裾を持つ手は離れない。

 

「あの・・」

 

「何?」

 

「こんな事、言うのは、

ホントに図々しいんですけど」

 

「ん?」

 

急に上がってきた視線。

 

「迎えに・・来てくれませんか」

 

 

・・・・。

 

 

「迎えに?」

 

「はい、・・私、熱中すると

タイマーとかじゃ止めれなくて。

いえ、今回は、ちゃんと止める、

止めますけど・・その、念のために」

 

・・・。

 

「わかった。じゃあ、

17時前に来るよ」

 

「ご、17時までいいんですか!?」

 

・・・口、あいてる。

 

「ん、たぶん、昨日と

同じぐらいの時間だろうから」

 

「17時・・17時まで。あ、一応

タイマーかけておきます」

 

一応・・ね

 

「大丈夫、ちゃんと迎えに来るから」

 

 

「はい、よろしくお願いしますっつ」

 

俺を見あげたまま

嬉しそうに笑った。

 

 

 

扉を閉めた瞬間、

 

こらえきれなくて

吹き出してしまった。

 

スイッチが入ったり、切れたり

 

真剣な顔で話したと思ったら

あんな、嬉しそうに・・

 

 

 

 

“迎えに来てくれませんか”

 

・・・。

 

なんで、





こんなに嬉しいんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ヒョン、起きてたの?」

 

「おぅ」

 

ダイニングテーブルには

ジョングクがいた。

 

「さっき起きたの?」

 

「ん、あぁ、少し前」

 

「少し前・・めずらし」

 

「・・何が?」

 

「ヒョンが起きてすぐ、そんな

スッキリした顔してるなんて」

 

・・・・。

 

「あら、ジウちゃんは?」

 

キッチンから聞こえたのは

リアンさんの声だった。

 

ラッキー

 

「あぁ、今、ちょっと

パソコンルームにいる」

 

「パソコンルーム?」

 

「うん、なんか“計画”の準備で

使いたいみたいだったから」

 

「そう、あ、二日酔いは?

大丈夫そうだった?」

 

「大丈夫。何気に強いみたいで

二日酔いなった事ないんだって」

 

「ヒョン、知らなかったの?」

 

弟の声は聞こえない事にした。

 

「よかった。食欲なかったらスープ

作ろうかなって思ってたの」

 

「あ~・・あのリアンさん」

 

「ん?」

 

「片手で食べられるのって

何かある?」

 

「片手?サンドイッチみたいなの?」

 

「あ、うん。それでいい」

 

「作ろうか?」

 

「いや、作り方教えてほしくて。

俺が作るから」

 

「ジミン君が?あ、ジウちゃんに?」

 

「・・・まぁ」

 

「え?ヒョンが作るの?」

 

・・・。

 

「わかった。たぶん、バケットと

ハムはあったから。後は・・・」

 

冷蔵庫を開けた

リアンさんの横に立つ。

 

「クリームチーズと、あ、

トマトとレタスもあるわね。

ジウちゃん、嫌いなモノは?」

 

「なんでも食べる」

 

「いい子ね」

 

「ん」

 

 

 

「ヒョン、ホントにジウさんの事

好きなんだね。あっ、リアナ、僕の分も

作って」

 

前半部分は聞こえなかった事にした。