NHK FMのバイロイト音楽祭の中継を久しぶりに少し聞いて、楽しかった。三澤洋史さんの解説もいい感じにオタクで、ツボをついていて、現場の方ならではの洞察に満ちていた。

 

 

 

 

今ではオペラの動画もいろいろなところで見られるようになったけれども、かつてはNHK FMが大切な機会で、放送時間に合わせてラジオの前に座っていた。かつてのフォーマットは、バイエルン放送協会の音声をインサートしたりしていたと思う。ジークフリート牧歌で終わるところは同じだ。

 

駒場の1、2年の化学の授業のときに、教授が授業中にバイロイト音楽祭の放送のことを話題にして、歌手のヘルムート・パンプフのさいごの「プフ」の発音がああだこうだと言っていたのを記憶している。あの頃はNHK FMが本当に貴重な音源だった。

 

三澤洋史さんもおっしゃっていたけれども、今年のバイロイトの『ニーベルングの指輪』は、歌手が粒ぞろいですばらしい成果を上げたと思う。聞き逃し放送期間中に、オペラ対訳プロジェクトで歌詞を参照しながら聞くと、きっとすばらしい体験になるだろう。

 

佐賀新聞の中尾清一郎社長は、オペラは台本通りの伝統的な演出がお好きで、挑戦的で現代的な演出が好きな私とは対照的だ。しかし、その私でも、2022年から始まった『ニーベルングの指輪』の演出は、ネットに転がっている動画で見る限り、ちょっと斬新すぎると思う(笑)

 

『ワルキューレ』の最後の、「ヴォータンの別れ」で、ブリュンヒルデがさっさとどこかに行ってしまって、一人残されたヴォータンが孤独の中でのたうち回るのは良いとして、そのあとの展開があまりにもアレなので笑ってしまった。音楽の力で、どんな演出でも成立してしまうのだけれども。

 

いろいろな演出があったけれども、ぼくはやっぱりピエール・ブーレーズが指揮してパトリス・シェローが演出した『ニーベルングの指環』が最高だったかと思う。ヴァルハラが炎上するのを見ていた人々が、やがて一人、ひとりと立ち上がって観客の方を見るラストが感動的だ。

 

 

 

 

追記 NHKには、長年にわたってバイロイト音楽祭の様子をバイエルン放送協会との連携で届けていただき、深く感謝しています。