イタリアに来るとき、なんとなくこれくらいでいいかな、とユーロに両替してきたんだけど、ホテルから空港までの帰りのタクシー代が心配になってきた。

 

 それで、金曜日にタオルミーナの「メインストリート」を「発見」した時に、両替をしてくれるお店があったので、入ったら、にいちゃんが「パスポート必要だぜ」と言いながら日本円をユーロに替えてくれた。

 

 ほっとしていると、なんだな妙にカッコつけたスーツっぽい服装を着た、ひょろ長いおじさんが入ってきた。

 

 そのおじさん、にいちゃんとイタリア語でなにか話しながら、くちゃくちゃの米ドル札を何枚かユーロに替えてもらっていた。

 パスポートを出すこともなしに。

 なんだか、常連ぽかった。

 

 どういうことなんだろう、それにしても、あのひょろ長おじさん、どこかで見たなあ、と思って街を歩いていたら、あのひょろ長おじさんがいた。

 

 自分でへんな音楽をかけながら笛を吹いていた。

 

 それで思い出した。あのひょろ長おじさん、さっきメインストリートの入り口で観光客相手に芸を見せていたんだった。

 

 はあ、さては、チップでもらった米ドルを両替してもらいに行ってたな。

 

 その後、メインストリートを端から端まで歩く間に、笛を吹いているひょろ長おじさんに何度かあった。

 

 あのおじさんは、毎日ストリートを笛を吹きながら流して、米ドル札をもらうとにいちゃんのお店に行ってユーロに替えてもらっているんだなあと思った。

 

 そんなひょろ長おじさんの日常を思うとしみじみして、さっきの両替屋さんでのさりげない会話を目撃してよかったなあと思った。

 

 旅は道連れ世は情け。

 

(クオリア日記)