1093回
とどけんさん
茂木先生、こんにちは。
大学院に通う27歳の学生です。
いつも楽しく拝読させていただいています!
先日、ある方の講演を伺う機会がり、テーマは日本経済と企業の凋落という刺激的なものでした。
しかし小難しいテーマとは裏腹に、メッセージは極めてシンプルなもので、過去20年間で欧米諸国はGDP、株価ともに成長してきたが、他方で日本経済は中期的に栄枯盛衰のサイクルを繰り返しつつも両指数において横這い成長に終始しているというもの。
よく言う失われた20年に関する議論だろうと思います。
なぜ、勤勉な国民が多く、治安も良く、生活インフラ、教育インフラが極めて発達したこの国が、世界経済の先頭集団から離脱しかけているのでしょうか。
そこにはさまざまな議論がありますが、私はこの原因は吉野家の牛丼にあると思うんです。
アメリカに留学していて感じたことは、良いものが高く売られる。一方日本は、良いものが安く売られる。
価値をお金に変える段階で、下辺にプライスを合わせてしまう薄利多売のパーセプションがデフォルトとして国民のセンスの中にインストールされてしまっているような気がするのです。アメリカは少なくとも、価値のアッパーサイドに価格を設定する社会であると感じました。だからこそ、売れるよう精一杯付加価値をつける努力をする。日本も当然その努力はしていますが、この方向性が「いかに短時間で良いものを早く安く正確に作り出すか」という吉牛オペレーションの域を出ていないように思うのです。
だから、国民の忙しさは増す一方であるにも関わらず、数量に比して単価が上がらないがために労働の値段が上がらず経済が上向かないのではないでしょうか。
国民の心の中に一度根付いてしまった安かろう良かろうの精神は、どうすれば高かろう良かろうへと変化するのか。もし脳科学、物理学、心理学等の観点からなにかヒントをお持ちでしたら教えてください!
ご回答。
吉野家の牛丼は、企業努力であれだけ美味しいものを安価で提供してくださっているわけですから、ありがたいことだと思います。
また、市場における価格形成のメカニズムについては、とどけんさんもいろいろ勉強されていることだと思います。
アメリカに留学されていた時に感じたことは、おそらく本質的なことだと思います。
いかに「付加価値」をつくっていくか。
そのためには、現代の最新の科学、テクノロジーだけでなく、生き方や生命の価値についてのコンセプトワークが必要です。
日本に欠けているのはそのあたりかなと思います。
偏差値に象徴される陳腐な学力観や、批判的精神のないメディア報道、みんなで同じが安心といったマインドセットの複合的な現象の結果が、ご指摘の停滞の原因だと思います。
とどけんさんのように疑問を持って考えることはほんとうに価値のあることです。
とどけんさんがいろいろ考えて思考のブレイクスルーをすることが、まずはとどけんさんの人生のブレイクスルーにつながり、ひいては日本が元気になることにつながるかもしれません。
楽しんでがんばりましょう!
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