英国生活の達人
Master of English Life
茂木健一郎 著
Written by Ken Mogi
前書き
この本は、「英国生活の達人」になるための、イメージ・トレーニングの本です。
ここで、「英国生活の達人」とは、これからの時代の、活動的で新しい日本人のイメージを指します。
「英国生活の達人」とは、イギリスの通りを、何の自意識もなく、のびのびと気持ちよく歩くことができる人間のことです。
「英国生活の達人」とは、日本とイギリスの間を往復しても、何の違和感もなく、どちらの国にも溶け込めるような人を指します。
今まで、日本人は、国際的な舞台で、とりわけ欧米諸国に対しては、どちらかと言えば消極的で、受身の態度をとってきました。「英国生活の達人」は違います。「英国生活の達人」は、押しつけがましくなることなく、国際的な舞台において積極的で、能動的な態度をとることのできる人間を指すのです。
「英国生活の達人」は、自分のナショナリティについてはっきりとした自覚を持ち、かといって、それにこだわらない人です。
「英国生活の達人」とは、つきたての餅のように、自分の活動圏を日本だけでなく広く海外に伸ばして行くことのできる人を指すのです。
この本は、五章からなっています。「英国生活の達人」がつきたての餅のようなのびのびとした境地に達するためには、私たちの中の「日本」や「イギリス」に関するイメージを変える必要があります。そこで、私たちは、まず、第一章から第四章で、私たちの中の英国に関するイメージを揺さぶることを試みたいと思います。さらに、第五章では、私たちの中の日本あるいは日本人のイメージ、とりわけ、その、イギリスという国とのコントラストに揺さぶりをかけます。このような操作を経た上で、最後に「英国生活の達人」についての私のイメージを述べたいと思います。
「英国生活の達人」は、いわば、イギリスという国を日本人というオリジナルな視点から見ることのできる人間です。そして、日本人というオリジナルな視点から、イギリスの社会の中で積極的なプレーヤーになれる人間です。従って、この本は、イギリスという国についての本でありながら、実は我々の住む「日本」という国についての本でもあるのです。
１９９５年クリスマス
英国・ケンブッリジにて
茂木健一郎
著者より。
どうも、最近、古いファイルを見直すブームになっていて、１９９５年に書いて放っておいたこのファイルも、少しずつリリースしようと思います（笑）。
なにしろ２３年前に書いていることなので、少し古くなっているところもあると思いますが、どうぞご容赦を（笑）