2015年03月18日

インドキシル硫酸と腎障害

テーマ:腎臓・電解質

病院内の持ち回り勉強会で、腎臓内科のF医師が担当した回が大変おもしろかったのでメモ。


1.尿毒素について


尿毒素とは、腎機能低下とともに血中濃度が上昇し、測定可能であり、その濃度上昇が臨床症状と関連しており、実験系でもその関連が立証されているもの。

現在80種類あまりが同定されているらしい。


2.尿素窒素、クレアチニンは尿毒素か? →結論; 否


BUN、Creは腎機能障害の指標だが、血中の尿素窒素、クレアチニンそのものが尿毒素ではないようだ。

1972年にMayo Clinicで、ヒトでの実験で(今は許されないだろう)、尿素窒素を静脈注入して血中濃度がどこまで上がると嘔気などの尿毒症症状が出るか調べたことがあるそうだ(1972 Mayo Clinic Proc)。500では症状が出ず、1000を超えると症状が出たそうな。

デキサメサゾン(ステロイド剤)には添加物としてクレアチニンが入っているそうな。デキサメサゾンを静脈注射し、その上流で採血するとクレアチニンが異常高値になるという(Pseudo acute injury secondary to intravenous dexamethasone. 2015 AJKD.)。しかしそれで尿毒症症状が出るということはない。


3.インドキシル硫酸~代表的な尿毒素


腸内細菌叢がトリプトファンを代謝するとインドールが生成し、それが体内に吸収され肝臓で代謝されるとインドキシル硫酸(IS)が生成する。インドキシル硫酸の略号は、最近中東で暴れまわっている凶悪テロ組織を想起させる禍々しい略号だな…。

腎機能低下とともにISの血中濃度は上昇し、腸内細菌叢で生成される証拠としては腸切した透析患者ではISが通常レベルになっているという報告もある(2011JASN)。5/6腎摘ラットにISを投与すると腎硬化を起こすとの報告もある。ISは酸化ストレスを惹起しエリスロポエチン産生を抑制することで腎毒性を発揮するようだ。腸管滅菌するとISを抑制できる(2009 PNAS)、他にオリゴ糖投与でIS抑制とか、ビフィズス菌投与でIS抑制(でもラックBではダメ)などの報告もあるという。

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2009年10月16日

透析患者の心房細動はワーファリン不要か

テーマ:腎臓・電解質

後ろ向きの観察研究では、心房細動を有する透析患者にワーファリンを投与するとむしろ脳梗塞が増えてしまうようだ。CHADS scoreが高いほどワーファリン投与のデメリットが打ち消されるものの、やらない方がむしろ良かった。なぜだろう。週3回程度のヘパリン投与が影響しているのか、透析患者の血小板機能が落ちているのか。


J Am Soc Nephrol 2009;20:2090-2092

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2009年01月22日

ガドリニウム含有造影剤の副作用

テーマ:腎臓・電解質

腎性全身性線維症(NSF: nephrogenic systemic fibrosis)という疾患概念が1997年に提唱された。腎不全患者に発生する皮膚異常で、皮膚が樹皮状に繊維化、硬化してくる。関節の拘縮、拘縮後の痛みにつながる。


2006年末に、米国FDAがMRI撮影時に使用されるガドリニウム含有造影剤の使用がNSFを引き起こしている可能性があると警告、それを受けて2007年3月には日本医学放射線学会も安全性情報を出した。


オムニスキャン(ガドジアミド)というガドリニウム含有造影剤は、GFR 30ml/min/1.73m2以下の人と、肝移植後/移植予定の人には禁忌とするというものだ。オムニスキャン以外のガドリニウム含有造影剤に関しては慎重投与としている。


ガドリニウムが有毒性の金属だが、造影剤ではキレート剤と一体で含有されている。腎機能が正常であれば速やかに腎臓から排泄されるが、腎機能が低下していると体内の滞留時間が増加し、キレート剤から遊離して皮膚に沈着する、遊離する際に鉄イオンと反応するため、造影の直前直後の鉄剤投与が有意なリスクファクターになっている、ということだ。鉄剤以外に、炎症状態(手術後、外傷後など)、大量のエリスロポエチン使用、高PTHなどもガドリニウム造影剤によるNSF発症のリスクという報告もあるようだ。ガドリニウム含有造影剤の使用量が多いほど危険とも言われている。


造影直後の透析もNSFの予防効果があるとは言えない、発症後の治療法もさまざまな治療が試みられているが有効といえるものは存在しない。


ガドリニウムのキレート剤は線状と環状構造があり、線状の方がガドリニウムを遊離しやすいので危険。線状ではオムニスキャン、マグネビストが日本では使用されており、オムニスキャンがもっともガドリニウムを遊離しやすいためGFR 30以下で禁忌。マグネビストはややベターなので慎重投与だが、環状のマグネスコープがもっともガドリニウムを遊離しにくい。


そもそも、なぜMRIに造影剤が必要なのか。脳腫瘍の精査のためにもっとも有用。血管造影に使われることもあるが、造影しないMRA、あるいはマルチスライスCTなど代替検査が存在する。ガドリニウム含有造影剤は腎排泄ながら腎毒性が少ないため、造影CTより腎障害に用いやすいと考えられてきた面もあるが、今後はそうもいかなくなった。


日本で推奨されているGFRの推定式は算出に計算機が必要。電子カルテなどに組み込んであると有用。


男性:eGFR (ml/min/1.73m2) = 194 x Cr-1.094 x Age-0.287

女性:eGFR (ml/min/1.73m2) = 194 x Cr-1.094 x Age-0.287 x 0.739



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2008年02月22日

高カリウム血症の治療

テーマ:腎臓・電解質

高カリウム血症、特に7mEq/L以上の場合は心室頻拍、心室細動など致死的な不整脈の原因になりうるため迅速な治療が必要です。


治療は、心電図変化が見られる場合は8.5%グルコン酸カルシウム20mlを5分で静注、メイロン1ml/kgを5分かけて静注、GI療法、イオン交換樹脂内服、ループ利尿剤、透析など。


今まで用いたことはなかったが、β2刺激薬の吸入も有用だという。喘息でつかう吸入薬でよい。骨格筋はカテコラミンβ2受容体を介して細胞内にカリウムを取り込むことを利用した治療法。高カリウム血症性の家族性周期性四肢麻痺の治療にもβ2刺激薬の吸入が使われる。

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2005年12月21日

ビタミンC過剰摂取は尿路結石の原因

テーマ:腎臓・電解質

私たちはカロリーを3大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質)で摂取しますが、その他の栄養素としてはミネラル(塩、カリウムなど)とビタミンが重要で、これらを合わせて5大栄養素と言います。ミネラルやビタミンはエネルギーにはなりませんが、体液の成分として、また体内で3大栄養素を代謝してエネルギーを得る過程で必須のものです。


ビタミンは水溶性(ビタミンB、C)脂溶性(ビタミンA、D、E、K)に分かれます。水溶性ビタミンは過剰に摂取しても尿中に排泄されるので蓄積による過剰症は起こしませんが、ビタミンCの過剰摂取(1日2グラム以上)尿路結石の原因となるようです。


尿路結石はシュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石、リン酸アンモニウムマグネシウム結石などがありますが、頻度的に8割がたはシュウ酸カルシウム結石です。ビタミンC(アスコルビン酸)は体内でシュウ酸に変化する、また食事中のシュウ酸の吸収を促進する、そしてシュウ酸の尿中への排泄を増加させることによってシュウ酸カルシウム結石の危険を増大させます。


ビタミン剤などでビタミンを摂取すると、食事で普通に摂る量に比べて多量にビタミン剤が体内に入ります。脂溶性ビタミンですと理論的には過剰症を起こしえますし(あまり見たことはありませんが)、水溶性ビタミンでも尿路結石以外のリスクがあるかもしれません。出血性貧血での鉄剤など明らかに有益な場合を除けば、栄養素は自然に摂るのが一番ですね。


文献:


Ascorbate increases human oxaluria and kidney stone risk. J Nutr. 35:1673-1677, 2005


Effect of vitamin C supplements on urinary oxalate and pH in calcium stone-forming patients. Kidney Int. 63:1066-1071,2003


Effect of ascorbic acid consumption on urinary stone risk factors. J Urol 170:397-401, 2003

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2005年03月02日

リンの欠乏で死ぬことはあるか

テーマ:腎臓・電解質
 リンの欠乏で死ぬことはあるか。臨床の現場では低リン血症で、すわ緊急事態となることがなかなか無いのです。それで、経験の浅い研修医にはリンの重要性がピンと来ない。
 そこで指導医が披露するとっておきの面白い話(そこまででもないか)。戦国時代に、長期の籠城から解放された武士たちがやっと食物にありついた。握り飯だけにかぶりついた人はどんどん死んでいったが、肉も食った人は助かった。なぜか。肉にはリンが入っているからだ。…本当にそんな記録が残っているのかな。
 まあ、それほどひどい飢餓状態にならなければ、リンはなかなか欠乏しにくいミネラルではあるわけです。骨にたくさんストックされていますから。

 少し解説。
 内科医になるべく臨床研修を始めた時、まず習得すべき事の一つは輸液管理です。病態に応じた最適の点滴管理が出来るようになることですね。脱水の補正、ショック時の点滴、心不全の場合、腎不全の場合、肝硬変の場合etc。
 輸液の基本は水分量、カロリー(主にブドウ糖)、電解質(ミネラル)、ビタミンの組み立てです。長期に及ぶ点滴管理ではアミノ酸や脂肪、微量元素なども必要です。
 ミネラルで最も重要なのは、まずはナトリウム(Na)、カリウム(K)、クロライド(Cl)です。次にカルシウム(Ca)、リン(P)、鉄(Fe)、そしてマグネシウム(Mg)や亜鉛(Zn)といった順番でしょうか。指導医は、研修医に「べし、べからず」を叩き込みます。カリウムは静脈注射するな、心停止で死ぬぞ、かならず薄めて点滴するんだ、から始まり、一日のミネラルの所要量、病態に応じた調節法を教えます。
 さて、リンは体内でどんな働きをしているのか。第一に、体内で炭水化物が酸素で燃やされエネルギーが取り出されると、最終的にエネルギーはアデノシン3リン酸(ATP)という形で保存されます。ここでリンが必要。生きて行くために必須の働きです。第二に、特定のグループのホルモン群がその活性を発揮するために(細胞内シグナル伝達のために)リン酸化は必須の反応です。第三に、リンは物理的に骨の構成要素。etc。
 上記の逸話で、なぜ握り飯だけ食べたら死んだか。低リン血症の状態でブドウ糖を摂取すると、ブドウ糖が細胞内に取り込まれるのと共にリンも細胞内に取り込まれて消費されるため、低リン血症が致命的に悪化して死に至った可能性があるわけです。
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