2013年02月27日

PUFAの高中性脂肪血症改善の分子的機序

テーマ:内分泌代謝

PUFAの脂肪酸β酸化の亢進機序;

 PUFAはPPARα(フィブラートのターゲット遺伝子)の内因性リガンドでもある。


PUFAの脂肪酸合成の抑制機序;


①SREBP1cの切り出し抑制


 SREBP1cは細胞膜から切り出されて活性上昇。

 PUFAは膜からのSREBP1cの切り出しを抑制。

 こちらの働きは比較的high sensitivity。


②SREBP1cの遺伝子発現抑制


 SREBP1c遺伝子のプロモータ領域の、LXREより下流のSREにPUFAが結合して転写を抑制

 こちらの働きは用量依存的だがlow sensitivity。

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2013年02月27日

摂食時の中性脂肪合成促進の分子的機序

テーマ:内分泌代謝

筑波大学准教授の矢作直也先生に『ニュートリゲノミクスの挑戦 ~脂質代謝と糖代謝の統合的理解を目指して~』と題して講演して頂いた。


TCAサイクルから供給されるacetyl-CoAを基質としてコレステロール合成、中性脂肪合成が行われる。


中性脂肪合成を司る遺伝子~SREBP1c

コレステロール合成をつかさどる遺伝子~SREBP2


SREBP1cが活性化することで誘導される中性脂肪合成酵素は、ACC1、FAS、SCD1など。


SREBP1cは摂食により遺伝子発現がダイナミックに誘導される。そのメカニズム解明の話。


****************


SREBP1cはマウスで過剰発現させると脂肪肝になるが脂質異常症は呈さない。中性脂肪合成も促進するが、肝臓のLDL受容体の発現も亢進するから。LDL受容体欠損マウスと交配させると高中性脂肪血症を呈する。


ob/obマウスとSREBP1欠損マウスを交配させると脂肪肝が改善。


LDL-R欠損マウスとSREBP1欠損マウスを交配させると動脈硬化が改善。


****************


SREBP1cのpromoterを活性化させる因子の発現クローニング

→LXRα、LXRβを同定。


転写活性はSREBP1a>SREBP1cだが、食後の誘導はSERBP1a << SREBP1c


食後のSREBP1cの活性上昇はインスリン非依存的。

(STZマウスでの実験;LIRKOでの実験→多少はインスリンも関与あるかも)


マウスの生体内の肝臓でプロモーター解析ができる実験系を作成した。


Adenovirusへ必要な遺伝子を組み込むことが試験管の中でできるようになった。この実験手法の進歩が役にたった。Adenovirusを肝臓へ注入すると、個体間の遺伝子注入量のバラツキは多いが個体の肝臓内では部位によらず均一、個体間の肝臓への遺伝子注入量のばらつきも注入されたadenovirus量で補正することで実用的な実験系になった。


マウスにルシフェリン注入後にIVIS Imaging system(高感度カメラで微量な光を測定)を用いてマウスの肝臓内での遺伝子発現活性を可視化。


Adenovirusでマウス肝臓に入れるSREBP1cのプロモーターをどんどん削っていき、SERBP1cの摂食時の活性上昇に寄与するプロモーター部位がLXREa、LXREbであることが判明。


LXR/RXRの発現量は摂食で不変。


ではSREBP1cの摂食時の活性上昇はどのように調節されているか。


プロモーターを削る実験で判明したこと;LXREa,bの周辺領域も重要→リガンド応答ではない。

さらに細かく削り込むことで、LXRE以外の重要な要素が判明;NuRE (Nutritional responsive element)と命名。GCCCCATTCAGAGCA。NuREの構造は脊椎動物間で種を超えて保存されており、その重要性が示唆される。


NuREに結合するタンパクを同定する方法はいくつか考えられた。


・コンピュータを用いたモチーフ解析 全てを把握することはできない。


・タンパクから;DNA親和性カラムを用いて

・cDNAライブラリから発現クローニング


問題は、いずれの手法でも転写因子は発現量が少なくlibraryにクローンが少ないこと。


結局、自分で網羅的転写因子発現ライブラリ(TFEL)を作成した。

理研マウスの完全長cDNAクローン集FANTOMをpcDNA3.1へ乗せ換えた。

3年かかった。

VEGFプロモーターでHIFがつかまるなどポジティブコントロールにて成功を確認。


これを使ってKLF4、15を捕まえた。

KLF familyは全17種ある。FANTOMにはうち11種があり、のこり6種は自分で補った。


摂食によって動くのはこのうちKLF15だった。

(ちなみにKLF4は山中4因子の一つ)


Adenovirus-KLF15肝臓へ注入にてSREBP1cの摂食応答が抑制された。

KLF15のノックダウンにてIVISにて空腹時もSREBP1c活性が上昇。


ob/obマウスの高中性脂肪血症の一因はKLF15の発現抑制による中性脂肪合成亢進であることも判明。


KLF15のSREBP1cの発現抑制のメカニズム:


LXRαのco-repressorにRIP140、co-activatorにSRC1がある。

RIP140とSRC1は競合的にLXRに結合する。

KLF15はLXRαとRIP140の結合を高める。


ちなみにKLF15はgluconeogenesisを亢進させる→脂質代謝と糖代謝の統合的理解!


ひとつの事が分かると、その数倍の「何が分かっていないか」が分かる。

矢作先生の講演によって、生命の神秘の深淵をのぞきこんだ気がした。

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2011年02月18日

骨粗しょう症の薬物療法

テーマ:内分泌代謝

脆弱性骨折予防のための薬物治療開始基準

I 脆弱性既存骨折がない場合

1 腰椎,大腿骨,橈骨または中手骨BMDYAM70%未満

2 YAM70%以上80%未満の閉経後女性および50歳以上の男性で,過度のアルコール摂取(12単位以上),現在の喫煙,大腿骨頸部骨折の家族歴のいずれか一つを有する場合。

II 脆弱性既存骨折がある場合(男女とも50歳以上)

*過度のアルコール摂取(12単位以上),現在の喫煙,大腿骨頸部骨折の家族歴は骨折のリスクを約2倍に上昇させる。 


YAM

     測定法 機種 YAM YAMの80% YAMの70%

腰椎   DXA QDR 1.011  0.809   0.708g/cm2


大腿骨  DXA QDR 0.787  0.630   0.551g/cm2

頚部


骨折(脊椎)のリスクが高いと予測される骨代謝

(吸収)マーカーのカットオフ値

DPD(尿) 7.6 nmol/mmolCr

NTX(尿) 54.3 nmolBCE/mmolCr

NTX(血清) 16.5 nmolBCE/

CTX(尿) 301.4 μg/mmolCr

骨折リスクが高いと予測されるカットオフ値は,健常閉経前女性での平均+1.96標準偏差とする。

基準値には施設間差があることに注意する。

BCEbone collagen equivalent 骨コラーゲン相当量)

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2010年01月28日

全身性老人性アミロイドーシス

テーマ:内分泌代謝

家族性アミロイドーシスの中には異型トランスサイレチンによるものがあるが(FAPⅠ型)、家族性ではなく老人性に異型のないトランスサイレチン(プレアルブミン)による全身性アミロイドーシスが見られることがあるようだ。


トランスサイレチンがcleavageによりアルブミンになるのが老化により障害されるメカニズムは、分かっているのだろうか。剖検で4人に1人程度はトランスサイレチンによるアミロイド沈着が見られるという報告もあるそうで、老化機序の一つなのだろう。その有無や程度の違いは、geneticなものなのだろうか、環境要因はないだろうか。家族性アミロイドーシスの場合根治療法は肝移植だが、全身性老人性アミロイドーシスの剖検では肝臓を組織学的に調べても、アミロイド沈着以外に特徴的な所見はないようだ。

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2010年01月26日

高HDL血症

テーマ:内分泌代謝

日本人人口の2~3%の頻度で高HDL血症が見られる(100mg/dl以上)が、どう考えるべきだろうか。




HDLは、余剰のコレステロールを末梢から肝臓まで回収してくる善玉リポタンパクなのだから、高HDL血症は長寿症候群とも言われてきたが、CETP欠損症といって肝臓がHDLからコレステロールを回収できないために血中にHDLがあふれる病態も存在し、その場合は逆に動脈硬化が進む可能性も指摘されている。




HDLは、肝臓で合成されたHDL1(円盤状)、それがコレステロールを吸収し球状になった小さいサイズのHDL3、さらにコレステロールエステルを吸収し大きくなったHDL2が存在する。CETPはHDL2からコレステロールエステルをLDL・IDL・VLDLに転送し、交換に中性脂肪をHDL2に転送する。その中性脂肪はHTGLにより水解されHDL2はHDL3やHDL1に戻る。従ってCETP欠損症では血中にHDL2があふれているはずである。




CETP欠損症と考えられる場合は、治療薬はプロブコールが良いようである(2008年版の脂質異常症治療ガイド;日本動脈硬化学会編集・発行 には薬物治療については一定の見解は無い、と書いてあるが)。プロブコールは肝臓のHDL受容体であるSR-B1 (scavenger receptor class B type 1)受容体の発現を増加させHDLの異化を促進することによるHDL低下作用がある(文献)。LDL高値も認められる場合はスタチンを併用するのが良いだろう。




しかしCETP欠損症かどうかという検査は一般臨床では不可能である。自分の場合は、頚動脈エコーを実施し年齢不相応なIMTの肥厚やplaqueの形成があるかどうかチェックし、血管年齢が不相応に進行している場合は治療することにしている。ちなみに研究室レベルでは、CETP活性、蛋白量を定量したり、原因となる遺伝子異常(イントロン14のスプライスドナーサイトのG→A変異とエクソン15のミスセンス点変異D442:Gが大部分)の検索をするようだ。




蛇足だが、apoA1がHDL粒子数を表すとすれば、HDL/apoA1比が大きければHDL2が多い可能性がある。カットオフ値とか無いのか?あれば感度・特異度とともに知りたい。ちなみにapo蛋白は保険で測定でき、家族性複合型高脂血症の診断基準項目ではapo蛋白B/LDLコレステロール>1.0、家族性Ⅲ型高脂血症の診断基準の小項目にアポ蛋白E/総コレステロール>0.05、というものがある。脂質の専門家に、apo蛋白の実践的な使い方をもっと指南してもらいたいな。



文献:Hirano K, Ikegami C, Tsuji K et al. Probucol enhances the expression of human hepatic scavenger receptor class B type Ⅰ, possibly through a species-specific mechanism. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 25:2422-2427, 2005.
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2009年01月23日

LDL測定は推定がよいか直接測定がよいか

テーマ:内分泌代謝

LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)は、近年は検査方法の進歩により直接測定できるようになった。だが、精度管理や標準化が進んでいない。


従来の臨床医学におけるevidenceは、総コレステロール、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)および中性脂肪から推定したLDLコレステロールを用いて蓄積されてきている。したがって、あえて推定LDLを用いるのが現時点では正しい。


Friedewaldの計算式: LDLコレステロール=総コレステロール - HDLコレステロール - 中性脂肪/5


ただし、この式が使えるのは中性脂肪が400mg/dl未満まで。


これを超えたらLDLが正確に推定できないため、LDLコレステロールの代わりにnon HDL cholesterolを指標にする方法がある。


non HDL cholesterol = 総コレステロール - HDLコレステロール (基準値はLDLの基準値+30mg/dl)


*********************************************************


ただ、日常診療をなんらかの論文にまとめようと考えたりしなければ、限界を理解した上でLDLを直接測定するのは計算が省略できて便利ですね。


文献: Friedewald WT, Leby RI, Fredrickson DS: Estimation of the concentration of low-density lipoprotein cholesterol in plasma, without use of the preparative ultracentrifuge. Clin Chem 18, 499-502, 1972

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2007年11月12日

クッシング症候群

テーマ:内分泌代謝

1.身体所見


 ・中心性肥満

 ・近位筋萎縮(三角筋、大胸筋、でん部の筋肉)~力瘤ができない

 ・皮膚が薄くなる

   ~手背の皮膚をつまむと、正常では3mm程度の厚みがつまめるが、クッシングでは1mm程度

   ~顔面の皮膚も薄くなった結果、毛細血管が目立ち頬が赤く見える

 ・異所性脂肪沈着

   ~Buffalo humpが有名だが意外に少ない

   ~眼球突出が4割程度に見られる、後眼球の脂肪沈着のため

   ~鎖骨上かのくぼみが消失

 ・皮膚色

   ~黒っぽい場合;中枢性のクッシング病(黒クッシング)

              他のACTH過剰による症候は、女性では副腎アンドロゲンの増加により多毛、にきび増加

   ~白っぽい場合;副腎腫瘍によるクッシング症候群(白クッシング)


2.下垂体腫瘍のMRI所見


 ・正常下垂体が腫瘍により側面に圧排されている場合;腫瘍の起源は鞍内

 ・正常化衰退が腫瘍により下部に圧排されている場合;腫瘍の起源は鞍上部(頭蓋咽頭腫など)


 ・無症候性の下垂体microadenomaの頻度は7%~要注意。


3.鑑別~pseudo Cushing state


 ・アルコール多飲

 ・著明な肥満

 ・精神疾患


によりコルチゾール分泌が上昇することあり。メカニズムは全てが明らかではない。

鑑別の有効な手段は、夜中0時の採血。pseudo Cushing stateではコルチゾール低値、Chushingでは高値。

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2007年05月12日

スタチンのclass effect, pleiotropic effect

テーマ:内分泌代謝

高コレステロール血症を治療するのに最も優れた薬剤はスタチンと呼ばれる系統の薬です。

作用機序は、HMG-CoA reductaseというコレステロール合成に働く酵素の阻害作用です。

スタチンは、ペニシリンと同じくカビから発見されましたが、この薬が登場してから先進国の心筋梗塞・脳梗塞がかなり予防できるようになったので、「血管のペニシリン」などという呼び方をされることもあります。


世の中にはいろいろな病気に対する様々な薬がありますが、世界で最も飲まれている薬はスタチンです。

スタチンを最初に発見したのは、遠藤章さんという日本人です。元東京農大教授。ノーベル生理学賞にふさわしい業績ではないでしょうか。


さて、スタチンは単に悪玉コレステロール(LDL-コレステロール;以下LDL)を下げるだけではなく、class effect、pleiotropic effectという効果を有することが知られています。


Class effectとは、LDLの中でも催動脈硬化作用が強いsmall dense LDLを特に減らす作用


Pleiotropic effectとは、LDL低下を介さない機序で血管内皮細胞の機能を保護する作用です。


Pleiotropic effectの分子的な機序が結構分かってきているようです。

コレステロールが生合成される過程の一部でゲラニルゲラニルピロリン酸という物質ができますが、この物質が低分子量G蛋白であるRhoARac1ゲラニルゲラニル基を供与すると、それぞれNO産生低下活性酸素産生につながります。


RhoAにゲラニルゲラニル基が結合→RhoAが細胞膜(なかでもラフトと呼ばれる部位)に移動→ミオシン軽鎖に作用→ストレス線維を形成→eNOSのmRNA発現を低下→NO産生低下


Rac1にゲラニルゲラニル基が結合→Rac1が細胞膜ラフトに移動→NADPHオキシダーゼのp67に結合→O2-産生


メタボリックシンドロームの高脂血症は高中性脂肪・低HDL血症なので、フィブラートと呼ばれる薬剤でもよいような気がします。フィブラートのターゲットはPPARαで、これは肝臓に存在する核内受容体。PPARαの働きは脂肪酸を酸化する酵素の誘導、UCP2の発現など。しかしながら、フィブラートの作用はあまり強くないのが弱点です。

一方で、メタボリックシンドロームの高脂血症をもう少し詳しく見てみると、レムナント・small dense LDL・酸化LDLの増加が特徴です。スタチンのclass effect(small dense LDLの低下作用)、pleiotropic effect(酸化LDLの低下)および、本来のLDL低下作用が強力であることを考えると、メタボリックシンドロームでもスタチンの方が確実に効果が期待できると考えられます。メタボリックシンドローム型糖尿病では、フィブラートでは明らかに役不足です。


メタボリックシンドロームの治療に関してさらに言えば、メタボリックシンドロームの本態は内臓脂肪の蓄積による脂肪細胞機能不全ですから、まず大事なのは食事・運動療法による内臓脂肪減量であることは当然ですが、薬物療法ではPPARγagonist(チアゾリジン誘導体)の投与が病態にはもっとも即しています。

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2006年07月09日

過剰なヨード摂取は甲状腺機能低下症を増やす

テーマ:内分泌代謝

ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの材料で、摂取量が多くても少なくても甲状腺疾患を引き起こす可能性があります。ヨードを取りすぎると甲状腺機能低下症のリスクが高まるとする報告が中国からありました。ヨード摂取量が軽度欠乏している地域、適量以上の地域、過剰な地域で合計約三千人の人を5年間追跡調査したところ、甲状腺機能低下症の発症率は以下の通りでした。


                  軽度欠乏 適量以上 過剰


顕性甲状腺機能低下症     0.2%    0.5%    0.3%


不顕性甲状腺機能低下症   0.2%    2.6%    2.9%


自己免疫性甲状腺炎      0.2%    1.0%    1.3%


少なくとも不顕性甲状腺機能低下症(橋本病の気があると言われた人)は、海藻類などヨードが多く含まれるものを過剰にとらない方が良さそうですね。例えば海藻はカロリーが無いからと言って、ダイエット目的に大量摂取することは避けるなど。なんでも極端なとりすぎは避けた方が良いようです。


文献: N Engl J Med 354:2783-2793, 2006

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2005年11月18日

家族性高コレステロール血症の移植治療

テーマ:内分泌代謝

 家族性高コレステロール血症という、体質的に血中コレステロール値が高くなる方が500人に1人程度いらっしゃいます。私たちは遺伝子を2組(1対)持っています。お父さんからのものと、お母さんからのもの。家族性高コレステロール血症とは、お父さんかお母さんのいずれかから、壊れたLDL受容体遺伝子を受け継ぐことにより起こります。ただし、一つの遺伝子が壊れていても、もう一つの遺伝子が正常な場合(これをヘテロ型の遺伝子異常という)、コレステロールの値はせいぜい数百mg/dl台程度で留まってくれます。それでも食事療法で正常化するのは不可能なので、心筋梗塞や脳梗塞の予防のために薬の内服が必要です。

 しかし、運悪く両親から壊れたLDL受容体遺伝子を受け継いでしまうことがありえます。500人に一人同士の出会いの確率は500×500で、夫婦25万組に一組。さらに、両親から異常遺伝子を受け継ぐ確立は4分の1。年間に生まれる新生児が100万人だとすると、年に1人生まれるかどうか位の確率になります。このような状態を遺伝子異常のホモ型と言います。

 ホモ型の家族性高コレステロール血症の場合は、乳児期から血中コレステロールが1000mg/dlを越えます。到底生き延びて行くことはできません。若年発症の心筋梗塞が予想されます。LDLアフェレーシスといって、一種の血液透析によってコレステロールを血中から除去する方法がありますが、乳児では血管が細すぎてこの治療は不可能です。


 このようなホモ型の家族性高コレステロールの乳児に対し、T大学医学部附属病院で、倫理委員会の許可を得て実際に行われた治療の症例を知り感動しました。ヘテロ型遺伝子異常の父親が、子供に自らの肝臓を半分分け与え、生体肝移植を行ったそうです。肝臓はコレステロール代謝を担う中心的な臓器なので、この移植治療により子供はヘテロ型の遺伝子異常の程度にまで改善しました。この夫婦は、このような試練にもめげずにもう一人子供を生みました。妹が生まれたそうですが、なんと運悪く妹もホモ型遺伝子異常だった。今度は母親が肝臓を半分分け与えた、というのです。(最近の話ではありません)


 感動的な話です。しかし、医学的な観点からは、家族性高コレステロール血症同士と判明したら、結婚を思いとどまるのも一つの選択かもしれません。

 

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