『死の淵を見た男』門田隆将著

3月11日。その時、現場では何が起きていたのか。ノンフィクションの文書に感動をしました。2020年には映画化されるとのことです。絶対におすすめです。

印象に残っていたことを簡単に書かせていただきますが、『津波により原発が壊れた』というのが、一般的な認識だと思います。正式には、津波により、全ての電源(非常用電源も)が喪失したため、冷却しなければならない原子炉が冷却できず、空焚き状態となり、その圧力で爆発してしまったというのが正しいと思います。

そうした中、原子炉圧力容器が爆発しないように、作業員はベント(バルブを開けて圧力を下げる)を試み、放射能を浴びながら、自身の命を省みない必死の作業内容が書かれていました。読んでいて、胸が締め付けられるほどの過酷な作業であり、こんな舞台裏を知りませんでした。

ベントしなければ、爆発してしまう。海水を注入して、冷却しなければ、爆発してしまう。1分1秒を争うなかで、当時の菅総理が現場に入ります。

現場職員によると、菅総理は、
『いきなり、なんでベントをやらないんだとおっしゃって、あとは、なんで早くやらないんだ、いつになったらできるんだ、なんでできないんだ、という繰り返しでした。何が問題なんだ、ということばかりおっしゃっていたように記憶しています。聞くという感じではなく、おまえら何やっているだって怒鳴り付ける感じでした。』と。

現場でまず汚染検査をするように職員が伝えると、菅総理は、
『なんで俺がここに来たと思っているんだ!こんなことやっている時間なんかないんだ!』と。

現場に入り、労いの言葉、一つもなかったようです。加えて、経済産業相の黒木審議官は、首相官邸内で、【3キロ圏内避難指示】の決裁を取ろうとしましたが、菅総理の余りの剣幕に、なかなか決裁がとれず、福島の現地入りをしてから、菅総理の機嫌が落ち着いたところで、ようやく決裁をもらったという有り様。つまり、避難指示が遅れたようです。

あまり、菅総理の様子を伝えても仕方がないのですが、東京電力の職員は爆発という最悪の事態を免れるために、自身の命と引き換えに、『決死隊』として現場で闘った様子が鮮明に伝わりました。

いずれにしましても、この本を読むことで、原発に対する考え方、東京電力の職員に対する考え方、一国のトップが、非常事態でとるべき行動等、考えさせられることがいっぱいあります。是非ともこの本をお薦めするとともに、原子力に対する考え方をより深めていきたいと思いました。