新型インフルエンザワクチン、国産か、輸入か | 臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

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心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書き連ねています。

 ヨーロッパ各国で新型インフルエンザのワクチンが余剰となり、WHOの責任を問う声が上がる中、日本では輸入ワクチンの接種が始まろうとしている。

 報道によると、「製剤の特徴を理解してもらった上で、接種希望者は国産(1種、4社)と外国製2種類(計3種、6社)の中からワクチンを選択できる」とのことであるが、国産ワクチンと輸入ワクチンとの違いを理解した上で選択できる国民がどれだけいるだろうか。
 何しろ、国産ワクチンは1種類と言っても、実は4社がそれぞれ別個に製造し、微妙に違うし、輸入ワクチンについては、2種類あって、その性状はかなり異なる。結局、3種、6社のワクチンの中から、接種希望者は、どれか一つを選ぶと言うことになる。

 多分、長妻厚生労働大臣も製剤の特徴や違いを正確には理解できないと思うし、たとえ理解できたとしても、どれが安全か、どれが有効かを判断することはできないだろう。
 また、接種を行う医師でさえも、理解し、判断することは困難であろう。

 国民、消費者、患者、非接種者が選択できるのは良いことであるが、インフォームド・コンセントとは、単に選択を患者に委ねることではなく、違いを理解してもらうことである。
 これは非常に難しい。

 たとえば、輸入ワクチンに添加されている「免疫補助剤(アジュバント)」とは何か、また、ワクチンにアルミニウムを加えると、なぜ良いのか、輸入ワクチンの培養に用いられている「動物の細胞」とは何か、国産ワクチンも鶏の細胞を使って培養しているが、鶏は動物ではないのか、等々、説明しようとすると、1年ぐらいの講義期間が必要になりそうである。

 それに、インフルエンザに限らず、医学の領域や人体、ウイルスは分からないことだらけである。専門家でもすべてを理解することは難しい。

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国産か輸入、被接種者が選択可能=新型インフルワクチンで厚労省方針
【2010年1月13日 時事通信】

 外国製の新型インフルエンザワクチンをめぐり、厚生労働省は13日、接種を受ける人が国産、輸入ワクチンのどちらかを選択できるとする方針を明らかにした。順調に承認手続きが進んだ場合、輸入ワクチンは最短で来月3日から出荷が始まり、同月中旬から接種が始まる見通しという。
 同省によると、輸入ワクチンの接種対象は主に優先接種の対象から外れる健康成人。今月中旬に承認される最短のケースでは、グラクソ・スミスクライン(英)が来月5日、ノバルティス(スイス)が同3日から出荷が可能となり、医療現場には国産と輸入の両方が混在する可能性が高い。
 輸入ワクチンには国産に含まれない免疫補助剤が添加されるほか、ノバルティスの製剤は動物の細胞を使って培養するなど製法も異なる。
 このため、同省は製剤の特徴を理解してもらった上で、接種希望者は国産と外国製2種類の中からワクチンを選択できるようにすることとした。

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輸入ワクチン、来月中旬にも接種開始
【2010年1月13日 読売新聞】

 厚生労働省は13日、欧州の2社から輸入する予定の新型インフルエンザワクチンについて、早ければ来月3日に国内での出荷を開始し、同月中旬にも優先接種対象者以外の健康な成人への接種が始まる見通しを明らかにした。
 医療機関に国産ワクチンが残っている場合、国産か輸入かを選べる。
 厚労省薬事・食品衛生審議会の部会は両ワクチンを「承認して差し支えない」との意見をまとめており、最終的に長妻厚労相が承認すれば輸入が開始される。