◆加齢臭+猫臭+α?(2)
10月初旬、レンタカー屋責任者のFさんが洗車場で騒ぎ出した。
Fさん 「クサイー!! カニの匂いがしよるー!」
Fさんは人一倍匂いに敏感な人だ。
俺 「ほー、カニですか?」 俺には特に匂いは感じられなかった。
Fさん 「多分、カニが洗車場の隅っこに入り込んで死んでそのまま腐りよったんじゃろ。
もう我慢できん! Kさん、なんとかしてくれー!」
このレンタカー屋は下地島と伊良部島を隔てる狭い海峡沿いにあるので、たまに夜に拳位の大きさのカニがうろついたりもしていた。
俺 「了解。あとで、見てみます」
午後2時過ぎに羽田便で到着のお客様への送迎&貸出業務が一段落してから、俺は洗車場の隅にある色々な道具・荷物などを片付けながら、カニの残骸を探してみた。
奥の方から出て来たのは意外にもカニではなく20cm位ある大きな野ネズミの死体だった。
割りばしでつまんで持ち上げたら、腹部から丸々太った蛆虫が50匹位でてきた。
肉が腐った 悪臭に耐えながら、俺は野ネズミをつまんで正面の海に投げ捨てた。
「これはカニや魚のエサになるんだろうなー」
そして、野ネズミの死臭がこびりついた跡を洗車用の高圧洗浄水で匂いが消えるまで洗ってから、道具類を基に戻しておいた。
約1時間後にFさんが戻ってきたので、事情を説明しておいた。
俺 「カニの死骸ではなく、ネズミの死骸でした」
Fさん 「そうかー、ネズミじゃったんかー。
もう匂いがせんようになったわ」
(Fさんの鋭い嗅覚でも、カニとネズミの死臭は区別できないんだ、ハハハ)
数日後、休憩時間にFさんから何度か質問された。
Fさん 「結果を聞きにいった時、
・ガンは無い
・ガンでステージ1か2
・ステージ4
のどれがええんじゃ?」
Fさんは日頃自分でも『いつ死んでもええ』と公言しているので、自分の事のように心配してくれている。
俺 「この体調の悪さで『なんにも無い』訳は無いので、
ステージ1で長く苦しむより、ステージ4でさっさと人生の整理をする方がいいですね。ハハハ」
Fさん 「そうじゃろ! 俺もそう思うわ。
延命治療とかダルイよなー!」
俺 「そうですよね。ハハハ」
10月中旬、俺が検査結果を聞きに行く前日、普段は東京本社で勤務している「レンタカー屋のオーナーTさん」が突然宮古島にやってきた。現場責任者のFさんと総務Hさんがランチ休憩でいなかったので、俺とTさんは二人だけで雑談をした。
Tさん 「Fさんとも話しましたが、僕のレンタカー屋W社を閉めようかと思っています」
ここではTさんのW社とFさんのP社が共同運営している。
俺 「そうなんですか!」 俺は何も聞いてなかったが。
Tさん 「11月以降はレンタカーの予約が月に数件しか入っていないし。
それに、新規で始めた建設関係事業の売り上げがとても伸びているので、僕は当面そちらに注力しないといけないし」
俺 「そうですよね。T社ら国内大手レンタカー3社に加え、今年からB社のような海外大手まで下地島空港向けに進出してきましたから、うちのような中小レンタカー屋には厳しいですよね」
Tさん 「それにKさんの体調が悪いと聞いたし・・・。
ガンの可能性もあるんですよね?
運営の人手が足りないですよ」
俺 「(そこかっ!)
そうですね。可能性は高いと感じています、ハハハ。
その場合、ここの敷地はどうするのですか?」
Tさん 「2~3年位放置しておきますよ」
俺 「なるほど。ビジネス的にはそれが正解かもしれませんね」
その夜、俺は麻雀で久しぶりに大きく負けた。
その日のメンバーは、以下の3名だった。
・Fさん: 男、40代前半、広島出身、レンタカー会社Pの創業社長、俺とレンタカー業務で知り合う、カリスマ的性格、ゴルフはセミプロ級、昔は総合格闘技も、バツ2。
伊良部島麻雀グループの創設者、マンガのように強運で・常識外れに強い、役満など大物狙い。容貌はEXILE系。
・Tさん:男、40歳前半、北関東出身、千葉在住、2年前に伊良部島にレンタカー会社設立、Fさんとレンタカー業務で知り合う、他にも会社を数社経営している超仕事中毒人間、資格取得マニア、昔は陸上長距離選手だが今は超肥満体型、自称バツ8。
伊良部島麻雀グループの2期生。サラリーマン麻雀で鍛えられたセオリーに沿った正統派の打ち方、但しFさんの毒気に中てられ最近は大胆は打ち筋が増えた。容貌は某独裁者系
・Hさん: 男、40代後半、伊良部島出身、現在は那覇と宮古島を行ったり来たり、不動産会社H社の創業社長、俺とは不動産仲介の依頼で知り合う、極真空手師範代、妻帯者、父親が経営する警備保障会社の副社長も兼務。
伊良部島麻雀グループの1期生。剛腕な打ち手、但し浮き沈みが激しい。容貌はモヒカン・パンクロック系。 
Fさん 「Kさん、今日もどぐうじゃのー」
俺 「どぐう? なんですかそれ」
Fさん 「どぐう知らんの? 埴輪とかの」
俺 「あー、土偶ですか! なんで?」
Fさん 「顔がむくんどるじゃろ」
俺 「確かにそうですね。じゃあ、リーチです」
Hさん 「珍しくKさんが大きく凹んでますね!
じゃあ、俺もリーチです」
俺 「まあ、そういう時もありますよ。ハハハ。
おっと、変な牌をつもって来たな。ほい」
Hさん 「それ、当たりですね。
リーチ・即で、ドラものったので、倍満です!」
俺 「えーっ! さっきからリーチした後に当たり続けてますね(ガックリ)」
Fさん 「やっぱ、ステージ4じゃろなー」
Tさん 「・・・」
翌日、休みの日、俺は検査結果を聞きに愛車のオープンカーで宮古島のS病院に行った。
気温32℃。病院まで車で約30分、伊良部大橋から透明で美しい「宮古ブルー」の海を見下ろしながら色々な雑念が浮かんできた。
(これで、ようやく人生の整理をできるなー。
本は書き終わってKindleで公開したから、間に合ってかった。
子供達に「お別れ」を言いに行くのはサンフランシスコか或いは中間地点のハワイかどっちにしようかなー・・・。
この車とバイクも事前に処分しておかないといけないな。
それに、のら猫たちは俺がいなくなっても当面隣家の「猫じいさん」がエサをやるだろうけど、猫じいさんも75歳位でアルコール中毒っぽいから、余り長くはなさそうだしなー・・・)
病院について順番待ちをしている時、FさんからLineが来た。
F 「どんな結果を望んどる?」
俺は、直接は返事をしないでおいた。
問診室に呼ばれS医師から事務的に結果の説明が始まった。
S医師 「ガン検診の結果ですね。
胃カメラでは異常はなかったし、大腸の検査(検便)は陰性ですね。
肝臓もB型とC型のウイルスが陰性でした。(サラっと過ぎた)
肺のレントゲン検査は、僕の所見では異常なしですが県立宮古病院の放射線科でダブルチェックをしてから最終結果をお知らせします。1ヶ月後位ですね」
俺 「ありがとうございます。そこまで理解しました。
確認ですが、肝臓の検査はB型とC型肝炎以外はしないのですか?」
S医師 「今回の『市から依頼されたガン検診』ではB型とC型肝炎の検査のみですね」
俺 「?? B型とC型の肝炎以外では肝臓ガンになる可能性は無いと言うことですか?」
S医師 「いいえ。他にも肝臓ガンになる場合はありますよ。ただ今回の『市から依頼されたガン検診の範囲』はB型とC型肝炎検査のみです」
俺 「なるほど。では、肝臓ガンの他の検査をしてもらうにはどうすればいいのですか?」
俺は肝臓ガンがとても気になる。
S医師 「んー。市の進める『特定検診』を受ければ、他の肝機能の検査もできますよ」
俺 「そうですか。ありがとうございます」
(『ガン検診』には含まれない肝臓の複数項目の検査を、『特定検診』でやるんだ? なんか変だな・・・)
俺は問診費用420円を支払って、すぐに市役所の健康増進課に電話して、「翌日に(市役所の隣接の)健康保険センターへ特定検診を受けに行く事になった」
翌朝10時、天気がいいので愛車ビッグスクーターで健康保険センターへ移動し、大勢の高齢者に混ざり俺は列に並んで特定健診を受診した。
身長・体重・腹囲・検尿が終わり、いよいよ採血という時、その前に問診があった。
医師A 「何か気になる事はありますか?」 40歳代・聡明そうな雰囲気の女性医師だった。
俺 「体調が悪いので9月末にガン検診を受けました。特に手・足・顔のむくみがひどいので。
ガン検診の結果でB型とC型肝炎の検査の結果は陰性でしたが、それ以外の肝機能の検査もしたいので、本日特定検診を受けに来ました」
医師A 「確かに、かなりむくみがありますね。
それと、問診表を見ると親族にガン患者が多いそうですね?」
俺 「はい、母と母の弟と母の父は3人とも肝臓ガンで他界しました。3人とも飲酒しない人なので、完全に遺伝だと思われます」
医師A 「んー、そうなんですか。個人情報を開示してもらいありがとうございます。
その場合、今回の『特定検診の検査』では肝機能に関する検査項目がいくつか足りないですね。
それに検査結果の送付までに3週間以上かかりますし。
市内の他の『消化器系内科』の医院で別途検査をしてもらった方がいいですよ」
俺 「そうなんですか!
S医院でガン検診を受け、『検査項目を増やしたいのであれば、市の特定検診を受けろ』と言われたのですが。まだ足りないんですか!!
じゃあ、どこの医院に行けばいのでしょうか?」
医師A 「私は宮古島市の医師では無いのですが、消化器系はN内科医院がいいと聞いています」
俺 「ありがとうございます。ではこの後すぐにN内科医院に行って、全項目を検査してもらう事にします」
保険センターで採血が終わってすぐ、俺はN医院に電話し「午前中最後の枠」にねじ込んでもらい、11時半にN内科医院に行く事になった。やれやれだぜ。
◆夏やせ?(2)
俺は元来犬派で猫と関わった事は一度も無いのだが、離島では近所ののら猫たちと仲良くする事になった。最近、仔猫たちも増えて、俺も忘れがちなので続柄をまとめてみた。 
10月初旬、小トラがドンドン弱ってきた。
毎日うちに来てキャットフードを大量に食べているはずなのに、全然夏やせが回復していない。いつも舌をだしたままボーっとしている。 
10月中旬、小トラがなぜか仔猫の時のように頻繁に俺の机に上がりたがるようになった。
口の周りには(病気の猫にありがちな)黒い汚れがついたままで、自分でぺロペロして綺麗にする気配もない。 
そして、小トラは部屋の片隅でうずくまっていたかと思うと、突然「ゲー」と叫びながら「目の前の何か」と格闘するかのように暴れ出したりする。他の猫たちは冷ややかに受け流しているが、本人にとってはきっと痛くて苦しいんだろうなー。
もしかすると、彼の目には「猫の死神」が写っているのかもしれないな、ハハハ。
ある日、俺がブログを書いていたら、その横で死んだように眠り始めた。
よく見ると、手先まで黒く汚れていて、もう自分で毛並みをきれいに整える気力もないみたいだ。
君はわずか1年半で虹の橋を渡るつもりなのか??
(詳細はブログ「あこがれの離島生活 (23) トリプル台風で息子が来れない?」参照下さい)
離島ののら猫よ、もう無理に頑張らなくてもいいから、ゆっくりお休み!
